H031. マルタンヤンマ Anaciaeschna martini
<特ちょう>
マルタンヤンマの幼虫は,黒っぽい色をしていてよく動きまわります.色が明るい幼虫では,背中のまん中に黒いスジがあり,その両側にやや明るい色の部分が見えます(写真3).写真2のように,
下唇側片(かしんそくへん)の内がわに毛が生えているので,
下唇をのばしてルーペで観察すれば分かります.マルタンヤンマには背中のとげ(
背棘:はいきょく)はありません.写真3のように,腹の横の部分にはとげ(
側棘:そっきょく)があります.
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写真2.マルタンヤンマの下唇側片の毛. |
写真3.マルタンヤンマの横のとげ.第6〜9節にあります. |
<よくにた幼虫との区別>
マルタンヤンマの特ちょうは,
下唇側片に毛が生えていることですが,
カトリヤンマにもこの部分に毛があります.しかし
下唇側片の先のはばがマルタンヤンマのほうがせまくなっています.写真4をよく見て区別してください.またマルタンヤンマの幼虫は,
ルリボシヤンマや
オオルリボシヤンマの幼虫ともよく似ていますが,写真5のように,
ルリボシヤンマや
オオルリボシヤンマの幼虫には,この部分に毛が生えていません.
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写真4.マルタンヤンマとカトリヤンマの区別. |
写真5.マルタンヤンマとルリボシヤンマの区別. |
<さがす場所のヒント>
マルタンヤンマの幼虫は,水がなくならない浅い湿地(しっち)や,背の高い水生植物がしげっている池などに住んでいます.下の写真は,一年中水のなくならない浅い湿地で,もともと水田だったところでした.この水田は海岸のすぐそばにあって,いつも小さな川から水が流れこんでいます.こういった場所では,マルタンヤンマが大発生することもあります.ふつうの池でも,岸近くに生えている水生植物の根元をすくうととれることがあります.
マルタンヤンマは夏の代表的なヤンマです.7〜8月に卵を産んで,それがかえった幼虫で冬を越し,次の年の6月ころに
終齢幼虫になります.このころをねらってとりに行けば,羽化を観察できます.
写真6.マルタンヤンマの産卵.マルタンヤンマは池や湿地に生えている草の中にもぐりこんで,その草の茎に産卵します.