No. 868. ヤブヤンマの産卵.2022.8.9.

今日は,ワンポイント観察ということで,今年というか,この数年どうしてもうまくいっていないヤブヤンマの産卵を見に行くことにしました.ちょっと調べてみると2018年を最後にヤブヤンマの産卵に接近遭遇していなかったのです.

いつものポイントに11:00頃に入りました.一瞥しただけでは何もいない感じです.リスアカネが止まっていましたので,まずそれを記録しておこうと移動しました.


▲日陰で繁殖活動を始めているリスアカネのオス.▲

すると,足下からヤブヤンマのメスが飛び立ちました.リスアカネが興味を示して近づきます.ヤブヤンマのメスはちょっと大回りしてそれをかわし,私のすぐ前の地面に止まり産卵を再開しました.


▲すぐ向こうの地面に止まって,土中産卵をするヤブヤンマのメス.▲

少しずつ近づいていきましたが,ほとんど動じることなく産卵を続けています.しばらくして飛び立ちました.木漏れ日の射すところで産卵を始めました.顔の部分にだけ日が当たっていて複眼が光っていました.


▲緑色に光る複眼を持つ,ヤブヤンマのメス.▲

これに近づこうとしましたが,今度は気づかれて飛ばれました.少し離れて水たまりの上を飛び回りましたが,やがて戻ってきました.そして時々あることですが,私の方に近づいてきました.そして手の届くような距離に止まって産卵を始めました.


▲もう至近距離で撮影している.下の写真はノートリミングで縦横比が異なる.▲

産卵しているところがカメラの最短撮影距離よりも内側という状況で,少しカメラを引いて撮影しました.上の下の写真はノートリミングで,いかに近くで撮影しているかが分かるでしょう.せっかくですから動画も撮影しました.ただ三脚を使っていないので揺れ揺れ!.


▲コケの生えた斜面で産卵するメス.私の好きなポーズである.▲

写真は十分撮れました.メスはまだまだ産卵を続けています.木陰で暑くもないので,しばらく産卵メスと過ごすことにしました.こちらが動きをやめると,メスも落ち着いて,同じ場所で10分近く産卵し続けました.例によって,止まっている足場を中心にして,腹端先端で円を描くように少しずつまわりながら産卵をしています.産卵管は土の中を突き刺しています.私はそれをじっと見ているだけ.なんか,すごく贅沢な時間のように思えました.

やがてさっと飛び立つと,一度水浴して,樹林の方に飛び去っていきました.4年ぶりの産卵接近遭遇でした.私の今日の目的は到着後わずか30分ほどで達成されました.こんな日も時々あります.帰りに川をのぞいてみますと,なんとキイロサナエのメスがいました.8月に見たのは初めてではないかなぁ.


▲淡色部も色がほとんど抜けて白くなった,老熟キイロサナエ.メス.▲

あともう少しトンボを探そうとも考えましたが,暑さのせいか,意欲がわかず,これで終えることにしました.とにかく暑すぎます.

そうそう,最後にゲスト.コゲラを見ました.県内でキツツキを見るのは初めてで,普通種だということですが,嬉しく思いました.


▲初めて間近に見たコゲラ.人なつっこいのか,近づいても逃げなかった.▲

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No. 867. 薮の中のヤンマたち.2022.8.8.

ここ数日間の不安定な天気を理由に,しばらくトンボ観察を休止していました.雷が激しく鳴ったり,雨が急に降ってきたり,まるで熱帯のスコールのようでした.写真は積乱雲の雲底です.こういうところから竜巻が降りてくるんでしょうね.この雲が自宅の方にやってきて雨を降らせたのですが,ちょっと怖かったです.


▲積乱雲の雲底が見える.これが襲ってきた.撮影地点は今晴れている.8月5日.▲

さて,やっと安定した天気が続くという予報が出ましたので,今日もまた「薮の中にヤンマを探す」を実行しました.暑い日中は,薄暗い林の中でトンボを探すのが一番いいですね.まず迎えてくれたのはオニヤンマでした.8月もお盆が近くになってくると,オニヤンマの繁殖活動が本格化します.見つけたのはメスでした.ちなみに今日一番最後に見つけたのもオニヤンマ,こちらはオスでした.一緒に紹介しておきましょう.


▲今日の一番最初と最後に出会ったトンボ,オニヤンマである.上がメス下がオス.▲

オニヤンマのメスを撮影していると,大きな黒いトンボが目の前に飛び込んできました.ぶら下がれそうな枝を物色するように飛んでいます.こういうときは焦らず固まった状態で見ておくのが一番です.止まりました.どうやらヤブヤンマのメスのようです.


▲ヤブヤンマのメスが入ってきて止まった.▲

写真を撮っていると,うっとうしく感じたのか,ちょっと飛んで別のところに止まりました.より低いところに止まったのでラッキーでした.このヤブヤンマのメスの目もガラス玉のように輝いています.ただし色彩はやはり緑青色をしています.先日の淡緑色のガラス玉複眼とは違いますね.


▲止まり直したヤブヤンマ.複眼に傷がある.オスにやられたか?.▲

この,相手の方から近づいてきたヤブヤンマに出会って,今日は何かいいことがあるような予感がしました.最近乱視がひどくなって,枝に止まるヤンマを見つけるのに苦労します.しばらくは何も見つかりませんでした.が,折れた木の枝先に小型のヤンマが止まっているのが目に入りました.これは,...予想通りマルタンヤンマのオスでした.


▲折れた枝先に止まるマルタンヤンマのオス.▲

マルタンヤンマのオスは,背中側から撮影すると,青い目に焦げ茶色の体という感じで,もう一つパッとしません.胸側のブルーの淡色条が写るように横や腹側から撮るのがいいのですが,位置的にうまく撮れません.何枚も撮っているうちに,嫌気がさしたのか,飛び立ちました.しかし弱々しく飛んですぐ近くに止まりました.ちょうど腹側が見える位置で,ブルーと茶色のコントラストがうまく表現できました.


▲この茶色と青の色彩が多くのトンボ屋を虜にする.▲

マルタンヤンマはストロボに対して結構反応するようで,また飛び立ちました.ストロボに反応して飛ぶというより,滅多に出会えない相手なので,私が殺気を出しまくっていたのかもしれませんね.見逃したかと思いましたが,よく探すと止まっている位置を見つけることができました.しかし今までより少し高く,写真には撮りにくい位置です.


▲ここにはかなりの時間止まっていた.▲

これで今日来た甲斐があったというものですが,一つ見つけるとまだいるのではないかと思うのが人の常です.少し場所を変えて,さらに探索を続けました.なんと,嘘みたいな話ですが,2頭目がいました.今度はちょうどいい高さに止まっています.


▲ちょうど目の高さ当たりに止まっていたマルタンヤンマのオス.▲

ただこのオスすぐに飛び立ってしまいました.やはり私の殺気が相当なものだったのでしょう(笑).人間が近づくと写真のように腹部を曲げる行動を見せました.最初のオスも同じです.こうなると飛び立ちやすくなるのでしょうか? マルタンヤンマの複眼のブルーは,ヤブヤンマオスの水色とも,ネアカヨシヤンマオスのマリンブルーとも違う,純粋な青という感じです.


▲マルタンヤンマの頭部と胸部の拡大.▲

このマルタンのオスが飛び立ったとき,入れ替わるように別のヤンマが降りてきました.こちらに目がいってしまったために,このオスは見逃してしまいました.降りてきたヤンマは少し先の方に止まりました.なんとマルタンヤンマのメスでした.今日は相手の方から近づいてくる!


▲マルタンヤンマのメス.胸側の黄緑が美しい.▲

このメスはいくらストロボを炊いてもびくともしません.メスは鈍感なのでしょうか? 先日出会ったメスは近づいたら飛んで逃げてしまいました.やはり個体差でしょうね.それにしてもオスと入れ替わりでメスが入ってくるなんて,恐ろしいくらい今日はついていますね.もう私は死ぬのではないかしら,と思うぐらいです(笑).

マルタンヤンマは,林の中に止まっているときでも,時々移動していると感じましたので,また最初のコースに戻ってみることにしました.最初に出会ったオスのところに行ってみましたが,もう姿はありませんでした.やはりじっと休憩しているだけではないようです.最初と同じコースに戻り歩き始めますと,なんと,またマルタンヤンマのメスが見つかりました.


▲2頭目のマルタンヤンマのメス.▲

このメスは,カメラをいじっている間に逃げてしまいました.マルタンヤンマはヤブヤンマなどとは違い,少し敏感なようですね.

知らぬ間に2時間以上経っていました.この後は,最初に出会ったヤブヤンマが少し移動してまだ止まっていたのと,最初に紹介したオニヤンマのオスに出会ったのが最後でした.そうそう,一番最初のオニヤンマのメスは最後まで止まったままで動いていませんでした.なおマルタンヤンマを探している途中,1頭のミルンヤンマを見ました.


▲最初に飛び込んできたヤブヤンマのメスは,ほぼ同じ場所にいた.▲


▲ミルンヤンマのメス.まだ未熟な感じである.▲

今日は2時間半ほどの薮歩きでしたが,成果は十分あったようです.今日はここまで.

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No. 866. ハネビロエゾトンボを観に行った.2022.8.2.

今日は外出を控えた方がよいと言われるぐらいの高温注意の日.日陰で観察できるハネビロエゾトンボを観に行きました.現地には9時過ぎに入りましたが,10時前まで全くトンボが飛びませんでした.今年は羽化期に流れが干上がっていたようなので個体数が少なくなっているのか? などと心配しましたが,なんとか2頭のオスと1頭のメスが入ってきました.

オスはいつもならずっと飛んでいるのですが,今日はすぐに止まろうとしました.


▲静止してメスを待つハネビロエゾトンボのオス.▲

オスと一緒にただただ待つだけの時間.ちょっと飛び方の違う個体が入ってきました.ただ打水することなく水面近くを飛んでいますので,ちょっとオスかメスが判別できませんでした.目の前を通ったときメスであることが確認でき,向こうへ打水しながら逃げていきました.


▲ただただオスと一緒に待つだけ.これは上と異なる個体である.▲


▲打水しながら逃げていくメス.上のオスにつかまった.▲

結局このメスはすぐにオスに見つかってお持ち帰りされました.普通メスは石の陰などに隠れるようにして同じ場所を行ったり来たりして産卵するのですが,このメスはまだ若いのでしょうか,流れの真ん中で「堂々と」打水していました.やがてオスに見つからないように産卵するように学習するのかもしれません.


▲このオスはメスが飛んでも動じることなく.私が帰るまで止まり続けていた.▲

その後,ハネビロエゾトンボの動きは全くありません.流れの横に座っていますと,10:45,1頭のヤンマが流れに入ってきて,木の枝に止まりました.ヤブヤンマのメスです.オスは先日来よく出会っていますが,メスとの接近遭遇は今年初です.


▲成熟したヤブヤンマのメス.カエルに食いつかれたような翅の破れがある.▲

ヤブヤンマの成熟メスの中のある個体には,複眼がラムネのガラス玉のように光るものがあります.ふつうは青緑色のものが多いようですが,時に濃い青色のものもあります.しかし少数ですがこのようにラムネのガラス玉のような輝きを持つ個体が見られます.この色は他のトンボには出ない色で,ヤブヤンマのメス,それもある個体(またはある時期)に独特のものです.ずっと以前に神戸で見たヤブヤンマがこの色をしていました(下の写真).久しぶりに出会えて,非常に嬉しいです.ところで,「ラムネ」ってご存じですか? 歳がばれそうです.


▲薄緑色のガラス玉のように輝くヤブヤンマのメスの複眼.▲

ネアカヨシヤンマのオスのマリンブルー,マルタンヤンマのオスの濃青色,ヤブヤンマのオスの水色,夏の黄昏ヤンマのオスはいずれも美しい青系統の色をしています.対して,マルタンヤンマやネアカヨシヤンマのメスの複眼は褐色系の地味な色彩です.ヤブヤンマだけが緑や青やこのような色に光り輝いています.もっともストロボの光を反射してのことですが...


▲2006.7.26 神戸市内.ガラス玉のように複眼が輝くヤブヤンマのメス.▲


▲ヤブヤンマメスの複眼の色彩の変異.▲

このあと,ヤブヤンマの産卵を観に行きましたが,不発でした.今日はこれで終わることにしました.車の外気温計は37℃を示していました.

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No. 865. ヤブとネアカを探しに行った.2022.7.31.

今日は,ヤブヤンマとネアカヨシヤンマを見に行きました.毎年行っているところですが,今年は状態がよくないので,今日だめなら今年はもう行かないことにしようと決めて行きました.現地に入ったのが10:30.11:00を過ぎた頃,ヤブヤンマのオスが入ってきて木の枝に止まりました.ヤブヤンマはいることはいるようです.


▲最初に入ってきたヤブヤンマのオス.▲

先日も書いたように,ヤブヤンマのオスは,お昼前後メスが産卵に来そうなところに止まる習性があります.この個体が飛び去った後,1時間ぐらいして次の個体が入ってきました.その後次々に出たり入ったりして,のべ6頭(翅の破れや体斑の微妙な違いから見て実際は3頭だと思う)入ってきました.


▲次々に入ってきては止まるヤブヤンマのオス.▲

一番下の写真の個体は,1時間近くじっと止まったままの状態でした.あまり私の存在を気にしないようで,一度飛んでもまた近くに止まりました.カメラの至近距離で撮影しても逃げませんでした.


▲300mmレンズの最短撮影距離で撮影.▲

このようにオスは次々と入ってきますが,結局メスは産卵に入ってきませんでした.雨の後の晴れ3日目のジンクスかもしれませんね.ヤブヤンマを待っている間,水たまりの中ではシオカラトンボとオオシオカラトンボが「激しく」飛び回っていました.ざっと見たところでシオカラトンボは50頭以上います.オオシオカラトンボが産卵を始めると,シオカラトンボが激しく干渉します.


▲オオシオカラトンボが産卵を始めた.オスが警護している.▲


▲産卵メスに激しく干渉するシオカラトンボたち.▲

シオカラトンボは産卵するオオシオカラトンボのメスに体当たりします.おそらくシオカラトンボのメスだと思っているのでしょう.オオシオカラトンボのオスは必死で警護しますが,多勢に無勢,メスの産卵を守ることができません.


▲シオカラトンボはあちこちに止まり,あちこちで交尾産卵をしていた.▲


▲ここでもオオシオカラトンボのメスに干渉している.▲

この水たまりではウスバキトンボも3頭ほどオスがメスを待って飛翔しています.ウスバキトンボの繁殖活動というのは,その個体数の多さから考えると,意外と見る機会が少ないものです.ここでは,暑い日向をものともせず,私が来たときからずっと飛んでいます.メスは3回ぐらい入ってきて交尾態になりました.


▲ウスバキトンボの交尾.メスは一切羽ばたかない.▲

ウスバキトンボは,暑くなってくると,腹部を下方にだらんと下げて飛ぶようになります.時々木の枝陰に止まることもありますが,ほとんど日向を飛び続けています.今日は35℃ぐらいあったはずです.この姿勢は,腹部挙上姿勢や腹部下垂姿勢に共通する,体温調節の意味があるのかもしれません.さすが熱帯地方で海を渡るトンボです.すべて飛びながら問題を解決しているみたいです.


▲腹部を下げて飛ぶ,腹部が赤くなったウスバキトンボのオス.▲

日陰ではリスアカネがもう活動していました.ギンヤンマも産卵に入りましたが,シオカラトンボに追われ続けて嫌気がさしたのか,すぐに飛び去ってしまいました.


▲リスアカネが日陰で繁殖活動を始めている.▲


▲ちょっと入ってきたギンヤンマだったがすぐに姿を消した.▲

時刻は14:00を過ぎました.もうヤブヤンマは産卵には来ないでしょう.長く止まっていたオスも姿を消しました.ここからはネアカヨシヤンマの産卵タイムです.少し場所を移動し,ネアカヨシヤンマを待つことにしました.すると時計で計ったかのように,ネアカヨシヤンマがすぐに産卵に入ってきました.しかし今日もまた近づかせてくれません.それでも追いかけ回しますと,一度姿を消しました.15:00少し前,今日の終了予定時刻が近づきました.本当に帰ろうとしたとき,再び産卵に入ってきました.敏感で,離れたところから写真を撮るしかありません.


▲遠くから撮影したネアカヨシヤンマの産卵.4mぐらい離れている.▲

近づいたら飛んでしまうのですが,一回だけ飛び立ったヤンマが私の方に向かって飛んできました.以前もあったのですが,人間の陰を隠れ蓑にするような行動です.私の足下に止まりました.真下です.


▲足下に止まったネアカヨシヤンマ.真上から見下ろしている.▲


▲ここは日向,私の陰が分かるであろう.少し体を傾けて撮った.▲

人間が近づくと逃げるのですが,かたまったようにじっとしていると向こうから陰を求めてやってくる.トンボって本当に変な生き物です.人間を人間と認識していないですね.動くと,その動きが危険な生き物として認識させているのでしょう.

まだ追いかけ回してもよかったのですが,ネアカヨシヤンマの産卵は同じような姿勢ばかりなので,記録がとれたことと,実は暑さでもう体力的に限界が近かったので,ここまでとしました.

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No. 864. オナガサナエの確認と藪.2022.7.30.

今日はオナガサナエの生息場所の状況を確認に行ってきました.昨年秋に植生のあるところが浚渫されてしまった川です.ただし流れの部分には重機が入っていないようで,春の調査でも,底生のサナエトンボ類は特に減ったという感じではありませんでした.しかし,羽化はしても,川の環境が変わってしまうと産卵にやってこなくなる場合があります.浚渫以前の状態と比較してみようというのが今日のねらいです.

朝8:00過ぎに到着.本当は6:00頃に来るのが一番いいのですが,最近は夜が寝苦しいせいか朝寝坊になってしまい,こんな時刻になりました.川にはすでにオナガサナエのオスがたくさん集まっていて,ものすごいスピードで飛んだり止まったりしています.


▲川の入りの上に止まっているオナガサナエのオスたち.▲

オスの動きは活発で,水面ぎりぎりをジグザグに飛んでメスを探しているかと思うと,ホバリングして少しずつスライドするように移動したり,朝のオナガサナエオスの行動は,日が高くなったときとは違っています.きっと,メスがたくさん来ることを知っているのでしょう.


▲水面をホバリングしながら移動するオナガサナエのオス.▲

メスの産卵ポイントは,少し表面が波立っているくらい浅くて,底の礫がはっきり見えるような場所です.ここというポイントを決めて待ちました.すると,上空をメスを捕らえたオスが飛び去っていくのが見えました.メスはやってきているようです.ほどなく,私が待っているぴったりのポイントにメスが産卵に入ってきました.


▲産卵に入ってきたオナガサナエのメス.▲

メスが産卵を始めますと,シオカラトンボのオスが干渉してきます.それをかわしながら産卵しています.産卵が終わると水浴して飛び去ります.その後も産卵に入ってきました.しかしシオカラトンボがこれを追い回して,なかなか落ち着いて産卵させてくれません.


▲次々に産卵に入ってくるメスたち.▲

少し離れたところにも産卵に入り,近づくとオスが水面にたたき落として連れ去りました.これだからメスはオスから逃げ回るのでしょうね.


▲少し離れたところでも産卵が見られた.▲

大きな卵塊をつくる個体もいて,いつもながらオナガサナエの産卵を観察するのは楽しいものです.


▲大きな卵塊をつくっているメスと,それがちぎれて落ちた瞬間.▲

1時間30分ほどの間に,のべ10頭ぐらいが産卵にやってきました.以前と変わらず,ここはオナガサナエの産卵場であり続けているようです.最近は,川の浚渫や道路工事でも,生き物に配慮した工法が採られているのでしょうか.壊れたと思った繁殖場所が以前と変わらず残っているのは,嬉しい限りです.

さて,まだ時刻は10:00前です.十分状況は確認できましたので,この後の時間,そう,「ヤブヤンマを藪の中で探す 第3回」を行うことにしました.一昨日産卵に来そうな藪の中の小池を確認しておきましたので,ここへ行ってみることにしました.

熱中症予防のため昼食をしっかりととり,到着したのは12:00前.池に着くと,なんとヤブヤンマのメスが産卵に入っていました.予想的中です.


▲着く早々産卵するヤブヤンマのメスを発見.▲

ただこのメス,なかなか近寄らせてくれません.おまけに産卵の着地点を探して飛び回るメスを見つけたオスがこれを追いかけ回し,とうとうメスは池を出て行ったかのように見えました.その後もオスは池に入って飛び回り,メスの産卵しそうな池岸をのぞき込んでいます.そしてしばらく飛ぶと,ここに止まるのではないかと期待していたヒノキの枝が垂れ下がったところに一時的に静止しました.ヤブヤンマのオスは,メスが産卵に来そうな場所付近の木の枝などに静止する習性があります.ねらいが当たると嬉しいものです.ゆっくりと近づきながら写真を撮り続けました.


▲ヤブヤンマのオス.▲

今年はヤブヤンマに手こずりそうだと思っていましたが,やっと接近遭遇を果たしました.本当にオスの複眼の水色は光り輝いていますね.

一方メスの方ですが,実はこれは大失敗でした.池から出て行ったとばかり思っていたメスが,池の反対側の岸でどうやら産卵を続けていたみたいです.岸からメスが飛び出したかと思うと,水浴をして飛び去っていきました.池を周回して探しておれば見つけていたでしょうね.どうも最近思い込みで探索をおろそかにして腰を落ち着けてしまうことが多い,いやはや年齢を感じます.

池ではコシアキトンボやオオシオカラトンボが産卵をしていました.13:30,今日の観察を終えることにしました.

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No. 863. ヤブヤンマを藪の中で探す(2).2022.7.28.

夏はヤンマの季節.今日もまた懲りずに,「ヤブヤンマを藪の中で探す」を実践しました.今年はヤブヤンマに手こずりそうなので,積極的に攻めようという魂胆があります.一昨日と同じコース,ほぼ同じ時間帯で活動しました.最初の公園では相変わらずタイワンウチワヤンマやチョウトンボが活動していました.


▲暑い日差しの中,タイワンウチワヤンマやチョウトンボは元気である.▲

この公園には薄暗い流れが整備されているので,ミルンヤンマを探しに入ってみました.1頭だけそれらしいのが飛びましたが,確認できませんでした.

お昼が近くなりましたので,移動しました.今日は,前回とは違ったトンボたちに出会いました.まずはエゾトンボのオスです.去年はエゾトンボの姿を見るだけで大変な努力を強いられましたが,今年は,先日のメス.今日のオスと,運良く姿を見つけられています.再び増加傾向があるのでしょうか? この夏の後半が楽しみです.


▲山道に何気なく止まっているエゾトンボのオス.▲

その後カトリヤンマを見ました.追いかけすぎたせいか逃げられてしまいました.山道をどんどん進んでいってもトンボの姿がありません.帰り道木々に囲まれた小さな池をのぞいたとき,ヤブヤンマのオスが池の中をぐるぐると旋回し,メスが産卵しそうな泥の岸上をのぞき込むような動きをしました.そして木の幹にちょっとだけ止まりました.


▲メスを探しているヤブヤンマのオス.▲

そういえばヤブヤンマの産卵の時間帯です.池の畔に腰を下ろして,しばらく観察を続けてみました.オスは池には長居せずすぐに出て行きますが,またしばらくすると戻ってきます.そしてメスが産卵しそうな池岸を探っています.一度に2頭のオスが入ったときには追飛行動も見られました.結局メスは産卵には来ませんでした.しかし,ヤブヤンマは健在であり,オスの動きから,ここに産卵に来る可能性も十分あります.今年もなんとかヤブヤンマの繁殖活動に出会えるかもしれません.

ということで,帰途につきました.しばらく進むとカトリヤンマが弱々しく飛んで,止まりました.


▲羽化してあまり時間が経っていないカトリヤンマのメス.▲

近づくと少し飛んでまた止まりました.まだ胸部が赤っぽく,縁紋も白くて,本当に羽化して間もない個体であることが分かります.やっとカトリヤンマも出始めたというところでしょうか.でも本当にカトリヤンマにも出会いにくくなりました.


▲カトリヤンマのメス.未熟なこの時期のメスは尾毛が切れていなくて長い.▲

あと,珍しく,ノシメトンボの未熟なメスが止まっているのに出会いました.


▲林内に潜り込んでいたノシメトンボのメス.▲

まあ5時間ぐらい頑張ってこの程度の結果で,本当にヤンマも少なくなりました.今日は木陰に止めていた車の外気温計が38℃を指していました.その後走っても36-37℃から下がりません.つまり私が歩いていた木陰の山道もきっと同じぐらいの温度だったのでしょう.風がほとんど吹いていなくて汗も乾かず,今日もふらふらする感じを抱きながら歩いていました.多分熱中症一歩手前というところで,なんか命がけのトンボ観察という気がします.

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No. 862. 身近な場所でも意外と幸運が.2022.7.26.

今日は,「ヤブヤンマを藪の中で探す」を実行しに行きました.あまり遠くへ出かけても仕方ないので,過去に見つけたことがある近場に出かけました.薄暗い林の中の山道を歩きながら止まっているヤンマを探すわけです.林の中で休むヤンマは,一番暑いお昼頃がいいので,最初に明るい池のある公園に寄ってみました.そろそろタイワンウチワヤンマが池に戻ってきている頃です.池では,タイワンウチワヤンマやチョウトンボが飛び交っていました.


▲いよいよタイワンウチワヤンマの季節がやってきた.夏本番である.▲


▲後翅の先端に透明部分のあるチョウトンボのオス.▲

1時間ほど探索し,ヤブヤンマを探しに行きました.11:00頃現地に入り,林の周辺や中を歩き始めました.しかしトンボの姿は全くといってよいほどありません.小さな池の畔でヒメアカネを見つけました.


▲未熟なヒメアカネのオス(上)とメス(下).▲

気温はとうに30℃を超えていますが,まあ日陰の山道を歩いているのでそれほど暑いわけではありません.まだカトリヤンマは早いかなぁなどと考えながら道を進んでいきますと,エゾトンボのメスが休んでいるのに出くわしました.最近はエゾトンボが激減しており,去年も姿は見たものの,オスの写真すら撮れない状態でした.それがなんとメスと出会ったのですから嬉しさは十倍です.産卵時以外に出会うのは珍しいことです.


▲林の縁の草に止まって休んでいるエゾトンボのメス.▲


▲斜面によじ登って接近撮影.▲


▲手前に植物体の陰が入ってしまった.▲

ひとしきり撮影し,そのままにして先を進みました.すると一人のトンボ屋さんが木の枝に向けてカメラを構えていました.何かヤンマがいるようです.撮影アクションが終わるのを待って近づきますと,なんとマルタンヤンマです.数枚シャッターを切りましたが,相手の方は動画を撮るということで,すべてのアクションが終わるのを待つことにしました.そして撮影場所を譲ってもらい,近づいて撮りました.


▲林の縁で休むマルタンヤンマのメス.▲


▲マルタンヤンマのメス.▲

兵庫県内でのマルタンヤンマというのは,写真撮影を半ば諦めているところがあって,こういうチャンスに出会えたことはとても幸運でした.お礼といっては何ですが,この方に先のエゾトンボのメスの場所へ案内しました.


▲こんな感じのところに止まっていた.▲

この後,もちろん意欲的に探しましたが,私にはこれ以外の個体を見つけることができませんでした.今日はすぐに帰るつもりで飲み物を持っていなかったので,探索時間を増やした結果熱中症一歩手前の状態になり,探索を終えました.気温は日陰で36℃になっていました.

マルタンヤンマは遠方へ出かけていっても,出会えなかったり,写真が撮れなかったりすることがほとんどなのですが,ちょっとした散歩気分のトンボ探索で,今日のように最近出会いにくくなったトンボたちに出会えることもあるので,やはり諦めずに攻めないといけないということです.結局ヤブヤンマには出会えず,やはり今年はヤブヤンマに手こずりそうな予感です.

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No. 861. ナゴヤサナエなどの確認.2022.7.24.

今日は,県内のナゴヤサナエ,ネアカヨシヤンマ,ヤブヤンマ,マルタンヤンマの調査に出かけました.まず,午前中によく飛ぶナゴヤサナエからです.昨年県内生存を再確認できた場所へ出かけました.着いたのは9時少し前.川面を見るとナゴヤサナエが飛んでいました.早速川に入って,メスが来ないかと体勢を整えて待ちました.


▲川面を飛ぶナゴヤサナエのオス.▲

ナゴヤサナエのオスは2頭確認できました.通り過ぎてから2,3分して戻ってきますので,かなり広い範囲を飛び回っているようです.メスはやはりそう簡単には姿を現しませんが,1,2度,水面を一直線に飛ぶナゴヤサナエ体格のトンボがいました.ただオナガサナエも同じような飛び方をするので,確認はできませんでした.


▲ナゴヤサナエのオス.▲

ナゴヤサナエ以外には,シオカラトンボが圧倒的に多く,ウチワヤンマの交尾態が2ペア飛んだりオオヤマトンボが周回したり,セスジイトトンボ,コフキトンボなども少数ですが活動していました.


▲コフキトンボのオス.▲

11:00頃まで観察を続けました.だんだんとオスの通過間隔が長くなり,気温の上昇とともにナゴヤサナエの活動が鈍ってきました.その後午後3時頃にも観察に来てみましたが,この時は全く飛びませんでした.


▲11:00頃まで飛び続けていたナゴヤサナエのオス.▲

次に,昼食をとってから,ヤブヤンマとネアカヨシヤンマの見られる湿地に出かけました.この8日に出かけたときは完全に水たまりが干上がっていました.その後雨が続き,多分水たまりは復活していると考えてやってきました.実際その通りでした.シオカラトンボがたくさん活動をしており,乾燥に強いハラビロトンボも活動をしていました.


▲産卵するハラビロトンボ.前方に水を飛ばす飛水産卵である.▲

しかしここで羽化していただろうオオシオカラトンボが少なく,干上がっていた影響を少し感じました.12時前に到着し,環境的にはヤブヤンマにはちょうど良い感じになっていました.しかしヤブヤンマは全く姿を見せませんでした.ヤブヤンマもこの湿地でそこそこの数が育っていて数を減らしたのかもしれません.乾燥化の影響のように感じました.一方ネアカヨシヤンマは1頭だけ姿を見せました.こちらは乾燥に強いヤンマです.


▲朽ち木に産卵するネアカヨシヤンマ.▲

ネアカヨシヤンマは1頭だけで,湿地に入ったり出ていったりしながら,時々産卵行動を見せました.まだ若いのかもしれません.ヤンマの若い個体は結構敏感で,落ち着いて産卵しないので,この個体にも近寄ることができませんでした.

この後午後のナゴヤサナエを見に行って,最後はマルタンヤンマの探索です.兵庫県では,マルタンヤンマが安定的に繁殖を繰り返している場所が十分に知られていないようです(私が知らないだけかもしれませんが).今年調べている休耕湿地はマルタンヤンマの生息地に適しているように思えるのです.

17時前に湿地に入り探索を開始しました.すると間もなく,緑色の草の上を飛ぶ真っ茶色のマルタンヤンマを見ました.色彩のコントラストに「マルタンヤンマはやはり美しい」と思わず心の中で叫んでしまいました.マルタンヤンマというとオスの美しさがよく言われますが,私は,オスの美しさは飽きが来るのに対し,メスのシックな感じは飽きが来ず,こちらの方が好きです.

マルタンヤンマのメスは時々草の中に沈み込むように降りて産卵しています.こういう姿を兵庫県内で見るのは久しぶりです.というか,過去に見たのは植生豊かなため池に産卵に降りてくるマルタンヤンマばかりでしたから,県外の多産地で見たこのような動きは初めてといってもいいと思います.ただ,マルタンヤンマはただの1頭だけでした.その後黄昏時にも1頭が上空を飛んだだけで,ここは多産地とは全くいえない状態です.たまたま来ていただけかもしれません.さらに,ネアカヨシヤンマやヤブヤンマのような黄昏飛翔ヤンマは全く姿がありません.

今後ここでの個体数増加に期待して,今日の観察を終えました.そう,写真の方は,産卵に降りるたびに近づこうと頑張りましたが,全くだめでした.やはり1頭だけだと超敏感です.飛んでいるところを超ピンボケで1枚証拠に残しています.

今年の夏はヤブヤンマに手こずらされるかもしれません.

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No. 860. ベニイトトンボの生息状況確認.2022.7.22.

今日は神戸市内のベニイトトンボの状況を確認に行きました.先日は県外で写真を撮ったのですが,今日は県内のベニイトトンボの生息状態確認です.


▲ベニイトトンボは健在だった.池1.▲

ここは小さな人工池で,昨年も確認した場所です.オスが3頭見られました.繁殖活動は見られませんでした.次に本命の池です.


▲この池には繁殖活動の他,オスが10頭以上見られた.▲

去年来たときにはそれほど数が多いようには見えませんでしたが,今年は池の周辺にもあふれ出ているほど数が多かったように思えました.ただし無数にいるというわけではなく十数頭程度というところです.産卵も2組が行っていました.近づくと飛んで逃げ,写真にすることはできませんでした.

まあ,生息状況の確認に来ただけですので,これで良しとしました.その他のトンボとしては,このブログ今年初登場のオオシオカラトンボとウスバキトンボ,またコシアキトンボは格別数が多かったです.


▲オオシオカラトンボのオス.たくさん見られた.▲


▲広場のような場所で摂食するウスバキトンボ.▲


▲相変わらず多いコシアキトンボ.▲

明日あさってと晴れが続くようですので,また調査に出かけるつもりです.

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No. 859. オジロサナエの産卵観察.2022.7.17.

今日は戻り梅雨の一時晴れ間.かねてより計画していたオジロサナエの産卵を見に行くことにしました.ちょっとまだ時期的に早い感じはしますが,このあとも天候があまり芳しくなく,7月下旬にはヤンマも見に行きたいので,今日はオジロサナエ一本に絞って観察に行くことにしました.果たして先日の場所は当たりかどうか....

オジロサナエは結構朝早く産卵に来ることがあるので,8時前には現地に入りました.川を上っていくと,まず飛び出したのはミルンヤンマの羽化個体でした.


▲川から飛び出てきたミルンヤンマの羽化個体.▲

もう秋のヤンマが出てきています.ヒメサナエもまだ道沿いに止まっていました.


▲川に出る前のヒメサナエ.▲

ということで,8時少し前に,先日見つけておいた場所に到着しました.まだトンボは何もいません.腰をかけて空を見上げると,1頭のヤンマが摂食飛翔をしていました.逆光で種名が分からないのですが,飛び方と,写真を拡大してみると腹部に縞模様が見られるので,ミルンヤンマと判断しました.


▲悠然と摂食飛翔を続けるミルンヤンマ.たくさんの小虫がいることが分かる.▲

肝心のオジロサナエの方ですが,8:20ごろに私の目をつけているポイントにオジロサナエが入りました.近づくと慌てて転がるように飛んで逃げました.オジロサナエには間違いありませんが,オスかメスかは分かりませんでした.

8:59,ヒメサナエが産卵に入りました.ヒメサナエももうピークは過ぎているようで,オスの姿がありません.メスは朝日を浴びながら,落ち着いて産卵をしていました.


▲オジロサナエのポイントのすぐ前に産卵に入ったヒメサナエ.▲

さらに待ちました.しかしなかなかオジロサナエは姿を現しません.9:30ぐらいに,またオジロサナエがポイントに入りましたが,これも近づくとすぐに飛んで逃げてしまいました.これはどうもオスのようでした.待てども待てども,オジロサナエのメスは姿を見せません.時刻は10:00を過ぎました.先日来たときにはオスたちは結構集まってきたのですが,今日はオスすら姿を見せません.やはりこのポイントはだめなのか,とだんだん焦りが出てきます.でも自分の今までの勘を信じて,待つしかありません.付近を回って見た感じでは,ここ以上に産卵に適した条件の場所はありません.

10:04,やっとオジロサナエのメスが姿を見せました.まさに私がここだと目をつけた場所で産卵をしています.


▲産卵にやってきたオジロサナエのメス.静止して卵塊を作り,飛んで打水する.▲

自分の経験と勘が当たった瞬間は,とても嬉しいものです.やはりこの場所に産卵に来ました.ただ毎回そうなのですが,その年の初ものは,緊張感が高いのか,あまりピントが来ないのです.たくさんピンボケを出してしまいました.


▲産卵するオジロサナエのメス.もう一つピントが甘い.▲

やっときたのですが,写真はもう一つぱっとしません.また来ることを期待して待ち続けました.しかし,全く姿を見せません.オスも来ないし,この場所はあまり良くないのかなと思い始めました.そこで,念のためもう一度周辺を探索することにしました.オスが集まっている場所はないかどうか.

しかし,やはりオスの姿はどこにもありません.オジロサナエの個体数自体が少ないのかもしれません.ヒメサナエはたくさんいることを,6月下旬の探索で確かめています.オジロサナエの数はそれに比べるととても少ないように感じます.場所より個体数なのかもしれません.まあしかし,メスが来たことは成果で,また個体数が多い年に来れば,たくさん産卵に来るかもしれません.この場所を大切にしていくことにしました.

帰り際にオスが1頭降りてきました.しかしこのオスもすぐに姿を消しました.


▲オジロサナエのオス.▲

12:00少し前,今日はこれくらいにすることにしました.すぐそばでずっと止まっていたミヤマカワトンボに挨拶をし,この場所を後にしました.そうそう,最後の方に降りてきたヒメサナエのオスにも挨拶を忘れないようにしました.このオス全然私の動きに動じることなく,ずっと同じ場所に止まっていました.目の前にメスが来て産卵しても動きません.変なやつでした.ちなみにそのメスは,私が近づくと,すぐ上の木の葉に止まりました.かなりバチャバチャやったのですが,やはりこのオスは動きません.


▲すぐそばにずっと止まっていたミヤマカワトンボのメス.▲


▲私が30cmほどの距離でバチャバチャやっても全く動かなかったヒメサナエのオス.▲


▲このメスは上のオスの目の前で産卵した.私が近づくと,樹上へ逃げた.▲

帰り道の林床で,ヒメサナエのオスがメスを追いかけているのを見ました.ヒメサナエは産卵場所でメスを見つけるだけでなく,こういった林床や草原でもメスを探しています.出会い場所は産卵場所とねぐら全体といった感じです.


▲林床でメスを追いかけていたオス(上)と追いかけられていたメス(下).▲

また別の場所では,オスが川石の上に止まっていました.


▲川石の上に止まってメスを待っているヒメサナエのオス.▲

少し下ったところで,コオニヤンマも姿を見せていました.


▲コオニヤンマのオス.▲

まあ,今日は十分な出会いはありませんでしたが,全般的にオジロサナエの個体数が少ないためである,という結論に落ち着きました.かつての場所では,オジロサナエはもっとあちこちで姿を見ましたから.

最後にゲストです.カラスアゲハとミヤマカラスアゲハが,川の対岸で吸水していました.どちらも死んだようにじっとして,長時間,黙々と吸水をしていました.


▲カラスアゲハのオスの吸水.▲


▲ミヤマカラスアゲハのオスの吸水.▲

車のそばの道路上には,暑いのにキリギリスが出てきて,私を迎えてくれました.


▲あちこちでキリギリスが鳴いていた.このオス白線の上で暑くないのだろうか?▲

ということで,今日は終わりです.

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