トップ写真の解説
ホンサナエは兵庫県下でも発見が難しいトンボになりつつあるように感じます.やっとのことで見つけたホンサナエの繁殖場所で,夕方,17時を過ぎてから産卵にやってきました.この時刻になるとオスはほとんど姿を消しています.メスはオスに邪魔されずに悠々と卵塊をつくって,打水します.写真はそのときのものです.打水するときの飛行は驚くほど敏捷で,薄暗くなり始めた川面では,姿を追いかけることさえ難しいです.
メスの卵塊作成そして産卵へ.2018.5.11.
成虫
河川の中流域に生息します.川では春一番といってよいくらい早く現れるサナエトンボです.5月初旬にはもう川に現れ,太い体に似ず,オスは敏捷に水面を飛び回っています.敏感で近づきにくいトンボです.メスは川に現れると,静止して大きな卵塊をつくり,その後川面に打水して卵塊を放出します.これを何回か繰り返します.交尾についてはまだ見たことがありませんが,夕方,産卵に来たメスをオスが山の方にお持ち帰りするのを見ています.
オスの静止.2010.5.22.
幼虫
幼虫はヤマサナエやキイロサナエなどに似ていますが,ヤマサナエやキイロサナエでは,腹部第6節の横幅が第5節のそれより明らかに狭く,先の方に向かって尖っていくのに対し,ホンサナエでは第6節と第5節の横幅がほとんど同じになっており,腹部後半が少し円い感じに見えます.慣れれば見分けられるようになる程度の違いです.ミヤマサナエがさらに本種と似ていますが,こちらは泥を落とせばクチクラ表面がすべすべした感じになっており,本種とは明らかに異なっています.またホンサナエでは複眼が写真のように淡褐色になりますが,ミヤマサナエは時に緑色に輝きます.ただ,泥の付いた羽化殻はこの両種では非常に区別が難しい.幼虫はおそらく2年かけて成長し羽化します.
スタジオ写真.2011.4.29.