H080. マユタテアカネ Sympetrum eroticum eroticum
<特ちょう>
マユタテアカネはトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.
翅芽(しが)は,まっすぐ後ろにのびています.
触角(しょっかく)は糸のように細いです.腹の横のとげ(
側棘:そっきょく)は第8,9節にあってどちらも短く,写真2のように,第8節のとげが第9節の後ろはしにとどくことはありません.背中のとげ(
背棘:はいきょく)は先がするどくとがっていて,腹部の第4−8節にあります.
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写真2.腹部の第8,9節の横に小さなとげ(側棘)があります. どちらも短く,第8節のとげの先は第9節の後ろはしにとどきません. 先のとがった背中のとげ(背棘)が,腹部の第4−8節にあります. |
写真3.マユタテアカネの全体図.全体的にほっそりした感じがします.
触角は糸のように細いです. |
<よく似た幼虫との区別>
マユタテアカネはアカトンボのなかまです.アカトンボの幼虫は,どれもとてもよく似ていて,トンボの専門家でも見分けられないことがあります.とくに,写真8の,腹部の第8節の横のとげが短いグループは,区別が難しくなっています.ですから,区別がつかなくて迷っても,それはしかたがないことです.みなさんもたくさん研究をして,見分け方を見つけてください.
さて,マユタテアカネは,池でも川でも.いろいろなところで,ほかのアカトンボとまじってよく採れます.それだけに区別をしっかりする必要があります.まず川で幼虫を採ったとき,
ミヤマアカネにまじって採れることがあります.
ミヤマアカネとの区別点の一つ目は,
下唇(かしん)の長さです.写真4のように,マユタテアカネの方が少し長くなっています.また全体的な感じは,写真5のように,マユタテアカネの方がほっそりしていて,
ミヤマアカネの方がまるっこい感じです.さらに,写真8のように,腹部の第9節の横のとげが
ミヤマアカネより長くなっています.ただし,
ミヤマアカネの中には,腹部の第9節の横のとげが長いものがあるので,注意が必要です.
もう一つ,マユタテアカネは,
マイコアカネとも区別がつきにくいです.写真6のように,
マイコアカネの腹部の第8,9節の横のとげは,マユタテアカネよりやや太く長くなっています.また泥(どろ)を落としたとき,写真7のように,
マイコアカネの腹の先のほうは,広く茶色に色づいているのが見られます.
さらにマユタテアカネは,
ヒメアカネや
タイリクアカネや
コノシメトンボとも区別がつきにくいです.
ヒメアカネはマユタテアカネよりかなり小さいです.
写真8.腹部の第8節の横のとげの先が第9節の後ろはしにとどかないアカトンボの幼虫.大きさと,第8節,第9節の横のとげの長さの比かく.
<さがす場所のヒント>
マユタテアカネは川や池に住んでいます.写真8のように,池のまわりの浅いところなどで産卵します.卵はそのまま冬をこし,次の年の春に幼虫が誕生します.そして,7月のはじめには羽化して親になってしまいます.ですから,幼虫の採れる時期は,4月から7月に限られています.とくに
終齢幼虫は,6月から7月にかけての短い期間にしか採れません.
写真7.産卵にやって来たオス・メスのペア.池のまわりの浅いところで,腹部の先を水面に打ちつけて,卵を産みつけます.