春季種というのは,冬を終齢で過ごした幼虫集団だけが翌春羽化し,残りの若齢幼虫集団の羽化は翌年以降に持ち越されるような生活史を持つトンボのことをいいます.もちろん,一年一化のトンボの場合には「残りの若齢幼虫集団」というのは存在しません.また一年に二化以上するトンボには,春季種というのは,その定義上存在しません.
トンボの生活史が春季種の様態になるためには,生活史のコントロールが三つ必要であると考えられています.終齢幼虫で冬を越すということは,冬が来る前に終齢幼虫に脱皮することを意味します.したがって,第一点目は,秋に羽化することが抑制されなければならないということです.暖かい秋が続いても決して羽化が進行してはなりません.秋に羽化してしまうと,成虫で冬を迎えることになりかねないからです.つまり,秋に何らかの発育抑制(休眠)のしくみが必要となるのです.第二点目は,その休眠が冬の間に打破され,温度依存の成長状態になることです.でないと春早くに羽化ができません.そして最後に,終齢で冬をこさなかった幼虫には,しばらく終齢にならないか,終齢になっても羽化が抑制されるしくみがなければなりません.春季種は,その強弱に程度の差はありますが,このような休眠性を持っている種と考えられます.
春季種というのは,このように休眠が解けて羽化を待つ終齢幼虫が,冬の間水温上昇するのを待っている状態なので,春に水温が上がってくると直ちに羽化の準備に入り,羽化可能な気温になると一斉に羽化をすることになります.したがって,多くの春季種は,それが可能になる4月下旬から5月上旬に集中的に出てくることになるのです.今まで紹介してきたように,春にだけ現れるトンボが結構多いのはこういう理由によります.
その中で,他の春季種と比較して約1か月遅れて5月下旬に羽化してくるキイロサナエの出現の遅さは,特異的です.キイロサナエは,兵庫県では,一部の地域では5月10日に羽化を見た記録があるものの,だいたい5月20日前後に羽化が始まります.羽化は6月初めまで約3週間続き,その後羽化する個体はいません.これは,かなり厳格に発育制御が行われているためと考えられます.
トンボの生活史が春季種の様態になるためには,生活史のコントロールが三つ必要であると考えられています.終齢幼虫で冬を越すということは,冬が来る前に終齢幼虫に脱皮することを意味します.したがって,第一点目は,秋に羽化することが抑制されなければならないということです.暖かい秋が続いても決して羽化が進行してはなりません.秋に羽化してしまうと,成虫で冬を迎えることになりかねないからです.つまり,秋に何らかの発育抑制(休眠)のしくみが必要となるのです.第二点目は,その休眠が冬の間に打破され,温度依存の成長状態になることです.でないと春早くに羽化ができません.そして最後に,終齢で冬をこさなかった幼虫には,しばらく終齢にならないか,終齢になっても羽化が抑制されるしくみがなければなりません.春季種は,その強弱に程度の差はありますが,このような休眠性を持っている種と考えられます.
春季種というのは,このように休眠が解けて羽化を待つ終齢幼虫が,冬の間水温上昇するのを待っている状態なので,春に水温が上がってくると直ちに羽化の準備に入り,羽化可能な気温になると一斉に羽化をすることになります.したがって,多くの春季種は,それが可能になる4月下旬から5月上旬に集中的に出てくることになるのです.今まで紹介してきたように,春にだけ現れるトンボが結構多いのはこういう理由によります.
その中で,他の春季種と比較して約1か月遅れて5月下旬に羽化してくるキイロサナエの出現の遅さは,特異的です.キイロサナエは,兵庫県では,一部の地域では5月10日に羽化を見た記録があるものの,だいたい5月20日前後に羽化が始まります.羽化は6月初めまで約3週間続き,その後羽化する個体はいません.これは,かなり厳格に発育制御が行われているためと考えられます.