兵庫県の幼虫ガイド
H004. オオアオイトトンボ Lestes temporalis
オオアオイトトンボ終齢幼虫
写真1.オオアオイトトンボ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう)尾さいをふくめた全長30mm前後.2011.7.2.
<特ちょう>
 オオアオイトトンボは腹部が細長く,あしが長い,アオイトトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.写真2のように,下唇(かしん)はとても細長くなっています.写真3のように,尾さいは,中央のものはそれほど下に曲がることはありません.尾さいの色は,うすい色のものからこい色のものまで,採れる場所によってさまざまですが,どちらかといえば,こい色のものが多いようです.

オオアオイトトンボのあしゅうれいようちゅう オオアオイトトンボのうか
写真2.オオアオイトトンボの下唇は,とても細くて長い. 写真3.オオアオイトトンボの尾さいの形.


<よく似た幼虫との区別>
 オオアオイトトンボとよく似た幼虫に,アオイトトンボコバネアオイトトンボホソミオツネントンボオツネントンボがいます.
 このうち,ホソミオツネントンボとは,体の大きさや下唇の長さで区別できます.くわしくはホソミオツネントンボのページを見てください.また,オツネントンボとは,下唇の形で区別できます.くわしくはオツネントンボのページを見てください.さらに,コバネアオイトトンボとは,下唇の長さや,腹部横にあるはん点で,区別してください.くわしくは,コバネアオイトトンボのページを見てください.なお,これらのページでは,アオイトトンボと比かくしていますが,オオアオイトトンボとアオイトトンボはとてもよく似ているので,オオアオイトトンボとの比かくだと考えてください.
 いちばん区別が難しいのは,アオイトトンボです.写真4,写真5を見てください.写真4はメスの場合です.メスには腹部の先のほう(腹部の第9節)の下がわに,産卵管(さんらんかん)のもとになるもの(原産卵管:げんさんらんかん)がついています.これをルーペで観察すると,写真4のようなちがいが見られますので,これで区別ができます.写真5はオスの場合です.オスには産卵管のもとになるものがありません.そのかわり小さな2つの突起(とっき)がついています.とてもわずかですが,その形に,写真5のようなちがいがあります.これで区別してください.これでできないときは,区別をあきらめて,「アオイトトンボのなかま」としておいてください.

オオアオイトトンボとオオアオイトトンボの原産卵管 オオアオイトトンボとオオアオイトトンボの原生殖器
写真4.アオイトトンボとオオアオイトトンボの原産卵管の比かく. 写真5.アオイトトンボとオオアオイトトンボの突起の比かく.


<さがす場所のヒント>
 オオアオイトトンボは池の住人ですが,産卵する場所が変わっています.写真6のように,高い木の上で産卵するのです.卵からかえった幼虫は,木から落ちて,水の中に入ります.ですから,卵を産むのは,池の水面に上に大きくのびた枝(えだ)になります.つまり,オオアオイトトンボがいる池は,まわりに木があって,それらの木の枝が水面にはりだしているようなところです.産卵は秋に行われます.卵はそのまま冬をこし,春に幼虫になります.幼虫はものすごく速く成長します.6月から7月には終齢幼虫になって,羽化してしまいます.ですから,幼虫の採れる期間は,5月から7月くらいの短い間です.6月から7月に羽化した成虫は,そのまま夏をこして,秋に産卵します.

オオアオイトトンボの産卵場所.
写真6.池の水面上にのびている,高い木の枝に産卵する,オオアオイトトンボのペア.