H057. キイロサナエ Asiagomphus pryeri
<特ちょう>
キイロサナエはやや大きなサナエトンボ型の幼虫です.写真1の矢印のように,前あしと中あし(
脛節:けいせつとよばれる部分の先)の外側にはっきりとした大きなとげが出ています.後ろあしにはそのとげはありません(写真1).腹の横のとげ(
側棘:そっきょく)は第7−9節にあります.またとても小さなとげ(
背棘:はいきょく)が,第9節の背中の部分に見えます.生きた幼虫の泥を洗い流すと,腹の横の部分が黄緑色に見えます.
触角(しょっかく)は棒のような形をしていて,はば広くありません.
翅芽(しが)は開かずまっすぐ後ろにのびています.
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写真2.キイロサナエには,腹部の第7−9節に側棘があります. |
写真3.ヤマサナエとキイロサナエの比かく. |
<よくにた幼虫との区別>
キイロサナエによくにた幼虫には,
ヤマサナエと
ホンサナエがいます.キイロサナエと
ヤマサナエの違いは,写真3のように,腹部横のとげ(
側棘)の位置の違いと,腹部の第9節の形の違いです.ふつう,キイロサナエには第7−9節にしかとげがありませんが,
ヤマサナエには第6−9節にとげがあります.また第9節の形は,キイロサナエのほうが
ヤマサナエよりやや細長い感じです.生きた終齢幼虫の泥を洗い流すと,写真4のように,キイロサナエは腹部の横が黄緑色に見えますが,
ヤマサナエは黄緑色になることはありません.
ホンサナエとの区別も,まずは泥を洗い流して,腹の横が黄緑色に見えるかどうかを調べてみましょう.また写真5のように,キイロサナエと
ヤマサナエでは腹部の第6節のはばが腹部の第5節のはばより少し小さくなります.しかし,
ホンサナエでは,腹部の第6節のはばは,第5節のはばとほとんど同じです.また生きた幼虫の泥を洗い流すと,
ホンサナエでは,写真5の緑矢印で示したように,はっきりとした黒っぽいまるいもようがならんでいます.
写真5.
ホンサナエは第5節のはばと第6節のはばがほとんど同じだが,
ヤマサナエとキイロサナエでは,第6節のはばのほうが小さくなる.
<さがす場所のヒント>
キイロサナエは川の住人です.かなり大きな川から,用水路のような細くて小さな流れにまで住んでいます.大切なポイントは,川にしても,用水路にしても,岸近くや底に砂や泥(どろ)がたまっていることです.キイロサナエはこういった砂や泥の中にもぐりこんで生活しているからです.キイロサナエは,
ヤマサナエにくらべると数が少ないトンボなので,あまり見つかりません.
写真6.キイロサナエの産卵.これは用水路に卵を産みに来たメスです.底に泥が見えますが,そういうところにもぐりこんで生活します.