H002. ホソミオツネントンボ Indolestes peregrinus
<特ちょう>
ホソミオツネントンボは腹部が細長く,あしが長い,アオイトトンボ型の幼虫ですが,全長が30mm近くあるほかのアオイトトンボのなかまにくらべると,全長で21mm前後で,大きさがかなり小さいです(写真4).体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.
下唇(かしん)は細長く,後ろあしのつけ根にとどくくらいの長さがあります(写真3).腹部のそれぞれ節の横に,黒っぽい色のはん点が2つずつついています(写真2).また
尾さいは,ふつう,だいだい色にすき通っていて,上下のへりには,それぞれ3つのこげ茶色のはん点があります(写真2).
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写真2.腹部のそれぞれの節の横にある2つの黒っぽいはん点. 尾さいはだいだい色にすき通っています. 尾さいの上下のへりには,3つの焦げ茶色のはん点があります. |
写真3.ホソミオツネントンボの下唇とその長さ. 下唇の先は,後ろあしのつけ根にとどくくらいの長さ. |
<よく似た幼虫との区別>
ホソミオツネントンボとよく似た幼虫に,
アオイトトンボ,
オオアオイトトンボ,
コバネアオイトトンボ,
オツネントンボがいます.まず,これらとのいちばんのちがいは,大きさです.写真4のように,ホソミオツネントンボは尾さいをふくめた全長が21mm前後しかなく,30mm近くあるこれらのトンボとくらべて,とても小さいです.
次に,
アオイトトンボ,
オオアオイトトンボについては,
下唇の長さを比べてください.ホソミオツネントンボの
下唇も長いですが,これら2種ほどではありません(写真5).
コバネアオイトトンボの
下唇はかなり短く,ホソミオツネントンボと同じように.その先が後ろあしのつけ根にとどくくらいで,これでは区別がつきません.そこで次に,写真6にあるように,腹部の横のはん点を見てください.
コバネアオイトトンボには,それぞれの節にはん点は1つしかありません.
いちばん難しいのは
オツネントンボとの区別です.
オツネントンボとは,体の大きさのちがい,尾さいの色の違い,下唇の形のちがい,で区別してください.体の大きさと尾さいの色のちがいについては,
オツネントンボのページの,写真5を見てください.下唇の形のちがいについては,写真7を見てください.
<さがす場所のヒント>
ホソミオツネントンボは池や湿地(しっち)の住人です.成虫のまま冬をこして,春一番に産卵に現れるトンボです.写真8のように,岸辺からのびている草や,水の中に生えている植物の,葉や茎(くき)に卵を産みつけます.しかし,池では,意外に幼虫は採れません.むしろ,ホソミオツネントンボの幼虫は,水田でよく採れます.ナツアカネやカトリヤンマがたくさんいる水田で,それらの幼虫といっしょに網(あみ)に入ることが多いです.春に産みつけられた卵はすぐにかえり,幼虫はものすごく速く成長します.6月から7月にかけて羽化して成虫になります.成虫はそのまま夏・秋・冬をこします.ですから,幼虫の採れる期間は,5月から7月くらいの短い間です.
終齢幼虫は,ふつう6月になってから採れます.
写真8.水面にのびるかれ茎に産卵する,ホソミオツネントンボのペア.