トップ写真の解説
兵庫県下ではマルタンヤンマの定住的な多産地がないような感じで,よほど運がよくなければ産卵のシーンには遭遇できません.そこで四国まで遠征しました.カンガレイが密に茂る間に入り込んで産卵するので,近づくとがさがさ音がし,すぐに産卵をやめて飛び立ってしまいます.やっとのことで,逃げない個体に出会うことができ,それらしい写真が撮れました.
植物組織内産卵.2009.8.1.
成虫
初夏に羽化し,成虫は夏の終わりころまで見ることができます.ふつう目にするのは,摂食飛翔を行う夕方や早朝に上空を飛ぶ時です.メスは翅が濃い褐色のためすぐにマルタンヤンマと分かります.オスも夕方や早朝に飛びますが,割合低い位置を高速で飛ぶようで,その生態が明らかにされるまでは,採集例がとても少いヤンマでした.今でも,マルタンのオスといえば,誰でも出会いたいトンボの一つです.メスは早朝や夕方に,抽水植物の水面近くの位置に止まって,腹部を水に沈め,水中部分にある植物組織内に卵を産みつます.近年兵庫県では数が激減しています.
林内で休息するオス.2022.8.8.
幼虫
大きな幼虫は,決まって春から初夏にかけて採れます.小さな幼虫は冬にも採れますので,幼虫で越冬しているようです.幼虫は思わぬところでときどき網に入ることがあります.毎年同じ池で採れるとは限らないので,あちこち移動して産卵しているのだと思われます.ルリボシヤンマ属の幼虫に似ていますが,真っ黒で小さく,よく動き回ります.
スタジオ写真.2009.4.26.