しばらくすると,このペアは飛び立ち,産卵を始めました.12月29日に,元気な産卵を見られるとは夢にも思いませんでした.ただ,彼らの動きはどことなくぎこちなく,上下動も少ないスケールの小さな産卵という感じでした.
▲産卵を始めたカップル.
陽が当たっている浅い岸辺とはいえ,水は,氷が張っているほどの温度です.産卵を始めてほどなく,ペアはまた暖かい岸の石の上に止まり,体を温め始めました.11:43に産卵を始めてから,止まったのが11:45ですので,2分間ほどの産卵でした.
▼産卵を一時休止して,再び暖を取るカップル.
▲再び産卵を始めたカップル.
11:49,約4分間の休息の後,ペアは再び産卵に取りかかりました.この産卵は1分ほどで終わり,メスが暴れ回ってタンデムを解きました.そしてそのまま背後の木立の方へ飛び去っていこうとしましたが,別のオスにつかまってタンデムとなって連れ去られました.産卵を撮影することができてホッとした気分になったので,オスの数を数えようと,岸を歩いて,片端からオスを撮影していきました,10頭ほど数えたところで,また別のタンデムのペアを見つけました.
▲2組目のタンデムのペア.メスの腹部背面が赤い.
このペアのメスは,腹部の背面が赤い色になっています.普通キトンボのメスは.腹部背面が赤くならない個体がほとんどのように思いますが,こういう個体もあるのですね.この産卵ペアも先ほどのペアと同じように,産卵しては体を温めるために静止し,といった行動を繰り返しています.さらに,オスがへたれなのでしょうか,産卵の途中で岸辺に止まってしまい,メスは羽ばたいて宙に浮かんでいるといったシーンが,一度ならずありました.
▲産卵を始めた2組目のペア.産卵中時々休む.
一番下:オスが止まってしまいメスだけが羽ばたいている.
では,時間を追って,産卵の様子を記録しておきます.
11:53'54 タンデムのカップルの発見.
11:57'24 連結打泥産卵の開始.
11:58'36 産卵を中断して岸辺に止まり暖を取る.
12:02'00 再び産卵を開始する.
12:02'32 水際近くの地面に止まり産卵を中断.
12:02'36 産卵を再開する.
12:04'14 産卵を中断して岸辺に止まり暖を取る.
12:06'56 三度目の産卵を開始する.
12:07'18 水際近くの地面に止まり産卵を中断.
12:07'22 産卵を再開する.
12:07'30 水際近くの地面に止まり産卵を中断.
12:07'36 産卵を再開する.
12:08'30 産卵を中断して岸辺に止まり暖を取る.
12:11'04 産卵を再開する.
12:11'26 タンデムを解いて警護産卵に移行する.
12:12'12 単独メスは岸辺に止まり暖を取る.
12:17'24 単独メスが産卵を行う(一時見失う).
12:18'46 単独メスが岸辺に止まり暖を取る.
12:22'20 単独メスの産卵の再開.
12:27'54 単独メスは産卵をやめて木立へ移動.
だいたい2分ほど産卵したら4分ほど暖を取るといったインターバルで産卵をしています.気温を測定できていないので,データとしてはあまりいいものではありませんが,冬の時期の産卵行動が,秋の産卵行動とだいぶん違うことは確かだと言えそうです.
▼タンデムを解いて,警護産卵へ移行.
▲いったん休息した後,メスの単独産卵へ移行.
ということで,今日は,季節はずれのキトンボだらけを体験しました.ここの個体群は,たぶん年を越すことになるでしょうね.次はお正月に来てみようと思っています.