■見分けのチェックポイント
羽化殻全長35mm前後.体表面は平滑である.複眼は大きく左右にふくらむ.下唇側片先端部の内鉤が不明瞭である(3).動鉤基部に数本の長い刺毛があり(1),動鉤上にも15,16本の刺毛が並びそのうちの数本は特に長い(2).腹部背面の正中線をはさむように褐色条が走り,その両側は淡色になっている.側棘は第6−9腹節にあっていずれも明瞭である.肛上片は肛側片よりやや短く,尾毛はそれよりさらに短い.♂の肛上片上の下付属器原器は二等辺三角形で先は円い.♀の原産卵管先端は第9腹節後縁に達しない.
■分布と類似種
奄美大島以南の南西諸島に広く分布する.またトカラ列島中之島,南北大東島,小笠原諸島の父島・母島,さらに高知県でも記録がある.高知県など,記録地のうちいくつかは飛来記録であると思われる.類似種のマルタンヤンマは,本州中部以南以西,四国,九州に分布し,南限は屋久島であるので,高知県の飛来記録を除けば,本種と分布域は重なっていない.外観が非常によく似ている種にマダラヤンマがいるが,これはより北に分布する種であり,下唇側片・動鉤上に刺毛がない点で区別できる.
■生態
水田,用水路,湿地,休耕田などで幼虫が見つかることが多い.松木・尾花(1985)も,台湾の生息環境で同様のことを書いている.卵期と幼虫期を加えても8週間たらずであって(関西トンボ談話会,1984),成長が非常に速い種であるので,野外では一年に数世代繰り返している可能性が高い(松木・尾花,1985).