トップ写真の解説
兵庫県では,ネアカヨシヤンマが多産する場所はほとんどなくなってしまいました.黄昏時に時々数頭が飛ぶことはあるものの,どこで繁殖しているかはほとんどの場合分かりません.生息地である湿地の水条件が,産卵や幼虫の成長に適した推移をたどると,時に大発生することがあります.写真の場所ではこの前の年に大発生し,この年は少数が発生していた状態でした.2年続けて産卵が写真に記録できました.
朽木への産卵.2013.8.11.
成虫
6月には羽化し,近くの樹林で未熟期を過ごしています.成熟すると湿地へ舞降りてきて産卵活動を行います.初夏に羽化します.7,8月が最盛期で,多くは9月に入る前に姿を消してしまいます.黄昏飛翔する性質があって,夕刻と明け方に高いところを群飛します.産卵は午後に水のない湿土や朽木に直接卵を産みつけます.土中に産卵するときは,平らな所より,イノシシの足跡のような窪みに腹部を入れて産卵する姿勢を好みます.オスは昼間は林内を時々飛び回りながら,写真のように木の枝などに静止しているようです.
オスの静止.2015.7.20.
幼虫
兵庫県では,樹林内や近くにある小さな水たまりや海岸近くに湿地の水たまりなどで幼虫が発見されることが多いです.幼虫で越冬しています.山間部でも湿地には見いだされることがありますが,本来の生息地ではないような気がします.猫の額ほどの小さな水たまりに何頭もの幼虫がひしめき合っていたりすることもあります.これは乾燥が続いて水場が狭くなった結果かも知れません.ヤンマ科の幼虫では唯一腹部第8,9節に背棘があるので,他種と容易に区別できます.
スタジオ写真.2012.5.24.