■見分けのチェックポイント
羽化殻全長37mm前後で終齢幼虫全長は32mm前後.触角は7節よりなり,短く糸状.触角の第4+5節の長さは,第3節の長さより長い(青木,1994).下唇側片の先端部は深く切れこみ歯列をなす.側刺毛は4本,腮刺毛は9本前後.下唇中片前縁中央の一対の突起は,尖ることなく円い.翅芽はハの字に開く.手元の終齢幼虫採品では,腹部腹面全体が黒褐色を呈するが,これが安定した形質かどうかは断定できない.飼育下において,亜終齢から終齢へと脱皮した際,体全体が黒化した幼虫が得られたことがあり(幼虫全形図),脱皮時の周囲の条件によって色素の沈着が起きるのかもしれない.側棘・背棘ともにない.肛上片・肛側片ともに先がするどく尖り,ほぼ同長.尾毛は短い.
■分布と類似種
沖縄島北部の限られた河川にのみ生息している.カラスヤンマと同所的に生息しており,幼虫をすくうと,両種が混じって採集される.カラスヤンマとは,下唇中片先端中央の一対の突起の形状で区別することができる.カラスヤンマでは,この先端外側が尖っており,オキナワミナミヤンマは円い(松木,1992).触角の第4+5節の長さが第3節の長さより長いのはオキナワミナミヤンマだけで,イリオモテミナミヤンマやカラスヤンマではこれがほぼ等長となる(青木,1994).
■生態
森林の中を流れる河川に生息している.流れの勾配がやや緩く水がゆったりと流れているところに小さな粒の礫や砂が堆積した部分があれば,そういった中にもぐっている.ミナミヤンマやイリオモテミナミヤンマのように,必ずしも大きな岩の下に潜り込んでいるというわけではなく,いわばオニヤンマと同じようなところに生活している.幼虫はカラスヤンマに比べて灰褐色味が強く,今まで採集した個体は例外なく腹面全体が黒褐色をしていた.これは若齢幼虫においても同様であった.