■見分けのチェックポイント
羽化殻全長37mm前後.体表面は平滑である.複眼は大きく左右にふくらむ.下唇側片先端部の内鉤は小さいがトビイロヤンマより明瞭である(3).動鉤基部に数本の長い刺毛があり(1),動鉤上にも12,13本の刺毛が並び,そのうちの数本は特に長い(2).腹部背面の正中線をはさむように褐色条が走り,その両側は淡色になっている.側棘は第6−9腹節にあっていずれも明瞭である.肛上片は肛側片よりやや短く,尾毛はそれよりさらに短い.♂の肛上片上の下付属器原器は二等辺三角形で先は円い.♀の原産卵管先端は第9腹節後縁に達しない.
■分布と類似種
本州の岩手県と,中部地方以南・以西,四国,九州,佐渡島,隠岐,対馬,福江島,種子島,屋久島に分布する.トビイロヤンマとほとんど区別できないほど似ているが,トビイロヤンマはトカラ列島以南に分布しており,原則として分布域が重ならない.またルリボシヤンマ属各種ともよく似ている.これらには下唇側片や動鉤に長刺毛がなく,マルタンヤンマに比べて短い刺毛が並ぶだけであることで区別できる.
■生態
樹林が隣接した植生豊かな池で見つかることが多い.植生の根際をかき回すと網に入る.植生につかまったりして生活しているものと推察される.産卵は夏,そしておそらく若齢幼虫で冬を越していて,6月頃に羽化する一年一化の生活史を営んでいると思われる.終齢幼虫は5,6月に採れる.