兵庫県の幼虫ガイド
H075. アキアカネ Sympetrum frequens
アキアカネ終齢幼虫
写真1.アキアカネ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長16−20mm.2016.6.12.
<特ちょう>
 アキアカネはトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.翅芽(しが)は,まっすぐ後ろにのびています.触角(しょっかく)は糸のように細いです.腹の横のとげ(側棘:そっきょく)は第8,9節にあってどちらも長く,写真2のように,第8節のとげが第9節の後ろはしにちょうどとどくような長さです.背中のとげ(背棘:はいきょく)は先がするどくとがっていて,腹部の第4−8節にあります.

アキアカネのそっきょくとはいきょく アキアカネの全体図
写真2.腹部の第8,9節の横に長いとげ(側棘)があります.
第8節のとげの先は第9節の後ろはしにちょうどとどく長さです.
先のとがった背中のとげ(背棘)が,腹部の第4−8節にあります.
写真3.アキアカネの全体図.触角は糸のように細いです.

 


<よく似た幼虫との区別>
 アキアカネはアカトンボのなかまです.アカトンボの幼虫は,どれもとてもよく似ていて,トンボの専門家でも見分けられないことがあります.ですから,区別がつかなくて迷っても,それはしかたがないことです.みなさんもたくさん研究をして,見分け方を見つけてください.
 さて,アキアカネが他のアカトンボの幼虫とはっきりと区別できる特ちょうは,写真2のように,腹部の第8節の横のとげの長さが,ちょうど第9節の後ろのはしにとどくくらいであることです.ほかのアカトンボでこのような長さの第8節の横のとげを持つものは,ネキトンボだけです(写真4).ネキトンボとアキアカネの区別は難しいです.くわしくはネキトンボのページを見てください.ネキトンボでは,写真4のように,腹部の第8節の背中のとげが短いものや,ないものがあります.ですから,第8節の背中のとげが短かったりなかったりすると,ネキトンボとしていいでしょう.さらに写真5のように,ネキトンボは,腹の横に白と黒のはん点がはっきりと出ているものが多いです.しかし,迷って分からなくなる個体もあります.

アキアカネのそっきょくとはいきょく アキアカネの触角と背中のはん点
写真4.アキアカネとネキトンボの横のとげの長さは似ている.
どちらも,第8節の先が第9節の後ろのはしにちょうどとどく.
写真5.アキアカネとネキトンボの全体的な姿のちがい
ネキトンボの方がもようがはっきりとしている.


<さがす場所のヒント>
 アキアカネは水田の生活者として有名です.しかし,ふつうのため池でも,浅かったり,水が少なくなって底が広く現れるようなため池にも,よく現れます.写真6は稲刈り(いねかり)の後の水田で卵を産んでいるアキアカネです.秋に産みつけられた卵はそのまま冬をこし,次の年の春に幼虫が誕生します.そして,7月のはじめには羽化して親になってしまいます.ですから,幼虫の採れる時期は,4月から7月に限られています.とくに終齢幼虫は,6月から7月にかけての短い期間にしか採れません.幼虫は,池や水田の底で,泥(どろ)をかぶって生活しています.

アキアカネの産卵場所.
写真6.産卵にやって来たオス・メスのペア.稲刈り後の水田の,しめった土の上に卵を産みつけています.