H085. キトンボ Sympetrum croceolum
<特ちょう>
キトンボはトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.
翅芽(しが)は,まっすぐ後ろにのびています.
触角(しょっかく)は糸のように細いです.腹の横のとげ(
側棘:そっきょく)は第8,9節にあります.写真2のように,第8節のとげの先は第9節の後ろはしにはとどきません.第9節のとげはとても長く,その先は,第10節の先にとどくくらいあります.背中のとげ(
背棘:はいきょく)は先がするどくとがっていて,腹部の第4−9節にあります.第9節のとげは少し小さいです.
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写真2.腹部の第8,9節の横に長いとげ(側棘)があります. 第8節のとげの先は第9節の後ろはしにとどきません. 先のとがった背中のとげ(背棘)が,腹部の第4−9節にあります. |
写真3.キトンボの全体図.
触角は糸のように細いです. |
<よく似た幼虫との区別>
キトンボはアカトンボのなかまです.アカトンボの幼虫は,どれもとてもよく似ていて,トンボの専門家でも見分けられないことがあります.ですから,区別がつかなくて迷っても,それはしかたがないことです.みなさんもたくさん研究をして,見分け方を見つけてください.
さて,キトンボが他のアカトンボの幼虫とはっきりと区別できる特ちょうは,写真2のように,腹部の第9節にまで背中のとげがあることです.ほかのアカトンボで,第9節に背中のとげのあるものは一つだけです.それは
オオキトンボです.ですから,アカトンボの幼虫で腹部の第9節に背中のとげがあれば,それはキトンボか,
オオキトンボということになります.
ところが,キトンボは
オオキトンボととてもよく似ていて,見ただけではほとんど区別できません.ただ一つ区別できるのは,
下唇(かしん)を引きのばして
下唇側片(かしんそくへん)の上にある
側刺毛(そくしもう)の数をかぞえることです.写真5のように,この
側刺毛の数が11本であればキトンボで,13本であれば
オオキトンボです.でもややこしいのは,これが12本のものがいることです.
側刺毛が12本の場合,写真5の番号1の位置の毛がとても小さければ,キトンボの可能性が高いです.可能性が高いだけで,確実ではありません.
<さがす場所のヒント>
キトンボは池の住人です.秋に水が少なくなって,岸辺が広く現れるような池によく集まってきて,卵を産んでいます.写真6は,そういった池の水ぎわで,産卵しているオス・メスのペアです.兵庫県では,キトンボは,年をこして,1月まで産卵をしていることがよくあります.写真6は1月4日に写しました.産卵がおそいので,幼虫の成長もおそく,
終齢幼虫は8月や9月にも採れます.幼虫は池の底で,泥(どろ)をかぶって生活しています.網(あみ)で,池の底を引きずるようにしてすくうと,採れます.
写真6.水が少なくなって底が現れた池の水ぎわに産卵にやって来たオス・メスのペア.