兵庫県の幼虫ガイド
H077. タイリクアカネ Sympetrum striolatum imitoides
タイリクアカネ終齢幼虫
写真1.タイリクアカネ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長19mm前後.2016.6.12.
<特ちょう>
 タイリクアカネはトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.翅芽(しが)は,まっすぐ後ろにのびています.触角(しょっかく)は糸のように細いです.腹の横のとげ(側棘:そっきょく)は第8,9節にあります.写真2のように,第8節のとげが第9節の後ろはしにとどくことはありません.第9節のとげは第9節の長さとほぼ同じです(写真4).背中のとげ(背棘:はいきょく)は先がするどくとがっていて,腹部の第4−8節にあります.

タイリクアカネのそっきょくとはいきょく タイリクアカネの触角と背中のはん点
写真2.腹部の第8,9節の横にとげ(側棘)があります.
第8節のとげの先は第9節の後ろはしにとどきません.
先のとがった背中のとげ(背棘)が,腹部の第4−8節にあります.
写真3.タイリクアカネの全体図と下唇側片
下唇側片の上には小さなはん点が散らばっています.
触角は糸のように細いです.


<よく似た幼虫との区別>
 タイリクアカネはアカトンボのなかまです.アカトンボの幼虫は,どれもとてもよく似ていて,トンボの専門家でも見分けられないことがあります.とくに,写真4の,腹部の第8節の横のとげが短いグループは,区別が難しくなっています.ですから,区別がつかなくて迷っても,それはしかたがないことです.みなさんもたくさん研究をして,見分け方を見つけてください.
 さて,タイリクアカネの幼虫は,ため池,公園の池,学校のプールなどで見つかっています.タイリクアカネはコノシメトンボと,形,体のもよう,横のとげ(側棘)の長さなど,とてもよく似ています.さらにコノシメトンボも学校のプールで見つかることの多いトンボです.いちばんの区別点は,写真3のように,タイリクアカネには下唇側片に黒いはん点がありますが,コノシメトンボにはないというところです.ただ,コノシメトンボにも黒いはん点が出るものがありますので注意が必要です.コノシメトンボの中には背中のとげのうち,腹部の第8節のとげがないものがあって,もし腹部の第8節に背中のとげがなければ,コノシメトンボである可能性が高くなります.
 これ以外にも,タイリクアカネは,マイコアカネヒメアカネマユタテアカネ,さらにミヤマアカネとも区別がつきにくいです.この中でヒメアカネはタイリクアカネよりかなり小さく,湿地(しっち)の住人ですから,タイリクアカネといっしょに採れることはほとんどありません.またミヤマアカネは川の住人ですから,これも,タイリクアカネといっしょに採れることはほとんどありません.マイコアカネマユタテアカネは,タイリクアカネよりは小さいですが,なかなか区別が難しいです.

そっきょくの長いアカトンボ5種.
写真4.腹部の第8節の横のとげの先が第9節の後ろはしにとどかないアカトンボの幼虫.大きさと,第8節,第9節の横のとげの長さの比かく.
<さがす場所のヒント>
 タイリクアカネはため池や公園の池や学校のプールなどの住人です.とくに,学校の「プールのヤゴ救出作戦」で見つかることが多いトンボです.写真5のように,ため池などにやって来て,腹の先を水面につけて産卵します.多くの卵はそのまま冬をこし,次の年の春に幼虫が誕生します.ごく一部には,幼虫で冬をこすものもあるようです.どちらにしても,夏が来る前には羽化して親になってしまいます.ですから,幼虫の採れる時期は,春から夏にかけてがふつうです.

タイリクアカネの産卵場所.
写真5.産卵にやって来たオス・メスのペア.ため池の水面を腹の先でたたいて,卵を産んでいます.