K050. キイロサナエ Asiagomphus pryeri
オスの羽化.2009.5.24.,神戸市北区./神戸市RDB:
キイロサナエは川にすむトンボです.北区の河川を中心に幼虫・成虫の採集例があるので,これらを流れる川に生息しているものと思われます.1967年の記録もありますので,昔から北区には生息していたと考えられます.ただ,最近は発見が困難な種になってしまいました.同様の傾向は,兵庫県下の他の生息地でも感じられます.
羽化時期は5月下旬で,短期間でいっせいに羽化してしまいます.ヤマサナエよりは少し羽化が遅いようで,同一時期に同一場所で羽化している個体,あるいは羽化殻は発見したことはありません.
羽化後しばらく水辺から姿を消しますが,その間どこにいるかについてはほとんど観察例がありません.1例だけ西区のため池で未熟なオスを採集したことがありますが,これは伊川で羽化した個体が樹林の中へ生活場所を求めて移動する途中のものではないかと考えられます.6月の中旬には水辺に戻り,下旬頃には川でよく見かけるようになります.メスを待つオスは,岸の地面,流れの石の上,また草の葉に止まっています.敏感で,近づくとすぐに飛び立ち,上に逃げる習性があります.ですから樹林が川辺にかかっているような所に多くいます.
オス同士の争いはそれほど激しくはありません.2〜3m離れて数頭のオスが止まっていることがしばしばです.神戸市内では,私はまだ交尾・産卵活動の観察をしていません.7月中には成虫は姿を消してしまうようです.
ところで,面白いことに,北区では,付近にキイロサナエが好むような川がまったくない山間のかんがい用水路の小さな流れに幼虫がいたことがあります.またかんがい用水路で7頭の幼虫が採集されています.河川の中流域とかんがい用水路の共通点を見いだすのは難しいのですが,これはキイロサナエの面白い側面だと思います.さらに,川のトンボでありながら,西区では複数のため池で幼虫が採集されているといったこともあります.
幼虫は砂泥底を好んでいますが,川がせき止められて水が停滞し,そこにたい積してできた砂泥底には意外と個体数が少なく,緩やかではあっても流れのある砂泥底を好んでいるようにみえます.この点,上記のかんがい用水路はいずれも水はよく流れているということはいえます.