■見分けのチェックポイント
羽化殻全長37mm前後.後頭部の側縁はほぼまっすぐ後方に向い,後頭角に小さな突起(矢印)がある.下唇中片の前縁,中央欠刻の両側に1対の突起がある.杉村ら(1999)によると,これは時に消失することがあるという.下唇前基節はイシガキヤンマほどは細長くなく,上記写真の下唇前基節の最大幅と最大長の比は1:1.76である.肢の腿節,脛節に白色の環紋がありコントラストよくまだらに目立つもののイシガキヤンマほど明瞭ではない.側棘は第5−9腹節にあり,第5腹節のものも明瞭である.背棘はない.♀の原産卵管先端は第9腹節後縁を越える.♂の肛上片上の下付属器原器先端は尾毛の先端位置を越えない.尾毛(cer.)は肛上片(epi.)より短い.肛上片(epi.)は肛側片(para.)より短く,先端は背面から見て大きく二叉になる(1).肛側片の先端は内側に曲がる.第8腹節背面正中線上に淡色のスポットが現れる.
■分布と類似種
奄美大島にのみ分布する.西表島には原名亜種のイシガキヤンマが分布する.イシガキヤンマは本種に酷似しているが,第5腹節の側棘がかなり不明瞭で痕跡的であり,また下唇前基節の長さが圧倒的に長い.その他,奄美大島,徳之島にはヒメミルンヤンマ,石垣島,西表島にはサキシマヤンマが分布していて,これらは外形がよく似ている.これらは肛上片が本種よりかなり長いことで区別できる.トカラ列島以北に分布するミルンヤンマとは分布域が重ならない.
■生態
樹林に囲まれた源流域の,植物の根が水に洗われているようなところをすくうとよく採集される.杉村ら(1999)によると,ヒメミルンヤンマと混生していることが多いが,より山深い源流域に多いという.