トップ写真の解説
ヤブヤンマは,他のヤンマ同様に,腹部先端の産卵管小突起を使って産卵基質をさぐります.産卵に適した土の状態を探っているのでしょう.そのために肢の位置を中心にして回転しながら卵を産みつけるポイントを探すように動きます.そうこうしていると,いつの間にか天地が逆さまになることもあります.夏の昼下がり,蝉時雨が降り注ぐ中で,薄暗い林にかこまれた池の岸で黙々と産卵を続けています.産卵は1時間を超すこともあります.
メスの単独土中産卵.2016.7.31.
成虫
オスは,写真のように,複眼の色がマリンブルーに輝きます.林の中で,メスが産卵しているすぐ近くに止まっていることが多いのですが,意外とメスの産卵に気づかないようです.主に夕方,谷筋を高く飛びます.これは主に摂食飛翔です.生殖活動や産卵は昼間に行われています.オスはメスを探して樹林内を飛び回っており,メスを見つけると連結して交尾しようとします.メスは単独で,樹林内の小規模な池などを訪れ,水際の土中やコケなどに産卵します.昼間は姿を見つけにくいのですが,メスの産卵場所を探し当てると,そこへオスも頻繁に現れ,その生態が観察できるようになります.兵庫県では,成虫は6月ころから現れて,9月にはいるまで見られますが,7,8月に出会う最も数が多くなります.
メスの産卵場所の近くに静止するオス.2022.7.30.
幼虫
ヤブヤンマの幼虫は,樹林に覆われたような暗い池や,林の中の小さな水たまりなどに見いだされます.こんなところにいるのかというような猫の額ほどの水たまりもいたりします.幼虫の体表はすべすべしており,羽化が近くなってくると緑色や茶色に色づいて,写真のようなコントラストの強い美しいカラーになります.野外では泥をかぶっているので,これほどはっきりとはしていませんが.産み落とされた卵はその年に孵化し,幼虫で越冬して,翌年の初夏に羽化するという,一年一化の生活史を営んでいます.
スタジオ写真.2011.6.12.