■見分けのチェックポイント
羽化殻全長39mm前後.後頭部の側縁はほぼまっすぐ後方に向い,後頭角に小さな突起(矢印)がある.下唇中片の前縁,中央欠刻の両側に1対の突起がある.下唇前基節は非常に細長く,上記写真の下唇前基節の最大幅と最大長の比は1:1.98.肢の腿節,脛節に白色の環紋がありコントラストよくまだらに目立つ.側棘は第6−9腹節にあり,さらに第5腹節に痕跡的なものがあるが個体によってははっきりしない.背棘はない.♀の原産卵管先端は第9腹節後縁を越える.♂の肛上片上の下付属器原器先端は尾毛の先端位置を越えない.尾毛(cer.)は肛上片(epi.)より短い.肛上片(epi.)は肛側片(para.)より短く,先端は背面から見て大きく二叉になる(1).肛側片の先端は内側に曲がる.第8腹節背面正中線上に淡色のスポットが現れる(幼虫全形図参照).なお本種には,腹部背面の正中線に沿って太い淡色帯が現れる個体が多い.
■分布と類似種
西表島に分布する.石垣島には1例だけ記録があるがその後見つかっていない.奄美大島には亜種のアマミヤンマが分布する.アマミヤンマは本種に酷似しているが,第5腹節の側棘がかなり明瞭に認められ,また下唇前基節は明らかに本種と比較して短い.その他,奄美大島,徳之島にはヒメミルンヤンマ,石垣島,西表島にはサキシマヤンマが分布していて,これらは外形がよく似ている.これらは肛上片が本種よりかなり長いことで区別できる.トカラ列島以北に分布するミルンヤンマとは分布域が重ならない.
■生態
西表島の樹林に囲まれた水量の多い河川や,林内の細流の,樹木の根が水に洗われているようなところをすくうとよく採集される.飼育するとミルンヤンマに比べて非常に成長が速い.