トップ写真の解説
川の上流で偶然であったメス.しきりに私をねらい,おでこに止まったり,腕に止まったり,長靴に止まったり,鞄に止まったりと,人間を恐れない個体でした.産卵基質は流れに転がっている小さな朽木です.他にも苔むす木の根などにも産卵しようとしましたが,これらには,止まって産卵管を突き立てるとすぐに飛び立って場所を変えていました.最終的な産卵基質は,やはり触覚によって決めているようです.
朽木への産卵.2009.9.5.
成虫
羽化は6月下旬頃から始まり,7月下旬の夕方暗くなる頃に,流れの横の道路上などを群れて摂食飛翔します.このとき非常に低いところを飛びます.昼間は薄暗い林の中などに止まっています.産卵は8月下旬から始まるというのを聞いたことがありますが,私は9月に入ってからしか見たことがありません.薄暗い流れで倒木が散乱しているような所を好んで,それら朽木に産卵するようです.乾燥した堅い木にはあまり産卵しません.繁殖期に,オスは時に流れの上をホバリングを交えながらメスを探すように飛ぶことがあります.10月末頃まで成虫の姿を見ることができます.秋深くなると日中に明るいところも飛ぶようになります.
林内で休息するオス.2018.7.26.
幼虫
ミルンヤンマの幼虫は,源流・上流域の流れの,落ち葉や枯れ枝が堆積した場所に見られます.流れの中央部に位置する淵の堆積物よりも,水際に近い浅場にたまっている枯れ枝などの堆積物の間にひそんでいることが多いです.春には亜終齢幼虫まで成長した個体が多く見られ,夏前に終齢になって,短期間で羽化に至るようです.成虫の目撃頻度と比較すると,幼虫はあちこちでよく採れます.幼虫は成虫の飛ぶ時期にも見られ,孵化から羽化まで最低2年はかかるようです.
スタジオ写真.2012.6.13.