新 トンボ歳時記
No.408. 寒中の羽化2種.2012.11.21.

11月は,毎年のように,休日に仕事が入ります.今年も11月に入って3回も仕事で休日が潰れました.まともに観察に出かけることができたのは,11月4日だけで,あと観察可能な11日,17日は完全な雨天でした.

そんな欲求不満気味の毎日でしたが,今日,職場で,オオシオカラトンボとウスバキトンボの羽化を観察することができました.職場の隅には花壇がつくられていて,すぐ横に側溝があります.そこの法面からは水が湧き出していて,いつごろからか,誰かが側溝に土のうを入れて堰をつくり,水を貯めていたのでした.そこには,ウスバキトンボやギンヤンマが発生しており,どうやらこの夏に産卵に来ていたようです.

ウスバキトンボの幼虫がたくさん発生していることはすでに知っていましたが,多分寒さで死滅するだろうと思っていました.ところが今日それが羽化していたのです.しかも,幼虫がまだ見つかっていなかったオオシオカラトンボと仲良く並んで羽化していたのです.

上の写真の坂の上あたりに土のうが入れてあり,水が堰き止められています.これらの幼虫は,おそらく土のうを乗り越えてここまで歩いてきてから定位したものと思われます.ウスバキトンボは,今頃の時期でも時々羽化をしているのを見ることがありますが,オオシオカラトンボは珍しいのではないかと思います.山本ら(2009)の「近畿のトンボ図鑑」でも,成虫が見られるのは11月上旬と書かれていて,これは成虫の「生き残り」が見られる末期を示していると思われますので,11月下旬に羽化しているというのは,かなり珍しいことと考えられます.

写真を撮ったときは日当たりがよく,いかにも陽気に誘われて羽化したように見えましたが,この後急に曇ってきて気温も下がり,人影に驚いたのか,オオシオカラトンボもウスバキトンボも水面に落ちてしまいました.トンボたちはすぐに拾い上げられましたが,日も陰り,体感気温も低くなってしまって,きっとこのままになると思います.

まあ,生きのびることを期待して,そのままそっとしておきました.仕事があるので,あまり彼らにかまっているわけにもいきませんので,観察はここまでにしました.