■見分けのチェックポイント
羽化殻全長50mm前後.第1−3腹節あたりの幅が狭く,第6,7腹節あたりにかけて急激に幅広くなる.表面は平滑で細かな模様がある.肢の腿節にはくっきりとした淡色部があってコントラストよく目立つ.側棘は第6−9腹節にあって明瞭.背棘はない.羽化殻では腹部が伸びているために,♀の原産卵管先端は第9腹節の後縁を越え第10腹節の中程を越えるほどの位置にくるが,終齢幼虫ではこれが第10腹節の後縁に達する.下唇側片内葉片の可動鉤の基部から前縁までの距離(a)と前縁の幅(b)がほぼ等しい.可動鉤上には短い刺毛が列生する(1).
■分布と類似種
本州,四国,九州とその周辺の離島,さらに南西諸島の島々をとびとびに沖縄本島にまで分布する.ヤンマ科の幼虫はどれも似ているが,ヤブヤンマは,肢の腿節のまだら模様のコントラストの良さ,下唇側片内葉片の幅広さ(同じくらい幅広いのはカトリヤンマ属だけ),などを注意深く調べれば,まずまちがえることはないであろう.
■生態
樹林の中などのうす暗いところにある池,水たまりなどに生育する.わずか1平米にも満たない,かなり小規模の水たまりにもいることが往々にしてある.そういった池や水たまりには,たいがいの場合,落ち葉が幾重にも重なって堆積しており,幼虫はそういった葉の間に潜り込んでいるものと思われる.