H078. コノシメトンボ Sympetrum baccha matutinum
<特ちょう>
コノシメトンボはトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.
翅芽(しが)は,まっすぐ後ろにのびています.
触角(しょっかく)は糸のように細いです.腹の横のとげ(
側棘:そっきょく)は第8,9節にあります.写真2のように,第8節のとげが第9節の後ろはしにとどくことはありません.第9節のとげは第9節の長さとだいたい同じです(写真4).背中のとげ(
背棘:はいきょく)は先がするどくとがっていて,ふつう腹部の第4−8節にあります.ただし,コノシメトンボの背中のとげには,いろいろと変化があることが知られています.例えば,腹部の第8節の背中のとげがなかったり,全部のとげがなかったりします.
下唇側片には,ふつうはん点が見られません.
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写真2.腹部の第8,9節の横にとげ(側棘)があります. 第8節のとげの先は第9節の後ろはしにとどきません. 先のとがった背中のとげ(背棘)が,ふつう腹部の第4−8節にあります. |
写真3.コノシメトンボの全体図と下唇側片. 下唇側片の上には,ふつう小さなはん点はありません.
触角は糸のように細いです. |
<よく似た幼虫との区別>
コノシメトンボはアカトンボのなかまです.アカトンボの幼虫は,どれもとてもよく似ていて,トンボの専門家でも見分けられないことがあります.とくに,写真4の,腹部の第8節の横のとげが短いグループは,区別が難しくなっています.ですから,区別がつかなくて迷っても,それはしかたがないことです.みなさんもたくさん研究をして,見分け方を見つけてください.
さて,コノシメトンボの幼虫は,ため池,公園の池,学校のプールなどで見つかっています.コノシメトンボは
タイリクアカネと,形,体のもよう,横のとげ(
側棘)の長さなど,とてもよく似ています.さらに
タイリクアカネも学校のプールで見つかることの多いトンボです.いちばんの区別点は,写真3のように,コノシメトンボには下唇側片に黒いはん点がありませんが,
タイリクアカネには小さなはん点があるというところです.ただ,コノシメトンボにも黒いはん点が出るものがありますので注意が必要です.コノシメトンボの中には背中のとげのうち,腹部の第8節のとげがないものがあって,もし腹部の第8節に背中のとげがなければ,タイリクアカネではなくコノシメトンボである可能性が高くなります.
これ以外にも,コノシメトンボは,
マイコアカネや
ヒメアカネや
マユタテアカネ,さらに
ミヤマアカネとも区別がつきにくいです.この中で
ヒメアカネはコノシメトンボよりかなり小さく,湿地(しっち)の住人ですから,コノシメトンボといっしょに採れることはほとんどありません.また
ミヤマアカネは川の住人ですから,これも,コノシメトンボといっしょに採れることはほとんどありません.
マイコアカネや
マユタテアカネも,コノシメトンボよりは小さいですが,なかなか区別が難しいです.コノシメトンボには,写真2のように,腹の横に黒い点がならぶようなもようが出るものが多いので,見分けるヒントになるかもしれません.
写真4.腹部の第8節の横のとげの先が第9節の後ろはしにとどかないアカトンボの幼虫.大きさと,第8節,第9節の横のとげの長さの比かく.
<さがす場所のヒント>
コノシメトンボはため池や公園の池や学校のプールなどの住人です.とくに,学校の「プールのヤゴ救出作戦」で見つかることが多いトンボです.写真5のように,浅い池や水たまりなどにやって来て,腹の先を水面につけて産卵します.卵はそのまま冬をこし,次の年の春に幼虫が誕生します.そして,7月のはじめには羽化して親になってしまいます.ですから,幼虫の採れる時期は,4月から7月に限られています.とくに
終齢幼虫は,6月から7月にかけての短い期間にしか採れません.
写真5.産卵にやって来たオス・メスのペア.浅い池の水面を腹の先でたたいて,卵を産みます.