トンボノート
No.668. トンボの生き残り調査(7) まだ頑張るキトンボ.2019.1.8.

前回の次の調査を,昨日にするか今日にするか迷ったのですが,気温が高くなる今日にしました.しかし,真っ青な冬空だった昨日に対し,今日は朝から薄雲がかかり,太陽の力がそがれるような午前となりました.あすは下り坂だし,今日は是が非とも行く必要があります.それに今日は,兵庫県におけるキトンボのもっとも遅い産卵記録日と同じ1月8日です.今日産卵を観察できれば,タイ記録となります.

気温の上昇が遅くなりそうなので,現地到着11:30ということにしました.現地に着くと,天が味方してくれたようで,薄雲がなくなり,太陽が直に地面に照りつけている状態でした.風もなく,最良の条件です.さっそく,オスを見つけました.同時に2頭は確認できましたが,写真を見ると,翅の破れから,3頭いたことが分かりました.

▲右後翅の後縁に少し大きな欠け(黒矢印)があり黄色斑がうすいオスNo.1.
▲左前翅の後縁部に大きな,右後翅の後縁部に小さな欠け(黒矢印)があり黄色斑が濃いオスNo.2.
▲右後翅の後縁部と先端部に欠け(黒矢印)があるオスNo.3.

オスがいることは分かりました.さて,今日は産卵に来るでしょうか.11:43,タンデムのキトンボが,石組みの護岸に止まりました.産卵にやって来たのです.これで,兵庫県のキトンボのもっとも遅い産卵記録に並びました.オスは上のNo.1からNo.3のいずれでもないようです.オスは結局4頭いたことになり,これは1月4日と同じ個体数です.

▲11:43,タンデムのキトンボが石組み護岸に止まっているのを発見した.

このタンデムの メスの左右後翅には肛角部に破れがあり,これは1月1日の単独産卵,1月4日の連結産卵のメスと同じ個体です.それぞれ,中2日,中3日で産卵に来ています.一昨日とその前日の気温が低かったので,昨日にせず今日にしたもう一つの理由に,中3日を予想したということもありました.しばらくしてからだが暖まったのでしょうか,飛び立って,交尾を始めました.

▲1分ほど暖をとった後,岸辺で交尾状態となった.
▲途中で飛び立って,場所を移動した.交尾は5分ほど続いた.

交尾が終わったのが11:48.その後飛び立って,産卵を始めましたが,すぐに水際の地面に止まりました.まだ体が十分暖まっていないのかもしれません.30秒ほど止まっていました.

▲産卵を始めたものの,すぐに止めて,水際の地面に止まった.

そして,11:50,本格的に産卵を始めました.写真を撮るために追いかけると距離をとって逃げていきますので,できるだけ動かないでじっとしていました.すると,私が遮蔽物になるためか,近寄ってきて,私の陰で産卵するようになりました.至近距離で撮影できたのですが,近すぎると撮るのが難しい.

▲静止するのを止めて水際へ飛び立ったタンデム.
▲産卵を始めたが,深追いせず,近づくのを待つ.頭がこちらを向いているのでやって来るはず.
▲待っていると近づいてきて,目の前で産卵することとなった.ただアングルが上からになる.

今日は光のかげんか,目の調子がいいのか,ピントが合っているのがよく分かる状況です.打水,打泥の瞬間をきっちりと決めることができました.キトンボが打水して卵を腹端の水滴に浮かせ,打泥して地面に放り投げる.目の前と,やや遠ざかったところとを記録しておきます.

▲キトンボの典型的な産卵(1).まず水際で打水して産卵弁と第9節腹板(亜生殖板)の間に水滴をためる.
▲キトンボの典型的な産卵(2).岸の方に飛んで移動する.水滴の中に黄色い卵が見える.
▲キトンボの典型的な産卵(3).水際の地面で打泥する.
キトンボの典型的な産卵(4).水際の水面に打水する.
▲キトンボの典型的な産卵(5).岸の方に移動する.
▲キトンボの典型的な産卵(6).水際の地面に打泥する.

約3分ほど産卵した後,産卵を止め,石組み護岸に止まって暖を取り始めました.約2分間静止した後,再び産卵を始めました.しかし,この産卵は1分と続かず,メスが嫌がるようにして連結を解き,飛び去っていきました.前回同様,1クラッチの卵が少ないのでしょう.もう十分老熟していますから.

▲11:53.産卵を途中で止めて,暖をとるために石組み護岸に静止した.
▲11:55,再び産卵を始めたものの,1分経たないうちにメスが連結を解き,飛び去った.

もう来ないだろうと思いながら,産卵が終わってもしばらく待っていました.すると,12:01,キトンボの単独メスが,止まっているのを見つけました.近づいて観察すると,先ほど産卵していたメスでした.翅の破れが特徴的です.このメスはいったん飛び立ち,1回打水した後,オスに追いかけられたこともあって,樹上へ上がっていったきりになりました.このメスが生き続ける限り,産卵は観察し続けることができそうです.

▲12:01,先ほどの産卵メスが池に入ってきて,暖をとっていた.翅の破れが特徴的である.

産卵はほんのひとときでしたが,まだまだキトンボたちは元気だと感じました.今年は正月は本当に穏やかで,気温こそ下がっていますが,ほぼ毎日日が差しているようで,キトンボたちも生き残っているのでしょう. また青空が広がった日に来ることにしましょう.今年の観察なかなか終われません.