T.南方の固有種を分ける前に,それらに混じる広域分布種を分けておく
南方の固有種に混じる広域分布種とはタイワンウチワヤンマのことである.またウチワヤンマも台湾に分布することから,隣接する島々で発見の可能性が高い.まずこれらを分けて除外しておく.
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a.腹部第8節にうちわ状の付属物がある.前後翅の三角室に通常2本,時に1本,またはY字型の横脈がある.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.
b.腹部第8節にうちわ状の付属物はない.前後翅の三角室には横脈があるものとないものがある.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・U. -
a.うちわ状の付属物内に黄色い部分がある.・・・・・・ウチワヤンマ属/ウチワヤンマ
b.うちわ状の付属物内に黄色い部分がない.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・タイワンウチワヤンマ属/タイワンウチワヤンマ
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図1.ウチワヤンマとタイワンウチワヤンマの腹部第8節の付属物.
U.南方の固有種
南方の島々に分布するサナエトンボ科の種は,タイワンウチワヤンマを除くと,奄美大島のアマミサナエとチビサナエ,徳之島のチビサナエ,沖縄本島のオキナワサナエとオキナワオジロサナエ,渡嘉敷島のオキナワオジロサナエ,石垣島と西表島のヒメホソサナエとワタナベオジロサナエとヤエヤマサナエである.このうち,チビサナエは九州南部から徳之島まで分布しているのでこの地域の固有種とは言えない.また西表島で1例ダビドサナエが採れているが,これは例外的と思われるのでここでは除外しておく.それ以外はこの地域に固有の種類である.これらのトンボは,サイズが異なることでほとんど間違いなく区別できる.ワタナベオジロサナエの写真がないが,ヒメホソサナエよりひとまわり小さく,胸側の黒条がNの字形である.
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a.南西諸島の奄美大島以南である.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・図2.
b.南西諸島の奄美大島以南ではない.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・V.
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図2.奄美大島以南の島々のサナエトンボ科.サイズは同じ割合に縮小している.
V.メガネサナエ属を分ける
次に,サナエトンボ科としては分かりやすいメガネサナエ属を分けておく.メガネサナエ属は大きな川や湖に生息することが多い.♂の腹部第7〜9節が著しく横に広がり,その部分の腹面が黄色いのですぐそれと分かる.♀の場合はそれほど横に広がることはないが,やはり腹面が黄色い.
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a.♂の腹部第7〜9節にかけて横幅が大きく広がり,その部分の腹面が黄色をしている.♀はそれほど広がらないが,やはりその部分の腹面が黄色をしている.・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・メガネサナエ属
b.♂♀に限らず,腹部第7〜9節にかけて横幅が広がるものと広がらないものがあるが,その部分の腹面は黒色をしている.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・W.
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図3.メガネサナエ属の腹部第7〜9節の横幅と腹面.
W.中型から大型の1属1種のサナエトンボを分ける
サナエトンボ科は1属1種のものが結構多い.これらは属のレベルの特徴を備えており,比較的区別しやすいので,ここで,それらを一つずつ分けておく.
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a.大型で腹長は50mmを超える.後肢腿節が著しく長い.頭部は胸部に比較して小さい.前後翅両方の三角室にそれぞれ1本,時に2本の横脈がある.・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コオニヤンマ属/コオニヤンマ
b.中型または小型で,腹長は長くても50mm程度まで.三角室に横脈がないか,または後翅にだけ1本程度持つものものがある.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2. -
a.体の淡色部が鮮やかな緑色で,腹部第10節,及び♂の場合上付属器,♀の場合尾毛が,それぞれ黄色をしている.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アオサナエ属/アオサナエ
b.体の淡色部はくすんだ緑褐色または黄色で,腹部第10節,及び♂の場合上付属器,♀の場合尾毛が,いずれも黄色をしていない,またはどちらかが黄色の場合がある.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3. -
a.♂は腹部第7〜9節の横幅が広がり,長大な尾部付属器を持つ.♀は腹部第7〜9節の横幅が広がり,尾毛が黄色をしている.・・・・・・・・オナガサナエ属/オナガサナエ
b.♂の腹部第7〜9節の横幅は特に広がらないか,広がる場合も尾部付属器は格別大きくはない.♀の腹部第7〜9節の横幅は特に広がらないか,広がる場合も尾毛は黄色ではない.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4. -
a.腹部の横幅がその長さに対して著しく広い.腹部第7〜9節にかけて横幅が広がる.胸側の黒条は第2側縫線に沿ったものが1本で,第1側縫線に沿ったものは途中で終わっている.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ホンサナエ属/ホンサナエ
b.腹部の横幅がその長さに対して著しく広くはない.腹部第7〜9節にかけて横幅が広がるものと広がらないものがある.胸側の黒条は1本または2本,あるいはそれらが融合して1本になっている.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5. -
a.♂♀とも腹部第7〜9節にかけて横幅が大きく広がり,腹部第8節に1対の大きな黄色斑がある.尾部上付属器に小さな突起がある.・・ミヤマサナエ属/ミヤマサナエ
b.♂の腹部第7〜9節がやや横に広がる場合があるが,その場合でも腹部第8節に1対の黄色斑がないかまたはあっても小さく,かつ尾部上付属器に小さな突起はない.♀は腹部第7〜9節にかけて横幅が大きく広がることはない.・・・・・・・・・・・・・X.
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図4.中型から大型の1属1種のサナエトンボの検索の流れ.
X.アジアサナエ属を分ける
アジアサナエ属は,南方の固有種であるアマミサナエ,オキナワサナエ,ヤエヤマサナエを含む属で,これ以外ではキイロサナエとヤマサナエが日本に分布している.残りのサナエトンボ科の種の中ではこれらが一番大きいので,まずこれらを分ける.
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a.腹長が40mmを超える中型のサナエトンボである.・・・・・・・・・・・アジアサナエ属
b.腹長が40mmを超えることはない小型のサナエトンボである.・・・・・・・・・・・・Y.
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図5.残った種は腹長の長さが大きく異なる2つのグループに分かれる.
Y.小型のサナエトンボを分ける
残されたのはいずれも小型でよく似ていてまぎらわしいサナエトンボである.これらは,斑紋を中心に分けるとよい.
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a.翅胸前面の黄色条が襟条とつながる.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コサナエ属
b.翅胸前面の黄色条が襟条とつながらない.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2. -
a.背隆線上に黄色条がありそれが襟条とつながる.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.
b.背隆線上に黄色条がない.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4. -
a.♂の尾部上付属器,♀の尾毛が,それぞれ白い.・・・・ヒメサナエ属/ヒメサナエ
b.♂の尾部上付属器,♀の尾毛は,それぞれ黒い.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヒメクロサナエ属/ヒメクロサナエ -
a.翅胸前面の黄色条の上に黄色の斑点がある.・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダビドサナエ属
b.翅胸前面の黄色条の上に黄色の斑点はない.♂の尾部上付属器は白い.・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オジロサナエ属
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図6.小型のサナエトンボ.主に翅胸前面の斑紋を中心にした検索.