トップ写真の解説
写真は,メスが腹端を水面でたたいた後に,岸の砂の上をたたいたところです.キトンボのメスは,打水の時,腹端を大きく開いて水をそこに含ませその中に卵を浮かべます.しかし,打泥するときは,その水滴の部分を地面に直接置かずに,写真のように腹部腹面を打ちつけて,その勢いで腹端の卵を含んだ水滴を地面に飛ばすようです.
連結打泥産卵中のペア.2012.11.25.
成虫
キトンボは秋に産卵をし,その産卵行動はユニークです.いったん腹端に水を含ませてから,岸の泥面に卵を貼り付けます.コンクリート張りの護岸でも同様に産卵する姿を見ています.浅くなだらかな岸辺では,水際の土をたたく連続打泥産卵をすることもあります.また池が満水の時などは,池の中央部に出て,連続打水産卵も行います.産卵する場所については,かなり選択性が広いように見えます.初夏くらいに羽化した個体がどこへ飛散しているのかはよく分かりません.おそらく,樹林に広く分散し,ひょっとしたら,樹冠で生活しているのかもしれません.秋は10月ころになるとあちこちの池にやってきて繁殖活動を始めます.そして,繁殖活動が年を越すこともしばしばです.
交尾.2012.11.25.
幼虫
キトンボの幼虫は,背棘が第9腹節にまであるので,オオキトンボを除く他のアカネ属と区別ができます.また,側棘も太く,まっすぐ後方を向き,第8腹節のそれは,第9腹節の後端にはとどきません.腹部背面の模様も独特で,慣れてくれば,採集した瞬間に,キトンボかオオキトンボであろうと区別がつきます.ただし,オオキトンボとは非常によく似ていて,側刺毛の数などを使って区別しますが,時に確実に区別ができない場合があります.キトンボの方がやや小さいです.おそらく卵で越冬し,春に孵化します.幼虫をすくっている経験からすると,7月に入ってもまだ終齢にならない個体があるようで,羽化は7月の後半になるようです.さらに場所によると9月に羽化することもあります.写真は8月の中旬に採集したものであって,羽化までまだ半月くらいはかかりそうです.
スタジオ写真.2012.8.12.