H071. マダラナニワトンボ Sympetrum maculatum
<特ちょう>
マダラナニワトンボはトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.
翅芽(しが)は,まっすぐ後ろにのびています.
触角(しょっかく)は糸のように細いです.腹の横のとげ(
側棘:そっきょく)は第8,9節にあってどちらも長く,写真2のように,第8節のとげが第9節の後ろはしこえています.背中のとげ(
背棘:はいきょく)は先がするどくとがっていて,腹部の第4−8節にあります.写真3のように,顔を正面から見たとき,
下唇側片(かしんそくへん)の上に黒いはん点がありません.
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写真2.腹部の第8,9節の横にするどいとげ(側棘)があります. どちらも長く,第8節のとげの先は第9節の後ろはしをこえます. 先のとがった背中のとげ(背棘)が,腹部の第4−8節にあります. |
写真3.マダラナニワトンボの全体図と,下唇側片.
下唇側片の上には黒いはん点がほとんどありません.
触角は糸のように細いです. |
<よく似た幼虫との区別>
マダラナニワトンボはアカトンボのなかまです.アカトンボの幼虫は,どれもとてもよく似ていて,トンボの専門家でも見分けられないことがあります.ですから,区別がつかなくて迷っても,それはしかたがないことです.みなさんもたくさん研究をして,見分け方を見つけてください.
さて,マダラナニワトンボの特ちょうは,腹部の第8節の横のとげが,第9節の後ろはしをこえることです.このように長いとげ(
側棘)を持つアカトンボの幼虫は,5種類しかいません(写真4).その中で,顔を正面から見たときに,
下唇側片の上には黒いはん点がほとんどないのは,マダラナニワトンボと
ナツアカネです.現在,マダラナニワトンボは兵庫県ではほとんど見つからないトンボです.ですから,腹部の第8節の横のとげが第9節の後ろはしをこえていて,
下唇側片の上には黒いはん点がほとんどない場合は,
ナツアカネと考えてください.
写真4.腹部の第8節の横のとげの先が第9節の後ろはしをこえるアカトンボの幼虫.大きさと
下唇側片上のはん点の有無.
<さがす場所のヒント>
マダラナニワトンボは湿地(しっち)の住人です.兵庫県では,湿地のような岸辺を持つため池に住んでいます.10月に入ったころ,ため池の湿地のようになっている岸辺にやって来て,空中から卵をばらまきます(写真5).卵はそのまま冬をこし,次の年の春に幼虫が誕生します.そして,7月のはじめには羽化して親になってしまいます.ですから,幼虫の採れる時期は,4月から6月に限られています.とくに
終齢幼虫は,6月の終わりから7月のはじめの短い期間にしか採れません.
マダラナニワトンボは,兵庫県では,2016年に姿が見られたのを最後に,見つかっていません.もう兵庫県では姿を消してしまっているかも知れませんので,幼虫も見つかる可能性はほとんどないでしょう.残念なことです.
写真5.池の一部の岸が湿地のようになっていて,ミズゴケが生えています.オス・メスのペアは,この上から卵をばらまいています.