トンボ上科/エゾトンボ科 検索表
 エゾトンボ科幼虫はトンボ科幼虫とはっきりとした形態的区別のつけにくい分類群である.日本産のすべてエゾトンボ科幼虫に共通することは,尾毛の先端位置が肛側片の先端位置の50%を越えることである(トラフトンボとサキシマヤマトンボを除くと60%を越える).しかし,例えばトンボ科の中のハネビロトンボ属の尾毛の先端位置の肛側片の先端位置に対する割合も約68%程度あり,その他ウスバキトンボ,チョウトンボ属なども50%を越えており,エゾトンボ科だけの形質ではない.
 また,下唇側片前縁の鋸歯または歯列の切れ込みが深いこともすべてのエゾトンボ科幼虫に共通するといえるが,エゾトンボ属のものは他の群に比べると浅く,トンボ科との区別が曖昧になってしまう.一方トンボ科のウスバキトンボはこの切れ込みがかなり深くタカネトンボ以上である.
 さらに,触角第1節と第2節の合計長が,第1節基部内側から正中線までの距離と同じかより長いという形質(Norling,1997)は,サキシマヤマトンボが該当しない.
 これ以外には,(後肢)腿節の長さが頭幅長を越える(井上・谷,1999)というのがある.しかし,トンボ科にもわずかに越えているものがかなりある.
 以上より,トンボ上科内のエゾトンボ科幼虫のキーとしては,「尾毛の先端位置が肛側片の先端位置の50%を超える,触角の第1節と第2節の合計長は触角の第1節基部内側から正中線までの距離とほぼ同じかまたは長い,下唇側片前縁の鋸歯(または歯列)は(下記03b.ほどに)大きく深く非対称で10対以下,以上3つのうち2つ以上の形質を有する」とした.
検索キー01
01.触角の第1節と第2節の合計長が触角第1節の基部内側から正中線までの距離より明らかに短い(a).・・・ミナミヤマトンボ属−サキシマヤマトンボ
− 触角の第1節と第2節の合計長が触角第1節の基部内側から正中線までの距離より長いかほぼ等しい(b).・・・02
  a.サキシマヤマトンボ,b.タイワンコヤマトンボ.
検索キー02
02.肢が長く後肢腿節長は頭幅最大幅の1.4倍以上ある(a).・・・03
− 肢は長いが後肢腿節長は頭幅最大幅の1.4倍未満(b).・・・04
  a.オオヤマトンボの後肢腿節長と頭幅長の比較,b.タカネトンボの後肢腿節長と頭幅長の比較.
検索キー03
03.前下唇には腮刺毛も側刺毛もない(a).・・・オオヤマトンボ属−オオヤマトンボ
− 前下唇には腮刺毛も側刺毛もある(b).・・・コヤマトンボ属
  a.オオヤマトンボの前下唇.b.タイワンコヤマトンボの前下唇.
検索キー04
04.複眼後方に1対の小さな突起がある(a).明瞭な背棘が第2腹節にある(b).・・・トラフトンボ属
− 複眼後方に突起は見られず(c),かつ第2腹節に背棘がない(d).・・・05
  a,b.トラフトンボ,c,d.タカネトンボ.
検索キー05
05.側棘が第8,9腹節にあり(c)かつ背棘が「大きく(b:矢印)」少なくとも第4−9腹節にある(b),または側棘も背棘もなく体表面が長い毛でおおわれている(a:矢印).・・・エゾトンボ属
− 側棘が第8,9腹節にあり(f)かつ背棘が「小さく(e:矢印)」多くても第5−9腹節にしかない(e),または側棘が第8,9腹節にあり(f)かつ背棘はないか隆起状の突起がある程度(d:矢印),・・・06
var.杉村ら(1999)には,リュウキュウトンボの背棘が第4−9腹節と記されているので,第4腹節に背棘のある個体がいるのであろう.したがって,背棘配置よりその大きさを優先して判断すること.
a.クモマエゾトンボ,b,c.ハネビロエゾトンボ,d.カラカネトンボ,e,f.ミナミトンボ.
検索キー06
06.腮刺毛が12−13本程度で,長毛群から短毛群への移行部分に特に間が空かず連続して生えている.側刺毛は8,9本程度.・・・カラカネトンボ属−カラカネトンボ
− 腮刺毛が多くても11本程度までで,長毛群から短毛群への移行部分に少し間が空く(矢印).側刺毛は5本程度のものと,7,8本持つものとがある.・・・ミナミトンボ属
  a.カラカネトンボの下唇前基節,b.ミナミトンボの下唇前基節.
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