■見分けのチェックポイント
羽化殻全長38mm前後.下唇側片に6本程度の長刺毛(1),その基部よりに短刺毛(2)がある.可動鉤上には短刺毛が列生するが長刺毛はない.下唇側片内葉片は幅広く,可動鉤基部から前縁までの長さ(b)と,内葉片前縁の幅(a)がおおよそ等しい(下唇側片の図ではやや傾いているためそう見えないが,上の前下唇全形図を見れば分かる).腹部背面は正中線に沿って濃褐色条が走りその両側は淡色条となる.側棘は第6−9腹節にあるが,第5腹節に微小なものが存在する個体がある(上記個体).背棘はない.原産卵管は第9腹節の後縁を越え,羽化殻では第10腹節の中程を少し越える程度で,生きた終齢幼虫では第10腹節のほぼ後縁に達する.尾毛は長く肛上片または肛側片先端部よりわずかに短い位置にくる.肛上片先端部と肛側片先端部はほぼ同じ位置にくる.肛上片先端部は背面から見ると浅く二叉になっている.
■分布と類似種
北海道(函館),本州,四国,九州をはじめ,周辺の離島,さらに南西諸島の種子島,屋久島,トカラ列島中之島,さらに渡瀬線を越えて奄美大島,徳之島,沖永良部島,沖縄本島,伊是名島,座間味島に分布する.杉村ら(1999)には西表島にも記録があると記されているが,分布図に記載がないのと,津田(2000)などその他の分布資料には記載がないためここでは割愛した.リュウキュウカトリヤンマが酷似し,奄美大島以南の南西諸島で分布が重なる.
■生態
秋に,乾燥した山すその水田,水が落とされたため池などで,湿土中に産卵する.卵で越冬し,翌年春に孵化して6,7月頃までに幼虫発育を終えて羽化する.夏はそのまま樹林の中などで未熟期間を過ごし,夕方などに活発に摂食飛翔をする.そして秋に成熟する.幼虫は写真のような水田の畦際の泥をすくうとよく採集される.