トップ写真の解説
キイロサナエは,1990年代には各地でその姿が見られましたが,最近数が見られるところがほとんどなくなってきました.そんなこともあって,メスの姿はなかなか見ることができず,産卵にもなかなかお目にかかれませんでした.そんな毎日を過ごしているとき,キイロサナエが素掘りの用水路で羽化しているのを見つけました.6月の中旬にもなるとたくさんの成虫もやってくるようになりました.そこで,ここでねらえば産卵にお目にかかれるという予想で産卵を待ち,2017年やっとのことでキイロサナエの産卵を見ることができました.写真はその翌年に訪れたときのもので,用水路に入って至近距離から撮影したものです.このメスは私やストロボの光に臆することなく,5分以上産卵を続けて飛び去りました.薄暗い中で黄色い斑紋がよく目立ち,ピント合わせも楽にでき,たくさんの写真が撮れたことを思い出します.このメスの産卵様式は,連続打水産卵でした.腹端の産卵弁に次に産下される卵が見えています.
打水産卵するメス.2018.6.21.
成虫
キイロサナエは春二番のトンボです.不思議と5月の20日前後に羽化をはじめ約3週間続きます.成虫は7月に入るまで飛んでいます.オスは流れの横に生えている草などに止まっています.しかしメスを捕まえてタンデムになる姿はほとんど見たことがありません.メスはオスの見えないようなところへ入ってきて産卵を行います.産卵はさまざまで,連続打泥産卵,連続打水産卵,間欠打水産卵,静止して卵塊をつくって打水する産卵,などの様式を,産卵場所によって採用しています.
オスの静止.2015.6.14.
幼虫
ヤマサナエに似ていますが,腹部第9節の縦横比が異なり,キイロサナエの方が細長い感じになっています.泥を落とすと,ヤマサナエとは腹部背面の斑紋が異なります.今までの経験では,生時の泥を落とした幼虫では,腹部第6節くらいまでの腰の部分が写真のように黄緑がかっていて,ヤマサナエではこのような色彩は出現しなくて淡褐色です.卵は短期間で孵化し,幼虫はその後3−4年間水中で生活して,最後の冬を終齢幼虫で越したものだけが翌春羽化します.
スタジオ写真.2016.4.10.