No. 948. オグマサナエ・タベサナエ羽化.2024.4.10.

今日の朝は寒かったですが,次第に気温が上がり,快晴.11:00頃到着をめどに,コサナエ属などの羽化を見に行きました.着くやいなや,池の縁からコサナエ属が飛び上がり樹林の中の方に飛び去っていきました.羽化しているようです.羽化している個体を刺激しないように水際に目を凝らすと,1頭のコサナエ属トンボが羽化をしていました.どうやらオグマサナエのようです.


▲羽化するオグマサナエのオス.▲

羽化しているオグマサナエとフタスジサナエは,いずれも胸側条が1本しか見えず紛らわしいのですが,昨年検討したように複眼背面が灰色っぽい色ということと,この写真では尾部付属器上の突起が確認できるので,そのように判断できました.羽化したあとの羽化殻も予想どおり,オグマサナエでした.羽化殻は2個見つけましたので,2頭羽化していたことになります.この池にオグマサナエがいることは間違いないのですが,個体数は少ないです.

さらに探しますと,もう1頭羽化している個体がいました.よく見るとこれはタベサナエです.


▲隣で羽化していたタベサナエのオス.▲

タベサナエも,この羽化個体以外に1の羽化殻を採っていますので,合計2頭は羽化していたと言えるでしょう.さらに中身の入った幼虫が顔を出して定位していました.タベサナエのここの個体群は羽化が始まったと言えるでしょう.


▲水面から上半身を出し,羽化を待つタベサナエ.▲

さらに小径を歩きますと,合計5頭ほどの処女飛行を観察しました.処女飛行していた個体はすべてタベサナエのようです.


▲処女飛行に飛び立って止まったタベサナエたち.▲

いつものようにこの後に二つの池を回りましたが,そこではコサナエ属やシオヤトンボの姿は見られませんでした.オツネントンボのいた池ではオスが3,4頭飛ぶだけでした.

最後にゲストを紹介しておきます.春のこの時期にだけ姿を見せるギフチョウです.天然物のギフチョウにはなかなか出会えないので,紹介しておきます.コバノミツバツツジに吸蜜しに来ていました.


▲ギフチョウに出会えた.▲

今サクラが満開で,少し散り始めました.ちょうどこの時期に羽化するのが,オグマサナエとタベサナエです.本当に生物季節はしっかりと同調していますね.


▲満開のサクラ.少し前は4月1日にこの状態だった.▲

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No.03. オグマサナエ,オス羽化
No.04. タベサナエ,オス羽化・未熟個体.

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No. 947. 日本海側のホソミオツネントンボ.2024.4.7.

今日はお花見をかねて兵庫県の北部へ出かけました.北部の方はすでに満開状態で,一部散り始めています.何故か兵庫県北部の方が南部より春が早いような気がしています.いつも4月中旬以降にホソミオツネントンボを見に行くのですが,少し早いこの時期はどうだろうということで初めて出かけました.

12:00過ぎ,外気温25℃.なんと夏日です.フェーン現象なのでしょうか,南部より気温が高い気がします.ホソミオツネントンボはたくさん池に集まり,繁殖活動を行っていました.南部では昨日初めて見たのですが,この感じでは昨日もたくさん集まっていたように思えますし,出現はもっと早かったかもしれません.北部にはオツネントンボが分布しないので,ホソミオツネントンボが春一番です.ホソミイトトンボはまだ姿を現していませんでした.もちろんシオヤトンボやコサナエの姿もありません.


▲兵庫北部の春一番はホソミオツネントンボだ.▲


▲たくさんのホソミオツネントンボが繁殖活動をしていた.7頭写っている.▲

今年は3月11日を皮切りに,すでに9回観察に来ています(1回は何もいなかったので報告せず).成虫越冬種以外にはなかなか出会えていませんが,今が桜の満開なので,そんなものでしょう.あと1週間もすれば桜が散り始め,花びらが浮かんだ水面でタベサナエなどの羽化が見られるでしょう.昨年は3月が暖かかったので,異常に早く出ていたようですね.


▲産卵するホソミオツネントンボ.▲

メスで褐色のものがいますが,これはこのまま青くならずに生涯を終える個体のようですね.あと,ホソミイトトンボを探しに行かなくては...

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No. 946. ホソミオツネントンボ始動.2024.4.6.

今日も先日と同じ場所へ早春のトンボを探しに行きました.だいたい桜が散り始めるころにコサナエ属が羽化を始めますので,やっと満開近くになった今日この頃では,まだコサナエ属の羽化は始まっていないでしょう.案の定その通りでした.コサナエ属もシオヤトンボも羽化していませんでした.

ということで成虫越冬種ねらいということになりますが,ホソミオツネントンボが2♂1♀いました.そのうち1♂1♀はタンデムになって産卵していました.


▲ホソミオツネントンボの♂と産卵ペア.▲

産卵ペアは敏感で,近づくことができませんでした.ここは先日オツネントンボを見つけたところで,オツネントンボは今日もそこそこいて,産卵も3組ほどが行っていました.


▲曇ってきて少し気温は上がりきっていなかったが,元気に産卵をしていた.▲

まだまだ池は賑やかではなく,やっと成虫越冬種が活動を始めたというところです.今年は3月の冷え込みが効いているのでしょうね.

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No.02 ホソミオツネントンボ,♂♀

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No. 945. 他のトンボを見に行った.2024.4.2.

オツネントンボの観察はひとまずおいて,今日は他のトンボ,特にホソミオツネントンボやホソミイトトンボを探しに行きました.コサナエ属の仲間はまだちょっと早いと思いますが,シオヤトンボなら見られるかもしれません.全部で3つの池を回ってきました.まだ他のトンボたちは姿を見せていませんでした.かわりに,最後の池で,オツネントンボを見ました.何年か前,オツネントンボに出会えなくて探し回ったことがありましたが,今年は出歩くたびに遭遇しています.

3つ目の池は,スゲが伸び始めていて,水面から10cmほど突き出ている状態でした.オツネントンボはそこに止まって産卵をしていました.やはり基本的には,オツネントンボは水面より高い位置に産卵するのが好きなようです.


▲水面より高い位置に産卵するのが好きなようだ.▲

▲ちぎれたスゲの葉が産卵基質のときは水面の位置でも産卵する.▲

この場所には,単独のオスが3頭ほど見られました.タンデムペアは最大2ペアです.昨日まで行っていた池と比べると数は少ないですね.

▲単独オスは3頭程度いたように思う.▲

シーズン終わりにキトンボの報告ばかりになるみたいに,今年のシーズン初めはオツネントンボの報告一色になってしまっています.同じ成虫越冬種のホソミイトトンボやホソミオツネントンボは,後者はごく一部に分布するも,北海道にはほとんど分布していません.対してオツネントンボは北海道全域に分布しており,逆に九州北部より南方には分布していません.つまり,より北方に分布が広がって寒冷地に適応しているのがオツネントンボということになります.

昨年もオツネントンボは4月1日には元気に繁殖活動していました.少し前は4月上旬ごろに繁殖活動を始めていたように思いますし,もっと前の1990年代では,4月中旬くらいに盛んに繁殖活動をしていたように思います.だんだんと繁殖開始時期が早くなっています.対して,ホソミオツネントンボやホソミイトトンボは,少し遅れて4月中下旬に繁殖活動を始めます.1990年代あたりでは,成虫越冬3種が混じって活動をしていました.しかし去年や今年は,オツネントンボがいち早く繁殖活動を開始しているのに,他の2種は姿を見せていません.最近の気温上昇に,より寒冷地に適応したオツネントンボが,より敏感に反応しているように見えます.

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No. 944. オツネントンボのビデオ記録.2024.4.1.

今日はオツネントンボのビデオ記録を録りに出かけてきました.今まで何度となくチャンスはあったのですが,意外と記録が録れていなかったためです.「兵庫県とその近隣のトンボたち」のページの欠落部分を埋めることができました.動画はYouTubeにアップしました.今年はWebサイト「神戸のトンボ」を充実させていければと思っています.

▲春一番! オツネントンボの活動▲

そのあと,谷筋を散歩しながらトンボを探しましたが,太陽が雲に隠れ,全くトンボの姿はありませんでした.今のところ元気なのはオツネントンボだけです.

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No. 943. オツネントンボ繁殖活動開始.2024.3.30.

昨日,朝のうちは雨が降ったりしていましたが,午後から晴れてきて気温がぐっと上がりました.今日は黄砂のせいか.空がうす煙で濁っているような色をしていました.ただし天気は晴れ.桜があちこちで開き始めていました.セーターが暑く感じるような気温で,初めてセーターを脱いでトンボ観察に出かけました.


▲桜が開き始めた.暖かい昼間でした.▲

観察地は,この何回かオツネントンボを見に出かけているところです.まずはいつも観察している草地をのぞきました.しかしトンボは全く見かけずでした.池に出ているかもしれません.急いで池の方に移動しました.最初はトンボの姿を見つけられませんでしたが,突然,3頭のオツネントンボのオスが池岸の草むらから飛び出し,バトルを始めました.いました.池に出て活動を始めています.


▲池面で飛び回っていたオツネントンボのオス.▲

よく探すと,あちこちに止まっているオスの姿が観察できました.時刻は11:15くらいです.産卵はしていないか目を凝らしましたが,見つかりません.


▲よく見るとあちこちにオスがいた.複眼濃背面に青いスポットが出ている.▲

タンデムのペアが飛び出しました.産卵しているようです.ただ,敏感で,私の動きを感じるとすぐに飛び立ち,池の真ん中の方に飛んでいって姿をくらまします.たくさん産卵しているときには,個々のペアはかなり大胆になるのですが,1ペアだけだとやはり警戒心を解かないようです.時間が経つと,少しずつペアの数が増えてきました.こうなると警戒心が緩みます.


▲水面に浮かぶカンガレイの枯れ茎に産卵するペア.▲


▲あちこちで産卵するオツネントンボのペアたち.▲

全部で10ペア足らずが産卵していたように思えます.またあぶれているオスは20頭以上はいたはずです.結局,池の近くの休息場所に徐々に集まって,一斉に産卵を開始すると言う仮説はうまく証明できませんでした.3日前,彼らはどこにいたんでしょうね.謎は深まるばかりです.

ということで,いよいよ私のトンボシーズンが本格的に始まりました.今年もできるだけたくさんの兵庫県のトンボたちに出会えるよう頑張るつもりです.

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今日出会ったトンボ
No.01.オツネントンボ.♂♀産卵.

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No. 942. オツネントンボ調査.2024.3.27.

この数日間寒の戻りということらしく,雨や曇りが多く,気温の低い日が続きました.きょうはやっとその寒さが終わり,暖かい日差しの晴れの日になりました.気になっていたオツネントンボをまた観察に行きました.


▲オツネントンボのオス.▲


▲オツネントンボのメス.▲

オツネントンボはいましたが,数は増えていませんでした.また,池にも出ていません.オス1頭とメス1頭.これらは前回と同じ個体かどうかは分かりません.ただメスの方は腹部第7節と8節の境目が,まっすぐになっておらず少しだけ曲がった感じがしている点が,前回見たのと同じです.

オツネントンボは褐色の地味なトンボですが,春のこの時期の草は,この体色が一番目立ちにくい保護色になっていることは間違いないことでしょう.今年は池にいつ出るか,また見に行きたいと思います.去年はこの池では4月1日にたくさん産卵していました.

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No. 941. オツネントンボ再び.2024.3.16.

前回オツネントンボを観察した場所へ,今日も観察に出かけました.ねらいは,数が増えているかどうかを見に行くことです.前回はたった1頭だけの発見でした.もしここが繁殖場所個体群の通常越冬場所なら,もう少し数がいてもいいはずだと思われます.やはり越冬場所は遠くにあるか,または分散してしまっている可能性が高いと思われます.そして春の繁殖時期が近づいてくると,帰巣性があるかどうかは別として,繁殖できそうな池に集まってくるのだと想像されます.

今日のねらいは,繁殖場所を求めて集まってくるという仮説を立て,繁殖時期が近づくにつれて分散している場所から移動してきて,しだいに数が増えてくるかどうかを見てみようというわけです.

今日はメスが1頭と,もう1頭飛ぶのを見ました.2頭いたことが確認できました.


▲オツネントンボのメス.日向で摂食活動を行っている.▲

また出かけていって,数が増えるかどうか見ていきたいと思います.

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No.940. 春を待つオツネントンボ.2024.3.11.

いよいよトンボの観察シーズンが近づいてきました.昨年は急な仕事の関係で観察を一時休止していましたが,やっとの事でその仕事も終わり,この春からはエンジン全開で観察を再開しようと考えています.

掲示板にオツネントンボが見られるという投稿を続けて報告いただき,その場所が繁殖場所から遠くはないところだそうで,それならということで,今日はこの春一番にオツネントンボを観察する予定の池周辺に出かけることにしました.現地に着いたのが11:30くらいで,快晴,気温は車の車外温度計で11℃というところ.陽だまりに行けば出会えるかもしれません.

着いて10分もしないうちにオツネントンボに出会いました.しかしさっと逃げられ行方不明.まあまあということで周辺を散策がてら探索.しかし他に姿はありませんでした.しかたなく最初に発見したあたりを丁寧に探したところ,オツネントンボのオスを発見しました.


▲オツネントンボのオス.陽だまりの仲で枯れ木に止まっている.▲

見つけたのはこれ1頭だけでした.ここで越冬していたというより,春になって間もなく活動開始ということで集まってきた第一陣の個体かもしれません.池はまだ抽水植生が全く姿なく,繁殖活動はできない状態です.オツネントンボが活動を始めるころには植生も伸びてくるのかもしれません.

ということで,今年の活動が,思わず幕を切って落とされたという感じです.

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No. 939. タイリクアカネが自宅に.2023.10.18.

昨日10月17日,今年最後と考えて,兵庫県北部に出かけてきました.アキアカネを見るためです.でも,状況は驚くべきものでした.アキアカネが激減していたのです.以下の記事で書いたのと同じ場所に行ってきました.なんと電線に止まるアキアカネがいなくて,ナツアカネが1頭いただけでした.

No.810. アキアカネとナツアカネ.2021.10.5.

実はアキアカネの減少は昨年から感じていました.一昨年あふれるほど飛んでいた某場所のアキアカネがかなり減っていたのです.昨年は年変動かもしれないぐらいに考えていましたが,今年はそれに輪をかけて減っていました.

この地域はコウノトリの野生復帰のため,広い地域の水田で無農薬・減農薬で米作りが営まれています.その成果があってアキアカネの数が非常に多いと考えていました.しかし今年は本当に数が少なかったのです.

もし水田でアキアカネが育っているならば,今年のような暑い日々が続くと,浅い水田の水温が非常に高くなることが予想されます.アキアカネの幼虫が暑さのせいで死んだという可能性はないのでしょうか.少なくともこの地域の減少は薬剤の影響ではないと考えられますから.メールでいただいた情報の中にも,ビオトープでトンボの幼虫が死んでいたというのがありました.この1,2年トンボの減少を肌で感じています.

さて,そんなことを思っていたら,今日,家の前の物干し竿掛けに,タイリクアカネが止まっていました.


▲物干し竿かけに止まっているタイリクアカネのメス.▲

また,少し前から夕方に散歩することが多くなりましたが,あるときギンヤンマがアブラコウモリに混じって摂食飛翔している姿に出会いました.そのときものすごく愛おしい感情がわいたのを覚えています.今日のタイリクアカネも似たようなものを感じました.

街中でも頑張っているトンボたち,そういった姿をまたいつか追いかけてみたいです.遠方の特別な場所ばかり行くのではなく...

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