■見分けのチェックポイント
羽化殻全長22mm前後.典型的な個体では,側棘は第8,9腹節,背棘は第3−9腹節にあり,側刺毛は9−11本,腮刺毛は15本前後である.腮刺毛数については,朝比奈(1957)には18-19本,朝比奈(1959)には16-17本,石田(1996)には14-16本と記されていて,変異が大きいのかも知れない.第2腹節に背棘とよく似た隆起があるものや,第3腹節の背棘が微小なものがあるので注意を要する.一般的に第3腹節背棘は微小である(朝比奈,1959).第9腹節の背棘の先がまっすぐ伸びずに下方へ曲がる(矢印).
■分布と類似種
北海道,本州,四国,九州のほか,国後島,奥尻島,佐渡島,伊豆大島,対馬,屋久島などにも分布する.北海道には,本種と非常によく似た種であるモリトンボ,キバネモリトンボ,コエゾトンボ,ハネビロエゾトンボ,エゾトンボすべてが分布しているので,見分けるのが非常に難しい.なお,本州(キバネモリトンボが分布する一部の地域を除く),四国,九州などでは,原則として類似種はエゾトンボとハネビロエゾトンボしかいないので,形質を注意深く調べれば区別が可能である.
■生態
タカネトンボは羽化が近くなると,写真のように腹部を中心にきれいな緑色に見えるようになる.樹林に囲まれた池の,岸近くの落ち葉や枯れ枝などの植物沈積物をすくうとよく採れるので,そういったところに潜り込んで生活しているものとも思われる.また,樹林の中の小規模な水たまりにもしばしば見いだされる.