■見分けのチェックポイント
羽化殻全長37mm前後.後頭部の側縁はほぼまっすぐ後方に向う.下唇中片の前縁,中央欠刻の両側に1対の突起がある(1).側棘は第5−9腹節にあり,第5腹節のものは小さい.背棘はない.♀の原産卵管先端は第9腹節後縁を越える.♂の肛上片上の下付属器原器先端は尾毛先端より先の位置にくる.尾毛先端は肛上片先端の約1/2,肛側片先端の1/2より基部の位置にくる.肛上片は肛側片より短く,先端は背面から見て大きく二叉になる.肛側片の先端は内側に曲がる.羽化殻では見にくいが,第8(時に第9にも)腹節背面正中線上に淡色のスポットが現れる(幼虫全形図参照).
■分布と類似種
北海道南部,本州,四国,九州,屋久島,種子島,トカラ列島中之島にまで分布する.奄美大島,徳之島にはヒメミルンヤンマ,石垣島,西表島にはサキシマヤンマが分布していて,これらは外形がよく似ている.奄美大島のアマミヤンマ,西表島のイシガキヤンマも似ているが,これらは肛上片先端の肛側片先端に対する位置がより基部よりにくることで区別できる.しかし,本種はこれら類似種4種とは分布が重なっておらず,同定に関する実際上の困難は少ない.
■生態
河川の源流から上流域に生息する.樹林に覆われた,うす暗い,石がごろごろした流れの,落ち葉や枯れ枝の沈積した中に隠れている.飼育すると,岩にしがみついてじっとしているので,こういった場所の岩の隙間などにしがみついているのかもしれない.羽化が近くなると頭部と胸部を水面上に出して1週間以上じっとしている.