新 トンボ歳時記
No.409. 今年もキトンボだらけ.2012.11.25.

この三連休も金・土は雨と曇天.まったく欲求不満がいっぱいというところでしたが,今日は,その欲求不満を吹き飛ばすような青空.風もなく,一日中本当に穏やかな秋晴れでした.11月に入ってから結構寒い日が続いていますので,3週間もトンボたちに会っていないと元気にしているかどうかとても不安で,とにかく確実にトンボたちに出会える定点まわりをしてきました.

まずは,定点池に行きました.まだ朝の9:30ころですから,池というよりは農道を歩き,ひなたぼっこをしているアカトンボたちを探してみました.

マユタテアカネたちがたくさんいました.あと,コノシメトンボとキトンボがそれぞれ1頭ずつ姿を見せました.しかし最近よく降る雨のせいでしょうか,池にはかなり水が入っていて,キトンボの産卵にあまり適した状態ではなかったので,早々にここは引き上げ,サイトBへ回ることにしました.

サイトBに着くと,すぐに出迎えてくれたのがナツアカネでした.水田の中をまだ複数のオスが飛んでいました.メスは近くの林の縁で休んでいましたが,まだまだ産卵意欲はありそうな感じです.池にトンボがいなければナツアカネの産卵を見てもいいななどと考えながら,池に入りました.するとどうでしょう,もうたくさんのトンボたちが飛んでいます.最初に産卵活動を見たトンボははリスアカネでした.

この時期のリスアカネの産卵というのは,私的には遅い記録の筆頭になりそうです.リスアカネは,9月中旬ころには日陰で産卵します.ですから,いつもストロボ撮影になってしまいます.でもさすがに11月下旬ともなると日陰は寒いのでしょうね,日向で産卵をしていました.こういう太陽の光が当たっている状態でのリスアカネの産卵の写真は,彼らが比較的早い時期に産卵活動を終結させてしまうことを考えれば,なかなか撮れないかもしれませんね.

リスアカネは,今日の観察を通じて,3ペアが産卵していました.交尾も見ることができました.そうそう,リスアカネは,産卵の途中何回か止まって産卵を中断していました.寒いからなのか,老熟して疲れたせいなにかは定かではありません.去年の12月29日に観察したキトンボの産卵では,明らかに低温のため産卵活動を中断していましたが,今日は結構暖かいので,ちょっとどちらか判別がつきませんでした.

さて,順序としては,このあとキトンボの観察に移ったのですが,もう1種ここにいた,コノシメトンボを先に紹介しておきましょう.

コノシメトンボは,水面で連結打水産卵をしていました.2ペアくらいがいたように思われます.池中央の遠くで産卵する個体は判別がつきません.

さて,リスアカネの産卵が終わったとき,時刻は11時を少し回っていました.水際を見ると,キトンボが産卵をしていました.まったく時間的に無駄のない観察になっています.

リスアカネに気を取られている間に,キトンボはすでに複数が池に入って産卵をしていました.池の中程で打水産卵するペアが2ペアほどいました.でもやはり本命は水際のようです.キトンボは,樹林の陰にならない日当たりのよい方の岸辺,つまり北側の岸辺で産卵します,ですから岸に立って写真を撮ると逆光になってしまいます.今日は,池に入って写真を撮ってみることにしました.

池の中から岸部に向かって低い姿勢で観察をすると,キトンボ目線に近い状態になります.岸辺はなだらかに水際に続いていますが,池側から見ると,けっこう岸辺が壁になっていることが分かります.キトンボの産卵は,打水−上昇−打泥と3三拍子で行われますので,岸辺が壁になっている場所を好みます.

観察していると,水際で,次々にたくさんのキトンボが産卵を始めました.キトンボの好む産卵微小環境には,複数のペアがやってきます.今日はダブル産卵を観察することができました.

2つのペアがもつれ合うようにして産卵を続けます.打泥したい場所が多分同じなのでしょう.接近して,すぐ近くのポイントを打泥しようとします.交互に,餅つきのように,ぺったんぺったん打泥をしているのですが,やはり少しだけ周期が違っているのでしょう,だんだんと打泥のリズムが同調してきます.そしてついには,同じタイミングで土を打つようになりました.シンクロナイズド打泥です.

そうこうしていると,さらに1ペアが入ってきました.そう,トリプル産卵です.さすがにトリプル産卵は全部にピントを合わすことができません.どれかがぼやけた状態になってしまいましたが,まあ,キトンボが密度濃くいたことだけはお伝えできるでしょう.

11時過ぎに始まった産卵ショウは,その後12時半ころまで続きました.というより,私の方が集中力を失ってギブアップしたというのが本当のところです.水の中から撮影すると,中途半端な中腰になりますので,とてもきつい撮影になってしまいます.おまけにちょっとお腹が出てきたのか(mm),しゃがむ姿勢が窮屈でした.まあ,最後の方は岸辺に腰を下ろして撮影するという,何ともずぼらな撮影になってしまいました.

岸辺では,産卵を終えたメスをつかまえたのか,時々交尾のカップルが見られるようになりました.タイリクアカネでも,産卵後交尾と思われるカップルがいくつか見られました.キトンボもきっとそんな感じだろうと推察できます.そうそう,止まっているオスを全然撮影していなかったので,最後にちょっと撮影し,この池を後にしました.

いやはや,キトンボを十分に堪能できました.キトンボだらけにどこかの池で遭遇できる幸運を,この3年間続けてモノにしています.ラッキーですね.なかなかキトンボがそれなりにたくさん産卵に来るというチャンスはありませんものね.さて,時刻は12時半,昼食をとってから,オオアオイトトンボの産卵を見に寄ってから,帰宅することにしました.

ここはいつも行く森林公園です.今日は移動性高気圧にすっぽりとおおわれているせいか,昼を過ぎても風も出てきませんし雲も全くなし.完全快晴状態です.黄葉(紅葉)はもう遅い感じで,すでに葉が散り始めていました.オオアオイトトンボの方は全く産卵していず,オスが1頭だけ姿を見せました.その他は日向にヒメアカネがぽつんと止まっていただけでした.

まあ,今日は時間にすると,全行程5時間ほどの外出でしたが,秋晴れのもと,楽しい休日を過ごすことができました.ただ,写真を1700枚ほど撮ったので,帰ってすぐに整理をはじめ.夕食の中断だけで頑張ったのですが,公開がこんな時刻(20時前)になってしまいました.あまり撮りすぎるのはよくないなぁ...