トップ写真の解説
連結打空産卵をするペアです.マダラナニワトンボは絶滅危惧T類に指定されています.兵庫県ではかつては各地に産地がありましたが,現在ではすべて消滅しているようです.産卵のために池にやって来ると,人なつっこく近づいてきて,目の前で産卵します.かんたんに採集できてしまうので,採集圧はかなり大きく作用すると思われます.このトンボを護るには産地を伏せるしかないでしょう.ベッコウトンボほど有名ではありませんが,兵庫県ではベッコウトンボの次に姿を消すトンボの一つと予想できます.そしてそれはすでに現実のものとなっている気がします.
連結打空産卵.2009.9.21.
成虫
7月には未熟な成虫が見られます.9月下旬から10月中旬の晴れた日に,繁殖活動が多く見られます.午前10時ころ,まずオスが池の周囲の高い木の枝先などに止まって,池を見渡すようにして静止します.このとき,同様にメスの姿が見られることもあります.やがてオスは池の岸辺に降りてきて,ホバリングを交えたなわばり飛翔を行います.このときやや高いところを飛ぶこともあります.11時過ぎになると,メスが産卵にやってきます.多くはタンデムで産卵にやってきますが,メスが単独で産卵に来ることもあります.池岸の,背の低い植物の茂った,水のないところで連結または単独打空産卵を行い,終わると,メスは一気に上空へ舞い上がって姿を消します.稀に遊離性静止産卵を行うことがあります.産卵は結構長時間続きます.
メスの単独産卵.2010.10.16.
幼虫
マダラナニワトンボの幼虫は,側棘が非常に長く,また下唇側片に褐色の斑点を欠くことで,多くのアカネ属幼虫と区別がつきます.やっかいなのがナツアカネで,マダラナニワトンボと同様に,側棘の長さも似ていますし下唇側片に褐色斑点がありません.ただマダラナニワトンボの方が少し小さく,側棘も細くなっています.卵で越冬し,翌春孵化します.幼虫は6月下旬までに成長を終えます.
スタジオ写真.2011.6.11.