H075. ネキトンボ Sympetrum speciosum
<特ちょう>
ネキトンボはトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.
翅芽(しが)は,まっすぐ後ろにのびています.
触角(しょっかく)は糸のように細いです.腹の横のとげ(
側棘:そっきょく)は第8,9節にあってどちらも長く,写真2のように,第8節のとげが第9節の後ろはしにちょうどとどくような長さです.ただし第8節のとげが短く第9節の後ろはしにとどかない個体もいます.それに対して,背中のとげ(
背棘:はいきょく)には,いろいろな状態の個体がいることが知られています.ふつうは腹部の第4−8節にありますが,第8節のとげがないものや,第4,5節のとげがないものや,まったくとげがないものがいることも知られています.
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写真2.腹部の第8,9節の横に長いとげ(側棘)があります. ふつうは第8節のとげの先は第9節の後ろはしにちょうどとどく長さです. 先のとがった背中のとげ(背棘)がふつう腹部の第4−8節にあります. |
写真3.ネキトンボの全体図.触角は糸のように細いです.
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<よく似た幼虫との区別>
ネキトンボはアカトンボのなかまです.アカトンボの幼虫は,どれもとてもよく似ていて,トンボの専門家でも見分けられないことがあります.ですから,区別がつかなくて迷っても,それはしかたがないことです.みなさんもたくさん研究をして,見分け方を見つけてください.
さて,ネキトンボが他のアカトンボの幼虫とはっきりと区別できる特ちょうは,写真2のように,腹部の第8節の横のとげの長さが,ちょうど第9節の後ろのはしにとどくくらいであることです.ほかのアカトンボでこのような長さの第8節の横のとげを持つものは,
アキアカネだけです(写真4).
アキアカネとネキトンボの区別は難しいです.ネキトンボでは,写真4のように,腹部の第8節の背中のとげが短いものや,ないものがあります.ですから,第8節の背中のとげが短かったりなかったりすると,ネキトンボとしていいでしょう.さらに写真5のように,ネキトンボは,腹の横に白と黒のはん点がはっきりと出ているものが多いです.しかし,迷って分からなくなる個体もあります.
区別するときに困るのは,ネキトンボの中には,腹部の第8節の横のとげが,第9節の後ろはしにとどかないものがいることです.この場合,
ヒメアカネ,
マユタテアカネ,
マイコアカネ,
ミヤマアカネとは,
下唇(かしん)を引きのばして
下唇側片(かしんそくへん)の上にある
側刺毛(そくしもう)の数のちがいで見分けられます.ネキトンボは
側刺毛が12本ほどありますが,これらのトンボの数は8−11本までです.しかし
コノシメトンボや
タイリクアカネとは,この方法が使えません.この場合でも,腹部の第8節の背中のとげが小さかったり,なかったりすると,それはネキトンボということになります.でも,腹部の第8節の背中のとげが大きかったりすると,最後まで迷ってしまうこともよくあります.
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写真4.アキアカネとネキトンボの横のとげの長さは似ている. どちらも,第8節の先が第9節の後ろのはしにちょうどとどく. |
写真5.アキアカネとネキトンボの全体的な姿のちがい ネキトンボの方がもようがはっきりとしている.
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<さがす場所のヒント>
ネキトンボは池の住人です.とくに山のふもとにあって,まわりを木々でかこまれている池に多く見つかります.夏ころから,そういう池にオスとメスのペアがやって来て,産卵をします.産卵は水面に腹の先を打ちつけて行われます.水の中にモが生えているところが好きです.写真6のように,ヒシのような水面に葉を浮かべる植物と,水の中にモが生えているところにはたくさん集まってきます.幼虫は,こういったモの中にもぐりこんで生活しています.幼虫は,モをまるごとすくうと,採れます.ネキトンボはアカトンボですが,成虫は夏から姿を現しています.幼虫も,ほぼ一年中採れます.
写真6.産卵にやって来たオス・メスのペア.水面に葉を浮かべる植物の間にモが見えるような場所が大好きです.
幼虫はモにつかまって生活しています.