H058. ヤマサナエ Asiagomphus melaenops
<特ちょう>
ヤマサナエはやや大きなサナエトンボ型の幼虫です.写真1の矢印のように,前あしと中あし(
脛節:けいせつとよばれる部分の先)の外側にはっきりとした大きなとげが出ています.後ろあしにはそのとげはありません(写真1).腹の横のとげ(
側棘:そっきょく)は第6−9節にあります.ただし,ときどき第6節のとげがないものがあります.またとても小さなとげ(
背棘:はいきょく)が,第8節と9節の背中の部分に見えます.ただし,これもときどき第8節のとげがないことがあります.
触角(しょっかく)は棒のような形をしていて,はば広くありません.
翅芽(しが)は開かずまっすぐ後ろにのびています.
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写真2.ヤマサナエには,腹部の第6−9節に側棘 があります. |
写真3.ヤマサナエとキイロサナエの比かく
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<よくにた幼虫との区別>
ヤマサナエによくにた幼虫には,
キイロサナエと
ホンサナエがいます.ヤマサナエと
キイロサナエの違いは,写真3のように,腹部横のとげ(
側棘)の位置の違いと,腹部の第9節の形の違いです.ふつう,ヤマサナエには第6−9節にとげがありますが,
キイロサナエには第7−9節にしかとげがありません.また第9節の形は,
キイロサナエのほうがヤマサナエよりやや細長い感じです.生きた終齢幼虫の泥を洗い流すと,写真4のように,
キイロサナエは腹部の横が黄緑色に見えますが,ヤマサナエは黄緑色になることはありません.
ホンサナエとの区別はとても難しくなります.写真5のように,ヤマサナエと
キイロサナエでは腹部の第6節のはばが腹部の第5節のはばより少し小さくなります.しかし,
ホンサナエでは,腹部の第6節のはばは,第5節のはばとほとんど同じです.また生きた幼虫の泥を洗い流すと,
ホンサナエでは,写真5の緑矢印で示したように,はっきりとした黒っぽいまるいもようがならんでいます.
写真5.
ホンサナエは第5節のはばと第6節のはばがほとんど同じだが,ヤマサナエと
キイロサナエでは,第6節のはばのほうが小さくなる.
<さがす場所のヒント>
ヤマサナエは川の住人です.かなり大きな川から,用水路のような細くて小さな流れにまで住んでいます.大切なポイントは,川にしても,用水路にしても,岸近くや底に砂や泥(どろ)がたまっていることです.ヤマサナエはこういった砂や泥の中にもぐりこんで生活しているからです.
キイロサナエや
ホンサナエにくらべると,一番ふつうに見つかりますので,とれたら,まずヤマサナエかどうかを調べるようにしましょう.
写真6.ヤマサナエの産卵.これは用水路に卵を産みに来たメスです.底に泥が見えますが,そういうところにもぐりこんで生活します.