トンボ観察記
No.554. やっと接近遭遇:キイロサナエの産卵.2017.7.2.-(2)

週間天気予報では,兵庫県北部は土曜日が曇りと雨,日曜日が晴れ.そういうことで,日曜日にトンボ観察の予定を立てていました.土曜日は休息日とし自宅にいましたが,ほぼ一日中晴れていました.そして直前になって,日曜日の予報が曇りで昼前後に雨というふうに変更! まあなんと運がない,と最初は思いました.しかし,最近本当にピンポイントの天気予報が当たらないと実感していますので,思い切って雨の予報をものともせず,ハッチョウトンボの観察に出かけることにしました.ハッチョウトンボはお昼ころに産卵活動が行われるので,その前にダメもとでキイロサナエを見に行くことにしました.


▲水辺に止まっているキイロサナエのオスたち.

今年はキイロサナエの個体数が極端に少なく,3年1化のこのトンボの,個体数の少ない周期だと思っておきたいです.でもこれが幸いしました.水路を歩いていますと,まずキイロサナエのメスが水路を飛んでいるのを見ました.これは産卵に至りませんでした.今日は何やら産卵メスに出会えそうな予感がしてきました.10時ころでした.そろそろハッチョウトンボに行こうかと思っていた時,キイロサナエの交尾態のペアが目の前を飛んで行くのを目撃しました.ペアは背山の樹冠部へと高く飛び去り,とても手が出せません.しかし手ごたえを感じましたので,もう少し粘ることにしました.すると,シオカラトンボが打水産卵するようなしぐさが,向こうの方に見えました.近づいてみますと,キイロサナエの打水産卵でした.

▲行ったり来たりしながら産卵を続けるキイロサナエのメス.腹端に泥がついている.

この個体は写真撮影者にとって理想的な産卵をしてくれました.1mほどの範囲をゆっくりと移動しながら往復して産卵,動きは小さくほとんど同じところで打水,しかも近づいても警戒心はなし,さらに産卵は5分たらずも続けてくれました.

▲キイロサナエの打水産卵.腹端が水を打っている瞬間の写真.

オスが多ければ,こんなメスは目立ってすぐに連れ去られてしまうと思います.オスの個体数が少ないことが幸いしましたね.面白いもので,その後,オスがやたらにこの場所に止まって縄張りを持とうとするのです.オスはよく知っているようですね.

▲産卵の後,オスが同じ場所にやってきて,なわばりを形成した.下は腹部挙上姿勢.

キイロサナエの産卵観察は,チャンスを待つこと3年越しくらいだったと思います.雨の予報を無視してキイロサナエをついでに観察に来たときに出会えるなんて,...何がチャンスを産むかわかりませんね.雨にも負けず観察には出かけていかねば成果は得られないという教訓です.


さて,キイロサナエの観察のついでに出会った,というかうじゃうじゃいるハラビロトンボを記録しておきましょう.9:30ころ,交尾態があちこちで飛んでいましたので,まずそれから.1ペアだけ,交尾がうまくできず,すぐにメスの腹端が離れてしまうのがいました.これ,オスの交尾器が奇形なのかもしれませんね.

▲ハラビロトンボの交尾.飛びながら交尾するが時々止まる.

▲交尾がうまくできないペア.何度もトライしたが,結局うまくいかなかったようだ.

ハラビロトンボは春早くから盛夏に至るまで,結構長い間その姿を見ることができるトンボです.今日も,老熟の極みといったメスから,若々しいメスまで,様々な成熟段階の個体がいました.

▲老熟したハラビロトンボのメス.

▲若々しいハラビロトンボのメス.

オスたちは元気で追いかけ合いをしていました.コシアキトンボよろしく,にらみ合いから上空へ追いやる姿を記録することができました.2頭がともにフォーカス面に入り続けてパフォーマンスすることはなかなかありませんね.

▲オスが追飛する動きの連続写真.

次はオオシオカラトンボです.もう夏の定番,記録もあちこちにたくさんあります.オスの警護産卵です.

▲オオシオカラトンボの産卵.

ということで,メインのハッチョウトンボへと観察地を移動しました.