No.724. アキアカネは晩秋のトンボになった.2019.11.23.

兵庫県南部でアキアカネの減少を感じ始めてから,もう20年近くが経とうとしています.この数年アキアカネが少し回復傾向にあるように感じますが,二点指摘しておかねばなりません.一点目は,数が回復したように感じるとはいえ,「どこにでもあふれかえっている」というような,昔の量ではありません.「環境が整っているところにはそこそこ集まってくる」という程度です.もう一点は,「アキアカネの繁殖活動最盛期が11月になった」ということです.昔は9月の下旬になればたくさん繁殖活動していました.今は9-10月はポツポツ見られるという程度で,次々と繁殖活動をするペアが産卵場所に入ってくる,というような状況にはなりません.このような状況になるのが11月なのです.

▲稲刈り後の水田で産卵するアキアカネ.

今日はそんなアキアカネを期待しながら,この15日に行ったところと同じところへ出かけてみました.15日もアキアカネはいましたが,数も少なくまだ産卵を見かけることはありませんでした.今日は暑いくらいの快晴で,アキアカネもたくさんやって来ているかもしれません.早速,谷に入った水田で,アキアカネが少なくとも3ペア,産卵をしていました.稲刈り後の水田での産卵,兵庫県の南部では,なにか久しぶりのような気がします.

▲水田横の水路で産卵するアキアカネのペア.

たくさん写真を撮りました.次は,キトンボが集まっていそうな池へ行ってみました.すると,池にもたくさんアキアカネがいました.池の水が落とされていて,岸の部分が湿地状になっているので,そこに集まって産卵をしていました.先の水田よりこちらの方がアキアカネの個体数が多かったように思えます.

▲池の岸では交尾うぃているアキアカネのペアもいました.
▲打水産卵をするアキアカネのペア.浅い部分で水中に卵を入れている.
▲こちらは湿地状の場所で打泥産卵するペア.
▲岸辺の泥の部分で打泥産卵をするアキアカネのペア.
▲全部で10ペア以上は産卵しにやって来ていたように思う.

現地に着いたのが11:00ころで,12:30まで観察を続けましたが,その間,次々と産卵にやって来るペアを観察することができました.もうそろそろ色々なトンボが姿を消すころなのですが,アキアカネはまだまだ元気そうです.

さて,アキアカネ以外にも,産卵をしているトンボがいました.マユタテアカネです.マユタテアカネは,2ペア産卵をしているのを見つけました.

▲岸辺でメスを待っているマユタテアカネのオス.
▲池横の草原に止まるマユタテアカネのメス.
▲水際に産卵するマユタテアカネのペア.
▲眉斑が目に見えるので,それが地面を見て,打泥する位置を決めているよう思えてしまう.
▲マユタテアカネはかなり高い位置から水際に急降下して打泥する.
▲腹部の曲がり方から見て,打泥産卵というよりオニヤンマが行う挿泥産卵という方が近い.
▲こういう角度で泥に突き刺さる感じの写真がよく撮れる

アキアカネとマユタテアカネ以外には,コノシメトンボ,タイリクアカネ,キトンボがいました.これらすべて交尾ペアを見たのですが,どういうわけか,その後の産卵を見ることがありませんでした.もっとも,タイリクアカネなどは,アキアカネの産卵と思って相手にしなかった可能性はあります.キトンボは,交尾個体を見失ったため,その後どうなったか分かりません.キトンボは,産卵後のメスをオスが捕まえることがあるので,交尾が終わっても産卵を始めない場合も結構あります.

▲コノシメトンボのオス・メス,っして交尾ペア.

コノシメトンボの交尾は,あまり写真に撮る機会がありません.なんか,やっと撮れたという感じです.

▲タイリクアカネのオスと交尾ペア.

タイリクアカネは,ほかのトンボに混じって飛んでいました.意識して見なければ見落としそうな感じでした.タイリクアカネは,近年内陸部に繁殖活動域を広げたと私は思っていますが,数が少なければ,昔のように大量のアカトンボがいる場所では,見落としていたかもしれませんね.

▲岸辺の日当たりのよいところに止まっているキトンボ.

毎年よく見かけるキトンボの産卵に,今年は出会う機会がまだありません.たくさんいるところへでかければ見られるのでしょうが,いつもと違うところで見てみたいという気もあります.

さて,全体として,まだまだトンボはたくさん飛んでいるという感じでした.15日と比べても,数は減っている感じがしません.マユタテアカネは少し減った気がしますが,逆にアキアカネが増えたので,全体としては,変わらない印象です.今年はいつ頃までトンボたちが飛んでいるでしょうか,また次の暖かい快晴の日に見に来てみたいと思います.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No.724. アキアカネは晩秋のトンボになった.2019.11.23. はコメントを受け付けていません。

No.723. ネオニコチノイド系農薬の脅威.2019.11.18.

昨日,日本トンボ学会の一般講演で,衝撃的な話を聞きました.アキアカネの減少の一つの原因と考えられているネオニコチノイド系殺虫剤の影響が,トンボといった極めて一部の昆虫群の減少にとどまらず,広く水生節足動物減少に影響を及ぼし,さらに食物連鎖を通して漁獲高の減少を引き起こしているという話でした.さらに陸上生態系にも影響が及び,ミツバチの体内や蜂蜜に残留していて,ミツバチの減少を引き起こしている原因ではないかという話もありました.演者は千葉工業大学の亀田豊准教授をはじめ,トンボ学会からの二名でした. なお,ヒトに影響を及ぼす濃度ではないということも述べられていましたが,ヨーロッパの多くの国ではこの殺虫剤は使用禁止になっているそうです.

ここで,「農薬」と書かずにより広い意味での「殺虫剤」と書いたのには理由があります.ミツバチの体内に残留しているネオニコチノイド系薬剤の生態系内での移動経路を解析研究した話の中で,「シロアリ駆除のための薬剤」が地中に浸透し,植物がそれを吸収し体内に取り込んで花粉や蜜にそれが含まれ,ミツバチが運搬して蜂蜜に含有されることや,地下を通って湧水となってわき出ている水をミツバチが飲んで体内に蓄積されている,といった話があったからです.つまり農業利用以外に広く利用されているネオニコチノイド系薬剤の影響という視点での話だったのです.

ネオニコチノイド系薬剤は,浸透性薬剤で動植物体内に取り込まれ,昆虫の神経系を撹乱する薬剤だそうです.ミツバチの場合, 働き蜂が巣から突然いなくなる症状,”蜂群崩壊症候群(CCD)”を引き起こす原因ではないかと考えられています.あくまで想像ですが,ひょっとしたら,神経系をやられて太陽コンパスが使えなくなり,帰巣できなくなってしまうのかもしれませんね.

ミツバチに対するネオニコチノイド系薬剤の影響に関する記事は,インターネットを検索するとたくさん出てきますので,興味のある方は, ネオニコチノイド(neonicotinoids) や ミツバチ,蜜(honey),CCDなどをキーワードにして,検索してみてください.色々な考え方や意見が表明されています.

さて,亀田氏の講演の後,トンボ学会の二名からは,アキアカネやノシメトンボの減少を詳細なデータから,ネオニコチノイド系薬剤の使用を示唆したものや,マダラナニワトンボやベッコウトンボなどの絶滅危惧種の突然の減少に,やはりネオニコチノイド系薬剤が影響していることを示唆する話でした.基本的には,使用時期と減少時期の一致性,薬剤の生息地における残留濃度と消滅の有無などの関係性から論じた内容でした.詳細はまだ研究中ですので,また公表されれば,本Webサイトでも取り上げたいと思っています.

私は,日々の野外観察や,そのまとめとしていくつかのトンボの減少についてこのサイトで議論していますが,よく使うフレーズに「生息地の見た目には何の変化もないのに,突然特定のトンボが減少したり消滅したりする」というのがあります.今まで薬剤の影響を強く感じていました.しかし今回の講演を聴いて,ますます確信が持てたという感じでした.

カテゴリー: コラム | No.723. ネオニコチノイド系農薬の脅威.2019.11.18. はコメントを受け付けていません。

No.722. トンボの生き残り調査.2019.11.15.

ここのところ天気のメリハリがはっきりしていて,今日は朝から雲一つない快晴.ただ気温は14度を超えることはなく,風は涼しい秋の日でした.こういう日は正午前くらいをねらっていくとトンボの活動が盛んです.アカトンボの生き残りがどれくらいいるか見に行くことにしました.場所は例年行っている池でした.車をかなり手前に置いて,農道を歩いて観察することにしました.

▲道路上に非常にたくさんのマユタテアカネが止まっていた.

まず目立ったのが,マユタテアカネでした.道路に3mくらいの間隔を置いてたくさん止まっていました.道路横の草地にもいて,歩くと次々と飛び立つありさまでした.今年はマユタテアカネが大発生しているようです.交尾態のものもいましたが,これは遠くへ飛び去ってしまいました.

▲道路横の草地に止まるマユタテアカネのオス.
▲池岸の石ころの上に止まるマユタテアカネのオス.

マユタテアカネに次いで数が多かったのは,コノシメトンボでした.最近コノシメトンボを姿をあまり見ない感じでしたが,今日の観察地は違っていました.道路上にもペタペタ止まっていましたし,池の畔にも数頭いました.水面上も元気に飛んでいました.コノシメトンボはメスもいました.メスは隠れるように草むらの陰で陽の当たるところに止まっていました.

▲マユタテアカネに混じってアスファルトの道路上に止まるコノシメトンボのオス.
▲池畔の石ころの上に止まるコノシメトンボのオス.
▲池畔の枯れ草の上に止まるコノシメトンボのオス.
▲オスのいるところから離れた草むらの陰に止まるコノシメトンボのメス.

道路上には,数は少なかったですが,アキアカネやタイリクアカネも姿を見せていました.アキアカネは確認できたのが3頭,タイリクアカネの方は1頭だけでした.本当にタイリクアカネは内陸部のふつうの池に,他のトンボたちと混じっているんです.

▲道路上に止まるアキアカネのオス.
▲道路上に止まるタイリクアカネのオス.縁紋の赤さがアキアカネとは違う.

コノシメトンボに混じって飛んでいたのが,リスアカネでした.日陰が好きなトンボですが,さすがにこの時期になると日向で活動していました.交尾態のものもいました.もう少し待てば産卵したかもしれませんが,次を急ぐことにしました.

▲池畔の石ころに止まるリスアカネのオス.
▲池から少し離れた草原で交尾するリスアカネのカップル.

今日はキトンボの顔を見に来たのです.この時期に水落をして石がゴロゴロしているような池底が露出している池だったら,たいがいキトンボがいるはずです.池の周囲を歩いて探しました.

▲水を落として石がゴロゴロした池底が露出した池.キトンボ好みだ.
▲日当たりのよい岸辺で暖まっているキトンボのオス.
▲キトンボは全部で4頭ほど確認した.

キトンボはやはりいました.でも他のトンボの数が多く,キトンボは目立たない存在でした.写真を見て分かるように,まだ若い感じがします.キトンボはこれからが本格的シーズンなのでしょう.

今日は産卵活動はまったく見ることができませんでした.ちょっと池に来るのが遅かったかもしれません.でも,アカトンボがまだまだたくさん生き残っていましたので,次の晴れに期待することにしましょう.来週は後半が晴れそうです.今日は6種類のアカトンボに出会いました.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No.722. トンボの生き残り調査.2019.11.15. はコメントを受け付けていません。

No.721. オオキトンボを見に.2019.11.5.

先日11月2日にトンボを見に行きましたが,まったくと言ってよいほどトンボがいませんでした.このトンボノートにも書けないほどの状態.今年はオオキトンボが元気に活動している姿を見ていませんので,何とかそれを見ようと,水を落としているため池を求めて,出かけてきました.二つ目の池が水を落としていて,周囲を歩くことができる状態でした.オオキトンボの姿も見ましたので,ここで観察することにしました.

▲水を落とした地面に止まっているオオキトンボを見つけた.
▲池の岸に止まっているオオキトンボのオスたち.
▲池の堰堤の上の草地に止まるオオキトンボのオス.

オオキトンボは写真のようにそれなりの個体数がいましたが,残念ながら産卵に来るペアはありませんでした.池の岸辺に座り込んでしばらく待っているとき,オスが1頭日向に止まって,ときどき摂食や他のオスを追ったりして飛び立つ姿が見られました.何度も同じところに戻ってきて止まりますので,着地の瞬間を連続撮影しようと思い,やってみるとうまくいきました.

▲手前から向こうにカーブしながら着地.4コマ連写.
▲着地直前の飛翔. 着地ギリギリまで脚をたたんでいる.

このオオキトンボのすぐそばにマユタテアカネのオスが止まっていて,ときどきオオキトンボに興味を持つのか,接近を試みようとしていました.オオキトンボはうっとうしいのか,後ろから近づくマユタテアカネに腹部を立てて嫌がるようなサインを送っていました.

▲オオキトンボの周囲を飛ぶマユタテアカネのオス.最後は向かい合うように止まった.

産卵ばかりでなく,オス同士の関わり合いも結構面白いものです.マユタテアカネは個体数は多くはありませんでしたが,池にいました.交尾が2例,産卵もしていいましたが,すぐにどこかへ行ってしまいました.

▲池にいたマユタテアカネたち.

オオキトンボ以上に個体数が多かったのがタイリクアカネです.池の岸に止まっていたり,池中央を飛び回っていたり,活発に活動していました.11:30頃には2ペアが産卵にやって来ました.

▲池のヨシに茎や葉に止まっているタイリクアカネのオス.
▲タイリクアカネは池の堰堤の上の草地にもたくさんいました.
▲11:00を過ぎて暖かくなってくると,水面を飛び回るようになる.
▲11:30頃になるとタンデムペアがやって来た.
▲産卵をするタイリクアカネのペア.

これら以外のアカトンボは,ナツアカネが少々と,アキアカネが1頭だけいました.本当に兵庫県南部でアキアカネを見るのは難しくなりました.先日の北部ではアキアカネばかりでしたのに.でも,アキアカネがやって来ていることに,少しだけほっとしています.例年通りであれば,もう少し冷え込めば個体数が増えるはずですけど...

▲今日1頭だけ見かけたアキアカネ.水面で水を飲んで止まったところ.
▲ナツアカネ,2オス1メスを見かけた.

11月2日に比べると,今日はまずまずアカトンボたちに出会えることができたようです.これ以外には,アオイトトンボが活動していました.そしてアオモンイトトンボがまだ生き残っていました.2頭見かけました.

▲池岸のイグサのような植物に産卵するアオイトトンボたち.
▲11月まで生き残っていたアオモンイトトンボ.これはかなり遅い記録である.

今年の秋はトンボが少ないと感じていましたが,今日は何とか結果が出たようです.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No.721. オオキトンボを見に.2019.11.5. はコメントを受け付けていません。

No.720. 兵庫県北部へ飛来種を見に.2019.10.31.

今日は快晴の予報でしたので,今年最後の兵庫県北部へ出かけてきました.タイミング的には遅いのですが,飛来種を見るのが目的です.結論から言えば,いたのは,アキアカネ,ナツアカネ,キトンボ,アオイトトンボだけでした.アキアカネはたくさんいて,繁殖活動も多く見られましたが,やはりこれもピークは過ぎているようで,朝空高く飛ぶ連結ペアはあまり見られませんでした.

▲9:30頃,アキアカネ:交尾態のオペがたくさん見られた.
▲アキアカネ:11:00を過ぎたころから産卵が盛んになった.
▲アキアカネ:午後になると,日向で休憩・摂食モードになる.

キトンボは,池にもいましたが,午後になると,道脇の草原などに止まっていました.メスは見つかりませんでした.

▲午後日向で過ごすキトンボたち.

わざわざ兵庫県北部まで行ったのですけど,特に成果もなく,のんびりとアキアカネと過ごした半日になりました.あとは,南部で,生き残り調査ということになります.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No.720. 兵庫県北部へ飛来種を見に.2019.10.31. はコメントを受け付けていません。