■見分けのチェックポイント
羽化殻全長28mm前後.通常,側棘は第8,9腹節,背棘は第2−9腹節にありいずれも明瞭で,側刺毛は6,7本程度,腮刺毛は9−11本程度である(右の図は微小なものを含めて12本ある).背棘は,第2腹節のものはまっすぐに立ち上がるが,その後次第に後方に曲がるようになり,第8,9腹節のものはむしろ下方に向かって曲がるようになる.第9腹節の側棘はその先端部が肛側片先端部にとどくくらいの長さがある.幼虫では後頭部前方に1対の小突起が見られるが,羽化殻では見落としやすい.
■分布と類似種
北海道,東北地方,新潟,長野,群馬,栃木,山梨,神奈川,静岡の各県に分布する.北海道では早春にこのサイズと形態で背棘が第2−9腹節にある羽化殻はない.エゾトンボ属の各種とは,第2腹節に背棘があること,下唇腮の下唇側片先端の切れ込みがやや深いこと(矢印),後頭部前方に1対の小突起があることなどの形態で区別できる.トラフトンボには同様に第2腹節に背棘があり後頭部前方に小突起もあるが,第9腹節の側棘が短く,その先端部が肛側片先端部にはとどかない.
■生態
福島県の生息地では,早春に,やや深い落ち葉の沈積物の中にいた終齢幼虫が採集された(幼虫全形図).その際,その他にたくさんの若齢幼虫も採れた.曽根原(1968)によると,終齢幼虫は第13齢で,羽化まで足かけ3年(成長期間としては2年)かかるという.