兵庫県の幼虫ガイド
H079. ヒメアカネ Sympetrum parvulum
ヒメアカネ終齢幼虫
写真1.ヒメアカネ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長13mm前後.2019.6.21.
<特ちょう>
 ヒメアカネはトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.翅芽(しが)は,まっすぐ後ろにのびています.触角(しょっかく)は糸のように細いです.腹の横のとげ(側棘:そっきょく)は第8,9節にあってどちらも短く,写真2のように,第8節のとげが第9節の後ろはしにとどくことはありません.背中のとげ(背棘:はいきょく)は先がするどくとがっていて,腹部の第4−8節にあります.

ヒメアカネのそっきょくとはいきょく ヒメアカネの触角と背中のはん点
写真2.腹部の第8,9節の横に小さなとげ(側棘)があります.
どちらも短く,第8節のとげの先は第9節の後ろはしにとどきません.
先のとがった背中のとげ(背棘)が,腹部の第4−8節にあります.
写真3.ヒメアカネの全体図.とても小さい幼虫です.
触角は糸のように細いです.
 


<よく似た幼虫との区別>
 ヒメアカネはアカトンボのなかまです.アカトンボの幼虫は,どれもとてもよく似ていて,トンボの専門家でも見分けられないことがあります.とくに,写真6の,腹部の第8節の横のとげが短いグループは,区別が難しくなっています.ですから,区別がつかなくて迷っても,それはしかたがないことです.みなさんもたくさん研究をして,見分け方を見つけてください.
 さて,ヒメアカネは湿地(しっち)に住むトンボであることに注意しておきましょう.ただし,ふつうのため池でも,岸の部分に湿地(しっち)のようなところがあると,そこにいるときもあります.湿地にいるということと,終齢幼虫になっても15mm以下の小さな幼虫ですので,それでおそらく見分けがつくでしょう.

そっきょくの長いアカトンボ5種.
写真6.腹部の第8節の横のとげの先が第9節の後ろはしにとどかないアカトンボの幼虫.大きさと,第8節,第9節の横のとげの長さの比かく.
<さがす場所のヒント>
 ヒメアカネは湿地(しっち)の住人です.写真5のように,湿地に生えている草の間にもぐりこんで,泥(どろ)に腹の先を打ちつけて産卵します.幼虫は,湿地を横切る浅い流れや,小さな水たまりの中にひそんでいます.秋に産みつけられた卵はそのまま冬をこし,次の年の春に幼虫が誕生します.そして,7月のはじめには羽化して親になってしまいます.ですから,幼虫の採れる時期は,4月から7月に限られています.とくに終齢幼虫は,6月から7月にかけての短い期間にしか採れません.

ヒメアカネの産卵場所.
写真7.産卵にやって来たメス.草の間にもぐりこんで産卵します.