トンボノート
No.666. トンボの生き残り調査(5) 元旦のトンボ.2019.1.1.

みなさま,明けましておめでとうございます.今年から,トンボ歳時記からトンボノートへとタイトルが変わりました.詳しくは一つ前の記事をご覧ください.また,従来からのWordPressを再び利用することにしました.実は内々でWordPressを運用していましたが,特に問題が出ませんでしたので,再利用をすることにしたわけです. アドレスの変更が度々になって申し訳ありません.

さて,今日は,年越しのトンボ探しです.12月25日まで,アキアカネとキトンボが生き残っていましたが,彼らの姿を見ることができるでしょうか.朝,10:00に家を出ました.外気温は4度!.しかし空は快晴でほとんど無風ですし,車の中は温室状態で暖かい.気温は低くても,輻射熱は地面付近を20度以上にしてしまいます.期待感を持って出かけました.まずはアキアカネのいた場所へ立ち寄ってみました.しかし姿はなし.まあ,この時期はキトンボでしょう,ということで,キトンボの池に直行.到着は11:00でした.

池に入ると,さっそくオスが飛んでいました.全部で4頭,時々出会っては追飛行動をしています.そっと近づいてまずはお正月のトンボを撮影しました.

▲地面で暖をとるキトンボのオス
▲キトンボのオス.翅の色の広がりが上の個体とは異なっているので上とは別個体.

2011年の12月29日に,たくさんのキトンボと,産卵を観察したことがあります.でも2012年の1月,まったく産卵を見ることはできませんでした.そんな経験をしているので,今日もあまり産卵を期待していませんでした.池の岸辺に座ってしばらく待っていますと,水際を飛ぶキトンボを見つけました.飛び方がオスにしては少し変だと思い近寄ってみますと,単独メスでした.着いていくとやがて産卵を始めました.キトンボの年越し産卵はこれが初めてです.









▲単独産卵をするキトンボのメス
▲産卵を続けると,やはり体を温めるために,途中で日当たりのよいところに静止する
▲その後も産卵を続けたが,次に日向に止まった後,姿が見えなくなった

このメスは結構長い間産卵をしていたのですが,オスはまったく気づかなかったようです.というか,私がそばについてカメラを構えていますので,オスが近寄り難かったのかもしれませんね.

2回目にこの単独メスが暖をとるために止まったとき,もう1頭のメスが池に入ってきました.というか,入ったとたん,今度はオスに見つかってタンデムになりました.タンデムになった後,いったん日当たりのよいところに止まって体を温めているようでした.

▲池に入ってきたメスを捕まえたオス.キトンボのタンデム.

これはすぐに飛び立ち,交尾になりました.少し離れたところだったので,ゆっくりと近づいて行き,写真に収めることができました.オス単独なら,人影が近づくとすぐに飛び立つのですが,タンデムの場合は,あまり逃げません.オスもメスも,交尾に一生懸命になっているのかもしれません.それでも,あまりに近づくと飛び立ち,少し場所を移動して,交尾を継続しました.交尾は約6分あまり続きました.そして,交尾が終わると,もう一度体を温めるためか,斜面に止まりました.





▲キトンボの交尾.途中で一度場所を移動した.交尾が終わるとタンデムで静止した.

少しすると,このペアは,産卵を始めました.冬の産卵は動きが小さいので写真には撮りやすい対象です.打水と打泥を繰り返す,通常の産卵行動でした.打水の後のメスの腹端には水滴が付いており,その中に卵が浮かんでいるのも確認できました.きちんと卵を産み付けているようです.





▲産卵しながら近づいてくるキトンボのペア.

気温が高くなっているのか,このペアは休むことなく産卵を続けました.後で気温を確認したら,この産卵時刻12:00頃で,10度ありました.風もなく,正午で日差しも強くて,最良の条件での産卵活動のようです.追いかけるとやはり距離をとって逃げるので,辛抱強く待っていると,だんだんと近づいて産卵をするようになりました.

▲打水の瞬間.腹端が水につかり,産卵弁と第9節腹板の間に水が吸い付いている.
▲折り返して,また産卵を続ける.


▲打泥の瞬間.産卵弁の下面を打ちつけていて,水滴を押しつけるようにはしていない.
▲再び向きを変えて産卵を続ける.白丸内は腹端の拡大で,水滴の中に卵が見える.




▲上から順に,打水,少し飛び上がって,打泥,の順に産卵を行う.

このペアは結局一度も暖をとるために静止を行わず,上の写真の後,メスがオスを振り払うようにしてタンデムを解消し,飛び去りました.約4分間の産卵でした.時間的にはやや短いような気もしました.メスも黒っぽい体色になって老熟を伺わせます.生産できる1クラッチの卵がもう少ないのかもしれません.

ということで,今日の観察を終え,帰路につきました.帰りにオスを1つ写真に撮っておきました.多分はじめに写真に撮れなかった個体だと思います.

▲今日はここまで,また会えるかな?

実は,家を出るとき,今日はいてもいなくても今年最後の観察にしようと思っていたのですが.この状態ではまた期待が持てそうですので,記録をねらってまた来ようかと考えています.私的なキトンボの終見記録は,2012年1月9日です.公的な記録では1月22日というのがありますが,これはちょっと無理かな.