兵庫県の幼虫ガイド
H056. ホンサナエ Shaogomphus postocularis
ホンサナエ終齢幼虫
写真1.ホンサナエ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長25mm前後.2016.4.10.
<特ちょう>
 ホンサナエはサナエトンボ型の幼虫です.写真1の矢印のように,前あしと中あし(脛節:けいせつとよばれる部分の先)の外側にはっきりとした大きなとげが出ています.後ろあしにはそのとげはありません(写真1).腹の横のとげ(側棘:そっきょく)は第6−9節にありますが,第6節のとげはとても小さく見えにくかったり,時はないこともあります.また小さなとげ(背棘:はいきょく)が,第8,9節の背中の部分に見えます.触角(しょっかく)は棒のような形をしていて,はば広くありません.翅芽(しが)は開かずまっすぐ後ろにのびています.

ホンサナエのそっきょくとはいきょく ホンサナエとミヤマサナエ
写真2.腹部の第6−9節に側棘があり,8,9節に背棘があります. 写真3.ミヤマサナエとホンサナエの比かく.


<よくにた幼虫との区別>
 ホンサナエによくにた幼虫には,ヤマサナエキイロサナエがいます.ホンサナエとヤマサナエキイロサナエとの違いは,写真5のように,ホンサナエでは,腹部の第6節のはばが第5節のはばとほとんど同じになりますが,ヤマサナエキイロサナエでは腹部の第6節のはばが腹部の第5節のはばより少し小さくなります.また腹部の横が黄緑色になることはありません.さらに,写真5の緑矢印で示したように,はっきりとした黒っぽいまるいもようがならんでいます.
 もう一つホンサナエとよくにている幼虫に,ミヤマサナエがあります.ヤマサナエキイロサナエとの区別より,もっとむずかしいかも知れません.写真3のように,ホンサナエでは腹部の第6−9節に横のとげ(側棘)がありますが,ミヤマサナエではそのとげは腹部の第7−9節にしかありません.しかし,ホンサナエの中には腹部の第6節の横にとげがないものがいますので,確実な区別点にはなりません.もう一つの区別点は,写真3のように,腹部の第9節の形が,ミヤマサナエとはちがいます.ミヤマサナエでは黄矢印のようにカーブが急になっています.これは全体的な感じですが,ミヤマサナエの方がホンサナエより黒っぽい感じで,腹部もうすっぺらい感じがします.

ホンサナエ,ホンサナエ,ホンサナエ
写真4.左はヤマサナエ,中はキイロサナエ,右はホンサナエ.
ホンサナエ,ホンサナエ,ホンサナエ
写真5.ホンサナエは第5節のはばと第6節のはばがほとんど同じだが,ヤマサナエキイロサナエでは,第6節のはばのほうが小さくなる.
<さがす場所のヒント>
 ホンサナエは川の住人です.用水路などにはほとんど見つかることがありません.大きな川で,砂がたっぷりと底につもっているようなところを好みます.下の写真は,卵を産みに来たホンサナエのメスです.このような川の砂地の中にもぐりこんで生活しています.なお,ホンサナエは,兵庫県では見つけるのがとても難しいトンボですので,めったにとれることはありません.

ホンサナエの産卵場所.
写真6.産卵に来たホンサナエのメス.砂がたっぷりとたまった,はばの広い川に住んでいます.