兵庫県の幼虫ガイド
H085. キトンボ Sympetrum croceolum
キトンボ終齢幼虫
写真1.キトンボ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長18mm前後.2012.8.12.
<特ちょう>
 キトンボはトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.翅芽(しが)は,まっすぐ後ろにのびています.触角(しょっかく)は糸のように細いです.腹の横のとげ(側棘:そっきょく)は第8,9節にあります.写真2のように,第8節のとげの先は第9節の後ろはしにはとどきません.第9節のとげはとても長く,その先は,第10節の先にとどくくらいあります.背中のとげ(背棘:はいきょく)は先がするどくとがっていて,腹部の第4−9節にあります.第9節のとげは少し小さいです.

キトンボのそっきょくとはいきょく キトンボの全体図
写真2.腹部の第8,9節の横に長いとげ(側棘)があります.
第8節のとげの先は第9節の後ろはしにとどきません.
先のとがった背中のとげ(背棘)が,腹部の第4−9節にあります.
写真3.キトンボの全体図.
触角は糸のように細いです.
 


<よく似た幼虫との区別>
 キトンボはアカトンボのなかまです.アカトンボの幼虫は,どれもとてもよく似ていて,トンボの専門家でも見分けられないことがあります.ですから,区別がつかなくて迷っても,それはしかたがないことです.みなさんもたくさん研究をして,見分け方を見つけてください.
 さて,キトンボが他のアカトンボの幼虫とはっきりと区別できる特ちょうは,写真2のように,腹部の第9節にまで背中のとげがあることです.ほかのアカトンボで,第9節に背中のとげのあるものは一つだけです.それはオオキトンボです.ですから,アカトンボの幼虫で腹部の第9節に背中のとげがあれば,それはキトンボか,オオキトンボということになります.
 ところが,キトンボはオオキトンボととてもよく似ていて,見ただけではほとんど区別できません.ただ一つ区別できるのは,下唇(かしん)を引きのばして下唇側片(かしんそくへん)の上にある側刺毛(そくしもう)の数をかぞえることです.写真5のように,この側刺毛の数が11本であればキトンボで,13本であればオオキトンボです.でもややこしいのは,これが12本のものがいることです.側刺毛が12本の場合,写真5の番号1の位置の毛がとても小さければ,キトンボの可能性が高いです.可能性が高いだけで,確実ではありません.

キトンボのそっきょくとはいきょく キトンボの触角と背中のはん点
写真4.オオキトンボとキトンボの全体図の比かく.
ほとんど違いがない.

 
写真5.オオキトンボとキトンボの側刺毛の数のちがい.
オオキトンボは12または13本,キトンボは11または12本ある.
まちがって腮刺毛(さいしもう)を数えないこと.


<さがす場所のヒント>
 キトンボは池の住人です.秋に水が少なくなって,岸辺が広く現れるような池によく集まってきて,卵を産んでいます.写真6は,そういった池の水ぎわで,産卵しているオス・メスのペアです.兵庫県では,キトンボは,年をこして,1月まで産卵をしていることがよくあります.写真6は1月4日に写しました.産卵がおそいので,幼虫の成長もおそく,終齢幼虫は8月や9月にも採れます.幼虫は池の底で,泥(どろ)をかぶって生活しています.網(あみ)で,池の底を引きずるようにしてすくうと,採れます.

キトンボの産卵場所.
写真6.水が少なくなって底が現れた池の水ぎわに産卵にやって来たオス・メスのペア.