H072. ナニワトンボ Sympetrum gracile
<特ちょう>
ナニワトンボはトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.
翅芽(しが)は,まっすぐ後ろにのびています.
触角(しょっかく)は糸のように細いです.腹の横のとげ(
側棘:そっきょく)は第8,9節にあってどちらも長く,写真2のように,第8節のとげが第9節の後ろはしこえています.背中のとげ(
背棘:はいきょく)は先がするどくとがっていて,腹部の第4−8節にあります.写真3のように,顔を正面から見たとき,
下唇側片(かしんそくへん)の上に黒いはん点がちらばっています.
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写真2.腹部の第8,9節の横にするどいとげ(側棘)があります. どちらも長く,第8節のとげの先は第9節の後ろはしをこえます. 先のとがった背中のとげ(背棘)が,腹部の第4−8節にあります. |
写真3.ナニワトンボの全体図と,下唇側片(かしんそくへん).
下唇側片(かしんそくへん)の上には黒いはん点があります.
触角は糸のように細いです. |
<よく似た幼虫との区別>
ナニワトンボはアカトンボのなかまです.アカトンボの幼虫は,どれもとてもよく似ていて,トンボの専門家でも見分けられないことがあります.ですから,区別がつかなくて迷っても,それはしかたがないことです.みなさんもたくさん研究をして,見分け方を見つけてください.
さて,ナニワトンボの特ちょうは,腹部の第8節の横のとげが,第9節の後ろはしをこえることです.このように長いとげ(
側棘)を持つアカトンボの幼虫は,5種類しかいません(写真4).その中で,顔を正面から見たときに,
下唇側片の上には黒いはん点があるのは,ナニワトンボ以外では,
ノシメトンボと
リスアカネです.ふつう,ナニワトンボはこれらの幼虫より小さいのですが,大きさではほとんど見分けられないでしょう.またナニワトンボの幼虫は,写真3のように,背中のまん中に白いスジが走っているように見えるものが多いです.
リスアカネや
ノシメトンボでは.このスジははっきりと出ないことが多いようです.ただし,この区別点も,確実なものではありません.見分けるのがとても難しいアカトンボです.
写真4.腹部の第8節の横のとげの先が第9節の後ろはしをこえるアカトンボの幼虫.大きさと
下唇側片上のはん点の有無.
<さがす場所のヒント>
ナニワトンボはため池の住人です.写真5のように,ため池の水がぬかれて,岸辺に底が広く現れたようなところで産卵します.産卵は夏の終わりから秋にかけて行われますから,そのころに水がぬかれていたため池で幼虫が採れます.また池のまわりが木でおおわれているところを好みます.リスアカネといっしょに産卵しているのをよく見かけます.ほとんどの卵はそのまま冬をこすようで,次の年の春に幼虫が誕生します.そして,7月のはじめには羽化して親になってしまいます.ですから,幼虫の採れる時期は,4月から6月に限られています.とくに
終齢幼虫は,6月の終わりから7月のはじめの短い期間にしか採れません.
写真5.産卵にやって来たオス・メスのペア.水がぬかれたため池の,水がない岸辺で,空中から卵をばらまきます.