H056. ホンサナエ Shaogomphus postocularis
<特ちょう>
ホンサナエはサナエトンボ型の幼虫です.写真1の矢印のように,前あしと中あし(
脛節:けいせつとよばれる部分の先)の外側にはっきりとした大きなとげが出ています.後ろあしにはそのとげはありません(写真1).腹の横のとげ(
側棘:そっきょく)は第6−9節にありますが,第6節のとげはとても小さく見えにくかったり,時はないこともあります.また小さなとげ(
背棘:はいきょく)が,第8,9節の背中の部分に見えます.
触角(しょっかく)は棒のような形をしていて,はば広くありません.
翅芽(しが)は開かずまっすぐ後ろにのびています.
|
|
写真2.腹部の第6−9節に側棘があり,8,9節に背棘があります. |
写真3.ミヤマサナエとホンサナエの比かく. |
<よくにた幼虫との区別>
ホンサナエによくにた幼虫には,
ヤマサナエと
キイロサナエがいます.ホンサナエと
ヤマサナエや
キイロサナエとの違いは,写真5のように,ホンサナエでは,腹部の第6節のはばが第5節のはばとほとんど同じになりますが,
ヤマサナエと
キイロサナエでは腹部の第6節のはばが腹部の第5節のはばより少し小さくなります.また腹部の横が黄緑色になることはありません.さらに,写真5の緑矢印で示したように,はっきりとした黒っぽいまるいもようがならんでいます.
もう一つホンサナエとよくにている幼虫に,
ミヤマサナエがあります.
ヤマサナエや
キイロサナエとの区別より,もっとむずかしいかも知れません.写真3のように,ホンサナエでは腹部の第6−9節に横のとげ(
側棘)がありますが,
ミヤマサナエではそのとげは腹部の第7−9節にしかありません.しかし,ホンサナエの中には腹部の第6節の横にとげがないものがいますので,確実な区別点にはなりません.もう一つの区別点は,写真3のように,腹部の第9節の形が,ミヤマサナエとはちがいます.
ミヤマサナエでは黄矢印のようにカーブが急になっています.これは全体的な感じですが,
ミヤマサナエの方がホンサナエより黒っぽい感じで,腹部もうすっぺらい感じがします.
写真5.ホンサナエは第5節のはばと第6節のはばがほとんど同じだが,
ヤマサナエと
キイロサナエでは,第6節のはばのほうが小さくなる.
<さがす場所のヒント>
ホンサナエは川の住人です.用水路などにはほとんど見つかることがありません.大きな川で,砂がたっぷりと底につもっているようなところを好みます.下の写真は,卵を産みに来たホンサナエのメスです.このような川の砂地の中にもぐりこんで生活しています.なお,ホンサナエは,兵庫県では見つけるのがとても難しいトンボですので,めったにとれることはありません.
写真6.産卵に来たホンサナエのメス.砂がたっぷりとたまった,はばの広い川に住んでいます.