H081. マイコアカネ Sympetrum kunckeli
<特ちょう>
マイコアカネはトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.
翅芽(しが)は,まっすぐ後ろにのびています.
触角(しょっかく)は糸のように細いです.腹の横のとげ(
側棘:そっきょく)は第8,9節にあってどちらもそれほど長くはなく,写真2のように,第8節のとげが第9節の後ろはしにとどくことはありません.背中のとげ(
背棘:はいきょく)は先がするどくとがっていて,腹部の第4−8節にあります.体の泥(どろ)を洗い流すと,写真3のように,腹の後ろ半分くらいが,全体的に明るい茶色になっているものが多いです.
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写真2.腹部の第8,9節の横にとげ(側棘)があります. 第8節のとげの先は第9節の後ろはしにとどきません. 先のとがった背中のとげ(背棘)が,腹部の第4−8節にあります. |
写真3.マイコアカネの全体図. 腹の後ろ半分くらいが,全体的に茶色っぽい色になっている.
触角は糸のように細いです. |
<よく似た幼虫との区別>
マイコアカネはアカトンボのなかまです.アカトンボの幼虫は,どれもとてもよく似ていて,トンボの専門家でも見分けられないことがあります.とくに,写真8の,腹部の第8節の横のとげが短いグループは,区別が難しくなっています.ですから,区別がつかなくて迷っても,それはしかたがないことです.みなさんもたくさん研究をして,見分け方を見つけてください.
さて,まずマイコアカネとよくいっしょに採れる
マユタテアカネとの区別です.写真4のように,マイコアカネの腹部の第8,9節の横のとげは,
マユタテアカネよりやや太く長くなっています.また泥(どろ)を落としたとき,写真5のように,マイコアカネの腹の先のほうは,広く明るい茶色に色づいているのが見られます.
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写真4.マユタテアカネとマイコアカネの腹の横のとげのちがい. マイコアカネの方が少し太く長い. |
写真5.マユタテアカネとマイコアカネの全体的な姿のちがい マイコアカネの腹の先のほうは,広く明るい茶色に色づいている.
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ミヤマアカネや
ヒメアカネとは,写真6のように,腹部の第9節の横のとげが,マイコアカネの方が長くなっています.
ミヤマアカネの中には,腹部の第9節の横のとげが長いものがありますが,マイコアカネほどにはなりません.
タイリクアカネや
コノシメトンボとは,マイコアカネの腹の先のほうが広く明るい茶色に色づいていることや,腹部の第8節の横のとげの長さが,マイコアカネの方が太く長いことや,マイコアカネの方が小さいことで区別できることがあります.しかし,なかなか区別がつかないこともあります.
写真6.腹部の第8節の横のとげの先が第9節の後ろはしにとどかないアカトンボの幼虫.大きさと,第8節,第9節の横のとげの長さの比かく.
<さがす場所のヒント>
マイコアカネは池の住人です.どちらかといえば平地のやや大きめの浅い池で,池のまわりにヨシなどの背の高い植物がしげっている池が好きです.そういった池で秋に水が少なくなるところによく住みついて,産卵しています(写真7).産み落とされた卵はそのまま冬をこし,次の年の春に幼虫が誕生します.そして,7月のはじめには羽化して親になってしまいます.ですから,幼虫の採れる時期は,4月から7月に限られています.とくに
終齢幼虫は,6月から7月にかけての短い期間にしか採れません.
写真7.産卵しているオス・メスのペア.池のまわりの浅いところで,腹部の先を泥(どろ)に打ちつけて,卵を産みつけます.