トップ写真の解説
9月の午前中,水が落され岸辺が露出し,樹木に覆われた陰になった部分で,産卵が行われます.個体数が多いところでは,次々に産卵にやってくるのが観察できます.後半,オスはメスを放して警護産卵に移行することも多いです.
連結打空産卵.2012.9.22.
成虫
ナニワトンボはアカトンボなのにシオカラトンボのようにオスが青白い粉をふきます.名前の由来通り,大阪で発見されたトンボです.大阪を中心に瀬戸内地方を中心に分布しています.成虫は6月下旬には羽化し,池のそばの林の中や縁で生活しています.夏には,池の畔に生えている陰になった木の枝の先などに止まっています.羽化直後はオス・メスとも黄色と黒の縞模様をしています.成熟するとオスは粉をふき,メスは黄色の部分が黄褐色にくすぶってきます.早いときは8月の下旬から9月の上旬にかけて繁殖活動が開始されます.ツクツクボウシの鳴き声がもっとも盛んなころです.10月下旬にはほぼ姿を消します.メスは単独で産卵することも多く,時に遊離性静止産卵(写真)を行うこともあります.
単独の遊離性静止産卵.2012.9.22.
幼虫
ナニワトンボの幼虫はリスアカネと非常によく似ており,区別が困難です.しかしナニワトンボの背棘は白色をしているので,背面から見ると正中線に白いすじが入っているように見え,区別できます.リスアカネの背棘は褐色です.たくさん産卵していたところで幼虫をすくっても意外と採集しにくいです.肛門から水をふいて移動するジェット推進が得意で,逃げ足が素早いからかもしれません.卵で越冬,翌春に孵化します.幼虫はその後急速に成長し,6月に羽化します.一年一化の生活史を送っています.
スタジオ写真.2008.6.8.