トップ写真の解説
カトリヤンマといえば,かつては夕方になるとあちこちで群れて飛び,ヤンマの黄昏飛翔を観察に行っても見向きもしない存在でした.しかしアキアカネの減少と軌を一にするようにその姿が激減しました.水田が主な生活場所のようで,しかも幼虫時期など生活史の季節推移がアキアカネと似ていることもあり,アキアカネの減少とおそらく同じ原因によるものと推察しています.そんな激減したカトリヤンマですが,少数がまだ生き残っている場所があります.写真の場所もその一つで,何度か通って,やっと産卵を間近に見ることができました.
産卵.2012.10.27.
成虫
初夏に羽化てし,夏は写真のように樹林の中で過ごしています.夕方暗くなったころに少し開けた林縁に出てきて,地面近くを低く群れて飛び,摂食を行います.かつては,足に当たるほどの数が飛んでいましたが,最近はそういった姿は見られなくなりました.秋になると成熟し,昼間でもオスは林縁を飛ぶことがあります.オスは昼間に樹林の中に潜っているメスを見つけて交尾するといわれています.メスは単独で,湿土に産卵をします.水田を好みますが,水が落とされたため池に大量に産卵に来ることもあります.
夏の日中林の中で休むオス.2016.8.3.
幼虫
カトリヤンマは,卵で越冬し,春に孵化し,それから初夏にかけて幼虫が急速に成長するという,非常に成長の速い幼虫です.それ故,幼虫の見られるシーズンは限定されています.幼虫は水田や休耕田でよく採れます.ただ最近は,兵庫県では水田ではほとんど採れなくなりました.山間のおそらく薬剤を使用していないと思われる水田にはまだ生き残っていて,その場合は個体数も非常に多くなります.兵庫県でも本当に数が減り,関東ではもはや希少種だと言う人もあるくらいで,姿を見ることが少ないといわれています.
スタジオ写真.2019.7.2.