トップ写真の解説
ここはある森林公園の流れです.ヤマサナエの産卵観察は,今まで幾度となく意識して行ってきましたが,どうしても産卵ポイントを絞り込むことができず,いつも空振りに終わっていました.ここは,同年の春に10頭ほどのヤマサナエが羽化した場所で,その後もオスが降りてきてメスを待つ姿が観察されていました.非常に小さな流れですので,ここで繁殖しているとするならば産卵に降りてくる場所はここしかないという予想を立てました.そしてある雨後の晴れの日,意を決してヤマサナエの産卵の観察に出かけました.2時間半ほど待ちました.サーッとメスが入ってきて,産卵を始めました.すべては予想通り.ねらいがピタッと決まると嬉しいものです.
産卵に訪れたメス.2023.5.23.
成虫
春4月の下旬から姿を見せ始めますが,兵庫県南部の羽化のピークは,5月上〜中旬です.遅い個体は5月の下旬にも羽化します.同じ場所の連続調査の中で,5月26日の羽化殻採集例があります.成虫は5月下旬から6月上中旬にかけて個体数が増加します.近縁種のキイロサナエは,5月下旬に羽化が始まり,6月上中旬ころに川に戻ってきます.産卵の様式は,停止飛翔しながら腹端の先に小さな卵塊をつくって(トップ写真),その後打水するタイプです.
オスの静止.2023.5.23.
幼虫写真
キイロサナエに似ていますが,腹部第9節の縦横比が異なり,ヤマサナエの方が幅広い感じになります.泥を落とすと,腹部背面の斑紋がキイロサナエとは異なります.また,キイロサナエのように腰の横の部分が黄緑色になることもありません.写真は泥を洗い流した状態のものです.
スタジオ写真.2016.4.10.